不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。
増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。心理系大学院入試でも、事例問題としてよく出題される。
対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循環にアプローチしていくことだという。
「社会的ひきこもり~終わらない思春期」(PHP新書)の著者で、不登校やひきこもりの事例に長年関わってきた精神科医の斎藤環氏のインタビュー記事の一部を、日経ビジネス電子版より紹介します。
・「Hikikomori(ひきこもり)」は英語になって、辞書にも載っている。日本には、成人した子どものケアを両親がナチュラルに続ける文化がある
・英国や米国では、成人した子どもは家から出ざるを得ず、社会参加できなければホームレスになる。日本における「ひきこもり」に該当するのは、英米では「ホームレス」
・でも最近は英米でも、子どもがかわいそうだから家で面倒をみよう、という親が増えている
・2022年度の統計で、不登校は小・中学校で約30万人。原因の1位は「子ども同士の人間関係」で、いじめも含まれる。2位は「教師との人間関係」で、ハラスメントも含む。3位は「家庭の問題」で、ネグレクトなどの虐待
・逆にいえば、子ども本人に原因があるケースはほとんどない
・ところが文部科学省の調査では「不登校の主な要因」で最も多いのが生徒本人の「無気力・不安」で、次が「生活リズムの乱れ・あそび・非行」。「生徒本人のせいだ」という回答が6割以上を占める
・自分たちのせいにしたくないので、子どものせいにしている
・親の対応としては、不登校の子には学校の話をしない、ひきこもりなら仕事の話や将来の話は一切しない。これが大前提で、それ以外のおしゃべりを親子でたくさんすること
・親としては難しいことだが、そこを我慢する。そして、「話すことを我慢している」ことを子どもに分かるようにする。手のうちを全部見せることが、信頼関係につながる
・暴言や暴力も、不登校・ひきこもりに伴いやすい。親は「私は暴力を受けたくない」「私はイヤです」と言っていい。「ダメ」は「禁止の言葉」で子どもには全く通用しないが、「イヤ」は「拒否の言葉」で結構効く
・親の家出も有効。1週間ほど家出して帰る頃には、子どもの暴力が収まっていることが、かなりの確度で期待できる
・ひきこもりの解決策の優先順位は、「親のセルフケアが1番。2番目が子どものケア」。そうしなければ、共倒れになってしまう
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Matsumoto Japan, 2025 |