2025年12月26日

リベラルとリバタリアン

 

HACK』『テクノ・リバタリアン』などの著作がある作家・橘玲氏のインタビューが、日経ビジネス電子版に載っていた。

今まで自分の立ち位置はリベラルだと思っていたが、この記事を読むと、私はあの過激な(?)イーロン・マスクやピーター・ティールらリバタリアン(自由至上主義者)に近い。

記事の一部を紹介します。

 

AIや暗号資産など、テクノロジーによる社会変革を推進しているのは、マスク(テスラCEO)やティール(Open AI創業者)、サム・アルトマン(同)など、個人の自由を重視するリバタリアン

・日本のメディアは、原理主義的で人工中絶に反対する人たちをリバタリアンと呼んでいたが、本来のリバタリアニズムは自由を至上のものとする政治思想で、自己選択権の最大化を目指している

・テクノロジーは自由を与えてくれるし、テクノロジーの進歩には自由が必要。テクノロジーによって自由を拡大することで「よりよい社会」「よりよい未来」をつくることができるという理想主義が、シリコンバレーの中核

・「自分らしく生きたい」というのは現代社会の根底にある価値観で、もはや誰もそれを否定できない。リベラリズムの本質は自己決定権の最大化で、「いつどのように死ぬかも個人が決められるようになるべきだ」という考え方

・日本でも、安楽死の合法化を求める声が多数派。メディアはそれを可視化したくないから世論調査をしない

・現代社会の最大の格差は「生まれた国」のちがい。たまたま豊かな欧米や日本などに生まれた者と、アフリカや南アジアに生まれた者との間にはとてつもない経済格差がある

・私たちはどこで生まれるかを選べないから、リベラリズムの原則に立ってあらゆる差別が許されないなら、国境を開放するしかない。ところがリベラルのなかに、そのような「不都合な主張」をする者はほとんどいない

・その代わり、もっと安全で注目を集めやすい格差として、人種やジェンダーの話ばかりする

・日本人は第二次世界大戦で国家の暴走であれだけひどい目にあったのに、結局いま「国家はやさしいお母さん」で、国が自分たちの面倒を見てくれるのが当然、という意識に戻ってしまった

・そうやって市民が国家に依存するのは「国家主義」。日本では、リベラルな知識人やメディアが率先して「国家主義者」になっている

・リベラリズムの大原則は、市民の自律。まずは自分で何とかするのが基本



2025年12月19日

専業パパの告白

 

職場の忘年会に、産休明けのナギサさんが顔を出した。

胸に抱く赤ちゃんは、4か月にして体重8キロ。おっぱいをたくさん飲み、ナギサさん自身はいくら食べても痩せてしまうそう。母は大変だ。

出産には、ダンナが立ち会った。

「分娩室の壁や天井に血が飛び散って、夫は、てっきり私が死ぬんじゃないかと思ったみたい」 

笑って話す、ナギサさん。

もし自分が立ち会っていたら、卒倒して廊下につまみ出されていたかも…

話を聞いただけで、クラっと来た。

わが子の誕生に父親が立ち会うことは、とても大切だとは思う。

でも小心者は、できれば立ち会いを免除して欲しい。

 

前の会社の同僚クリコさんが、一家4人で近所に引っ越してきた。

クリコさんは台湾の男性と結婚し、夫の国で2児をもうけた。さすがはジェンダー平等の国、当たり前のように立会い出産だったようだ。

夫のシャンさん、度胸あるなぁ。

今回、妻の国日本に移住したクリコ一家は、夫婦の役割を交代。妻が外で働き、夫が家事や育児を引き受けている。

二足歩行を覚えて、あらゆる方向に突進する次男(2)を追いかけながら、一家の主役の座を奪われた長男(5)の気持ちにも、そっと寄り添う。

淡々と、マルチタスクをこなすシャンさん。見かけほど簡単なことではない。

そしてイクメン・シャンさんは、恋愛ドラマの主役を張れそうなイケメンだ。自ら、「ぼくの取り柄は顔だけだよ…」と言うそうだ。

でも彼が facebook に寄せた文を読めば、そんじょそこらのイケメンじゃないことがわかる。

人として深みのある、イケメン。

日々の facebook のポストには稀有な、ド直球の彼の投稿を紹介します(原文は中国語・繁体字)。

クリコさん、あなた男を見る目があるね~ 

ただの面食いじゃないんだね~

 

育児はまさに修行~専業パパの本音告白

 最初はただ単純に「育児休業には補助金があるし、取らないともったいない」という気持ちで、会社に半年の育休を申請しました(職業的な燃え尽きもあったのですが)。

ところが専業育児の世界に足を踏み入れてみて、これは仕事というより、徹底した心の修行だと痛感することに……

親になって、というより「主要な育児者」になってはじめて、「見なければ心乱れず」という言葉の深い意味を思い知りました。

以前の私は、「育児にも積極的に参加している、標準以上の優良パパ/夫」だと思い込んでいました。

ところが、専業育児を始めて気づいたのは、自分は結局ちょっとだけよく手伝う、そえもの系パパに過ぎなかったということ。

あの「距離があるからこその気楽さ」は、今思えば最高レベルの贅沢であり、無知でした。

当時は、子どもの衣食住のほとんどを妻が担い、私は単発タスクと週末の楽しい時間だけ担当。

それで「週末なら一人で子ども二人を丸一日見れるし、俺は仕事も家庭もいける男だ」と満足していたのです。

でも、平日の月〜金を継続して見るのと、週末の12日だけを根性で乗り切るのとでは天地の差!

12日だけなら、ご褒美モードでやれる(たくさん遊ばせたり、ジャンク食べたり、生活リズム無視したり、未来の自分から前借りする運用)。

でも平日はそうはいかない。買い物、料理、登園・降園、食事、睡眠、全部きちんとこなす必要がある。

役割が入れ替わって主要な育児者になって、ようやく分かりました。

主要な養育者が抱える精神的負荷、閉塞感、縛られた感覚は、「仕事から帰ってきて子どもを抱っこするだけ」のあの軽さとはまったくの別次元なんですよね。

専業育児の難しさは、社会に大幅に過小評価されている

「専業で子どもを見る」と聞くと、たしかに難しくなさそうに聞こえる。

タスクもシンプル:食べさせる、おむつ替え、寝かしつけ、遊ぶ。

でも、この仕事が難しい本質は、

《コントロール不能》と《絶対的な拘束性》にあります。

拘束感:

時間は完全に細切れ。10分連続で確保できない。トイレの自由すらない(職場でスマホ見ながらトイレしてた頃が懐かしい)。ましてや「自分時間」なんて存在しない。

感情のブラックホール:

幼児の感情は読めず、24時間ずっと「受け止め、ほぐし、切り替え」をし続ける必要がある。理性の糸が何度もちぎれてはつなぎ直され、メンタルが削られる。

低い達成感:

一日で床を10回掃除してもすぐ散らかる。

力を込めて作ったごはんも、子どもは大量に残す。

この仕事には「見える成果」や「報酬」がほとんどない。

だからこそつらい。価値を数字にしにくいから。

その反動で私はデイトレに手を出し、1週間でやめました(笑)。

稼げないどころか育児にも集中できず、本末転倒。早めに気づいて本当に良かった

一見シンプルなタスクでも、相手が小さな子どもになった瞬間、難易度は「簡単」からいきなり「地獄」へランクアップします。

専業主婦/主夫の大変さは、社会に本当に過小評価されており、サポートも十分ではありません。

怨み節から、楽しめる育児へ

最初はネガティブな気持ちが多く、情緒も不安定でした(長く家計を支える側として生きてきたので)。

自己否定:

「自分って無能?日本に来たら稼げなくなるの?」

拘束と孤独:

自由にできる時間はゼロ。子どもとにらめっこ。寝たときだけが唯一の休息(ただし自分が一緒に寝落ちしないことが条件)。

落胆スパイラル:

子どものコントロール不能さに怒ってしまい、その後、自己嫌悪と後悔のループ。

それでも、格闘し続ける中で、少しずつプラスの面も見えてきました。

つながりの強化:

以前はママにしかできなかったことが、今は父である私も普通にできるように。

子どもが私に甘えたり、私だけがすぐ寝かしつけられたり、その特別な絆は言葉にならない。

歩みをゆるめる時間:

子どものゆっくりしたペースに合わせるうちに、僕自身も立ち止まり、「人生の優先順位」や「本当に大事な価値観」を考えるようになった。

心を鍛える修行:

育児は超硬度の砥石のように、ずっと私の忍耐と気性を削り続ける。

自分の限界を知り、崩壊寸前をどう歩くかを学んだ。

子どもがいるからこそ気づく——自分って意外と包容力ある(麻痺してる?)んだな、と。

予想外の副産物:

料理スキルが爆上がり。しかも安定して出し続ける必要がある。

台湾にいた頃なら絶対に起きなかった進化。

次のステップは?

弟はあと1年で幼稚園。

子どもたちが園に通い出したら、私は自分のキャリアと人生を再構築する必要があります。

この深く、そして人生で一度きりの「専業育児の修行」を経て、

自分が本気で打ち込みたい、情熱と意味を感じられる仕事を探したいと思うようになりました。

この修行は、私に自分自身を知る力を与え、家族をもっと愛せるようにし、

そして「自分にとって本当に大切なもの」をはっきりさせてくれました。

もし「専業育児が私に何をくれたのか?」と問われたら、こう言うと思います。

——人生の終わりや、子どもが巣立つ日になっても、

『子どもの幼少期に寄り添えた』と胸を張って言えること。

後悔なく、笑って手を離せること。

それこそが、専業育児がくれた最大の贈り物です

Christmas decoration, Tokyo Ginza, winter 2025


2025年12月12日

能力主義よ さようなら

 

「モルスタのデューデリジェンスで、○○○○を××××して…」

以前、同じ会社で働いていた☆子さんが、いつの間にか外資系金融に転職していた。

年末の東京で久々に会った☆子さんの発言が、まったく理解不能…

ちなみに、「モルスタ」はニューヨークに本社を置く投資銀行モルガン・スタンレー、「デューデリジェンス」はM&Aや投資、融資などを行う際に、対象企業の価値やリスクを事前に、詳細に調査・分析する適正評価手続きのことらしい。

日本語になっても、よくわからん。

語学力を生かした華麗なキャリアチェンジだが、働き方はモーレツそのもの。

締め切りに追われ、残業量は過労死ラインの月90時間

午前1時、2時まで働くこともあるという。

「新聞社時代の、時間に追われて働く感覚が役に立ってます」

と、彼女はいうが…

外資系よ、お前もか。

 

組織開発コンサルタントの勅使川原真衣さん(43)は大学卒業後、まずオーストラリアで日本語教師になり、帰国後は外資系コンサル企業で働いた。一企業コンサルでありながら、「職場に能力主義はいらない」と言っている。

日本経済新聞電子版のインタビュー記事から、ちょっとだけ紹介します。

・長女を出産してから乳腺に悩みを抱えていたが、忙しさを理由に受診せず。コロナ禍でやっと時間ができて病院に行き、進行乳がんと告知を受けた。初めて死を意識した

・がんになって、本当の意味で能力主義とさよならできた。強い自分、頑張る自分であり続けることなどできない。弱さを知ることこそ、本質的な強さなのだと自然体で理解した

・「能力」「実力」と思っているものは、たいがい偶然の産物。たまたま担いでもらった幸運に感謝し、不運が訪れている人の重荷を分け合いたい

・8冊の本を出し、多くの読者に感想を伺った。競争に疲れたり、職場で傷ついたりしている人がこんなに多いのだと再認識した

・組織の問題なのに個人の能力の責任にされて傷ついたことを口にできないから、心に傷として残ってしまう。パワハラではなくても、心理的安全性が担保されない現状を変えていく必要がある

・リーダーが部下をよく見て、得意なことを組み合わせて意見を出し合い、のびのび仕事ができるようにする。間違ったり、ミスをしたりする時には誰もが『ごめんなさい』と言い、互いをリスペクトしあう

・不眠不休で仕事をして大病を経験した者として、睡眠は最も大切だと思っている。尊敬できる人と仕事をすることも大事

Kyobashi Tokyo, December 2025


2025年12月5日

トーヨコ礼賛

 

新聞社で働いていた時、3年連続でホテル泊が年200日を超えたことがある。

出張まみれの仕事から足を洗ったのに、なぜかその後もホテル泊が多い。

名古屋の予備校に毎週通ったせいもあって、今年もホテル泊が100日以上。

…とはいっても、以前と違って宿泊費は全額、自腹だ。

もっぱら、「東〇イン」を愛用している。

10泊ごとにもらえる1泊無料の特典を、もう4回ゲットした。

 

ビジネスホテルチェーンでは、東〇インが一番、快適だと思う。

12㎡に統一された部屋は、窓が大きくて室内が明るい。そして、とても清潔。

壁紙に、水洗いできる素材を使っているそうだ。

客室数日本一を誇り、どこに泊まっても窓やベッド、机の配置が一緒。

朝目覚めると、自分が東〇インにいることは一発でわかるが、

「えっと…どの町にいるんだっけ?」 一瞬、戸惑う。

安心感は、ある。

旅情は…ない。

バスルームは最低限の広さで、ゆっくりバスタブに浸かる気にはならない。

でもシャワーが天井についていて、モンスーンの雨みたいに降り注ぐ(レインシャワー)。

まるで、リゾートホテルのよう。

ただ、2泊3泊するうちに、髪型が「トーヨコ・ヘア」になるから要注意!

シャンプーが上等でないらしく、洗い髪がペッタンコに寝てしまうのだ。

無料朝食の内容は、可もなく不可もなし。何十品目も料理が並ぶシティホテルは食べすぎるから、この程度がちょうどいい。

ふだんパン食なので、和朝食が食べられるだけで、旅気分にさせてくれる。

午前6時30分の提供開始からしばらくの間、朝食会場には長蛇の列ができる。ホテルによって、早い時間帯は中国人団体客に占拠される。

できれば、遅めの時間に行きたい。

そして東〇インは、週末や繁忙期も、原則ワンプライスを貫いている。某ア〇ホテルみたいに、繁忙期に価格を2倍3倍に吊り上げるようなことはない。

利用者には、とてもありがたい。

東〇インの社長は女性だ。露出しまくるア〇ホテルの名物女社長と比べて、上品な雰囲気。最近、メディアの取材に答えて「需給に応じて価格を変動させない分、他社より利益率は低い」といっていた。

今後もリピートしますから、どうかそのポリシーを捨てないで!

A budget hotelroom in eastern Japan, 2025


2025年11月28日

「成功」の反対は「失敗」にあらず

 

湘南に住んでいた頃の隣人・Kさん夫妻に会いに、札幌へ。

Kさんの夫は大学の先生だ。勤務先はそのままで北海道に移住し、大学まで1000キロを毎週、飛行機で往復している。

その距離感覚、まるでオーストラリア人。スケールの大きな人だ。

K先生に大学院受験の結果を知らせると、

「法科大学院や公認心理師、臨床心理士指定大学院は、国家試験の合格率が学校の評判に直結します。だから入試では、受験生を厳しく選別する」

「学部から上がってくる内部生を優遇する傾向は、どの大学院もあります」

「国立大は特に費用対効果にうるさい。だから老い先短い社会人より、若い学生を優先して入学させる傾向はあるかも」

…マジか。

 

1年半の受験生生活で得た教訓を、忘れないうちに書いておこうと思う。

①「意志力」でなく、「習慣」の力に頼るべし

→独学では意志力が続かないと思い、2年目から名古屋の予備校に通った。「通信コース」もあったが、あえて「通学コース」を選択。自宅から170キロをJRで往復し、ビジネスホテルに泊まりながら講義を受けた。

おかげで生活にリズムが出来て、か弱い意志力に頼らずに済んだ。

②「公正世界信念」は、常に正しいとは限らない

→目に見えない「こころ」を扱う心理学は、絶対的な正解が存在しない。例えば心理学用語ひとつ取っても、本によって定義が違ったりする。だからどんなに勉強しても、あいまいな部分が残った。

入試では採点する教授の傾向をしっかり把握しておかないと、無駄な努力で時間を浪費し、いつまで経っても合格にたどり着けない。

努力は常に報われる、とは限らないのだ。

③「運がいい人」とは「チャンスに遭遇する確率が高い行動をしている人」、つまり「試行錯誤の回数が多い人」

→答案用紙を論述で真っ黒に埋めても、なぜか結果は不合格だったし、圧迫面接で散々な目に遭っても、なぜか受かる時は受かる。

心理学は正解がないからこそ、本命校以外にも、複数校を受験すべし。

④「自分が何に興味を持ち、喜びを感じるか」を探すなら、「特にがんばったつもりはないが、周囲からよく褒められること」を見つけるのが近道

→特にがんばったつもりはないが、予備校のテストはだいたい満点が取れた。そして受験が終わった今も、暇さえあれば心理学の本ばかり読んでいる。

好きこそものの上手なれ、だ。

⑤「成功」の対義語は、「失敗」ではなく「挑戦しないこと」

→もしK先生の言葉を2年前に聞いていたら、たぶん受験しなかった。

知らないが故の蛮勇が、結果オーライを導いた…⁈

Sapporo Japan, November 2025


2025年11月21日

たかがごみ出し、されど…

 

会社時代の同僚クリコさん一家が、長かった海外暮らしから心機一転、すぐ近くに引っ越してきた。

「これ読んどいてね~ なんだか知らないけど」

クリコさんが、市役所でもらった冊子をダンナに手渡した。

「…何これ」

外国籍(でも日本語ペラペラ)のダンナさま、冊子を手に呆然としている。

「○○市 ごみ 出し方の手引き」と表紙に書かれたそれは…

なんと、43ページもあった。


そうなのだ。わが家は隣のM市だが、ごみ出しルールの細かいこと!

毎日、家庭で出るごみを、25品目に分別しなければならない。

例えば、プラスチックごみは「長辺30センチ以上」と「それ以下」に分別。

ビン類は、「透明」か「茶色」か「その他の色」に分別。

「キリン」「アサヒ」「サッポロ」のビール瓶は、収集日が別。

紙類を、まとめて「燃えるごみ」に出すのはご法度。

封筒やメモ用紙、はしの袋などの小さな紙は、分別して「資源ごみ」へ。

和紙や感熱紙、写真は、「燃えるごみ」へ。

ペットボトルは、よく水洗いして「資源ごみ」へ。

キャップとラベルは必ず外して、「プラスチックごみ」として出すべし、等々…

ごみの回収日は、曜日別、品目別に「週2回」「週1回」「月2回」「月1回」と決められている。カレンダーとにらめっこして、間違えないよう細心の注意を払いながら、朝8時30分までに出す。

そして、ごみ袋の表に、必ず名前を書く。

うっかり忘れると、回収してもらえない。

いやはや…


 ところが同じ県内でも、C市はとても大らか。

分別は、「可燃ごみ」と「不燃ごみ・資源ごみ」の2種類のみ。

金属やガラス以外はだいたい可燃ごみ、と覚えておけばOKだ。

プラスチックを燃やしてもダイオキシンが出ない高性能焼却炉があるのか、それとも「住民に高齢者が多いから、やむなくルールを簡略化した」のか。自宅近くの「ごみステーション」は24時間365日、いつでもごみ持ち込み可だ。

M市とC市を往復しながら双方で暮らしていると、ごみを捨てやすいというそれだけで、生活の幸福度は大幅にC市の方が高い。

たかがごみ出し、されどごみ出し…



2025年11月14日

「オータニ・エフェクト」

 

たまには、タイムリーな話題を。

今年も米大リーグのMVPに輝いた大谷翔平選手は、広告界でも唯一無二の存在だ。ロサンゼルスで広告代理店を経営する岩瀬昌美氏が、マーケターの視点から「オータニ・エフェクト」を取り上げている。

プレジデント・オンラインから、一部を紹介します。

・大谷選手の昨年の広告収入は、推定7000万ドル(約109億円)。ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手(700万ドル)の10倍だ

22年に達成した「規定打席と規定投球回を同時にクリア」「投手として10勝以上・打者として30本塁打以上」、24年の「50本塁打&50盗塁」はいずれもMLB史上初。その圧倒的な実績が、大谷選手のブランド価値の基盤にある

・だが、大谷選手が広告界で成功した大きな要因は、彼がアメリカで築き上げた「古き良きアメリカの野球少年」というパブリック・イメージにある

・球場にゴミが落ちていれば拾い、不調でもベンチで暴れない。いつも爽やかな笑顔で、勝っても負けても腐らない。こうした振る舞いがアッパー層の「ジェントルマンであれ」という価値観に合致し、「よくできた息子」として、アメリカのお母さん世代から絶大な支持を得ている

・さらに、アメリカが抱える人種問題の中で、大谷選手は「ダイバーシティ・イメージ」のポジティブな側面を持っている

・英語が堪能でない東洋人が、純粋な情熱とひたむきな努力によって成功を収める姿は、多様性を重んじるアメリカ社会において希望の象徴となり得る

・以前、大谷選手が通訳を使っていることを揶揄した野球解説者が、コメントの撤回と謝罪に追い込まれた。これは、移民への偏見を是正しようとするアメリカ社会の動きを反映している

・大谷選手のドジャース移籍後、球場広告の値段が爆上がりしたにもかかわらず、その5割が日系広告になった。エンゼルス時代、目立つバックネット裏に広告を出した「くら寿司」は、超お得な買い物をしたといえる

・ロサンゼルスで家族4人で野球観戦に行けば、チケットだけで約400ドル(5万7000円)。ホットドッグや飲み物、お土産代を含めれば14万円を超える

・「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がる中で、それでも大谷選手を見にスタジアムに足を運ぶ人々は、彼に「夢」を見出しているのかも知れない

・水原一平元通訳による違法賭博問題の際、「なぜ多額の資金の動きに気づかなかったのか」「なぜ自分で英語で説明しないのか」という批判が噴出した。アメリカが自己責任の国であり、移民社会であるからこそ、成功者には「アメリカン・ドリームに挑戦した者」の責任と自覚が求められる

・大谷選手が少しずつ英語でメディア対応するようになったことは、アメリカ人から「本当の仲間」と見なされるきっかけになる

・大谷選手が輝き続ける限り、日本もまた世界でその存在感を持ち続けることができるだろう

Yarigatake, from NH707 NGO-CTS  2025/11/07


2025年11月6日

大学院受験の魑魅魍魎

 

改めてわが身を振り返れば、高校受験も大学受験も就職活動も、第2志望にご縁を頂いている。

そして、第2志望に行って本当によかった(=第1志望に落ちてよかった)と、心から思う。

いやいや、負け惜しみでなく本当に!

今回の大学院受験もまた、第2志望校に行くことと相成った。

セラヴィ、それが人生だ。気持ちも新たに、充実した2年間を送りたい。

 

「高校受験や大学受験と大学院受験は、まったく異なります。大学院受験は、誰も助けてくれない大人の受験です」

予備校でお世話になった、ミヤガワ先生の言葉を思い出す。

高校や大学受験の時は、予備校の模擬試験を受ければ、自分の実力が偏差値で示された。全受験生の中での自分の位置を、正確に知ることができた。

今回、心理系大学院に挑戦するに当たり、1年目は独学で勉強し、第1志望校だけを受験して惨敗。次の年は予備校に通った。

本番1か月前に行われた実力診断テストでは、自慢じゃないけど(自慢だけど)全国7位。上位5%に食い込む点数が取れた。

我ながら頭脳明晰! 心理学部の学生なんかに負けねーぞ!

好きこそものの上手なれ、だ。

そして迎えた、試験本番。

出題された設問には、明らかに予備校の模試レベルを上回る、かなり難解なものが含まれていた。

そして、

「心理系大学院入試に正解はない。教授がいいねと思った論述がマルになる」

というウワサが、疑心暗鬼をかき立てる。

さらに、合計300点満点のうち、専門科目と英語が200点で、たった15分間の面接に100点が配分されるという現実。

(第2志望校は、400点満点のうち面接が200点を占めた)

筆記試験でがんばっても、面接次第でいくらでも不合格があり得る。だから面接は、極度の緊張を伴った。

「就職面接は自己呈示でいいけど、大学院受験は自己開示の方がいい」

というミヤガワ先生のアドバイスに従い、面接では「自分をこう見せたい」と意図的に印象操作を行う(自己呈示)より、自己の内面を正直に、率直に伝える(自己開示)ことを心掛けた。

1勝1敗だった今回の結果を考えると、結局、その大学のカラーに合う人材かどうかが合否を分けたのかも知れない。

「大学院受験は大人の受験」という先生の言葉が、身に染みた。

Tateshina Japan, 2025


2025年10月30日

出会い頭の恋

 

「これから、ロールプレイをやって頂きます」

Y大学院の受験会場で、筆記試験に続いて行われた口頭試問。

これでもかとばかり意地悪な質問を続けた男性教官が、唐突に宣言した。

「不登校気味の中3女子が、親に言われて渋々面接にやってきた、という設定です。あなたはスクールカウンセラー役を」

(は? 心理面接って、入学してから実習で教わるんじゃないの?)

有無を言わさず、すぐに場面スタート! ドアを開けて入ってきたのは、中年の女性教員。ふてくされた顔でおし黙ったまま、目を合わせようともしない。

反抗期の中学生「A子」になりきって、迫真の演技を繰り広げる。

数人の面接官が、じっと私を見つめている。

(い、いったいどうすれば…)

「はい、そこまで!」の声がかかるまで、何分が経過していたのか、そして自分が何をしゃべったのか、まったく記憶にない。

(支離滅裂…しどろもどろ…ダメだこりゃ)

 

臨床心理士の受験資格が得られる心理系大学院は、県内にS大学1校だけ。去年、独学で入試に挑戦したが、秋季試験も春季試験も落ちた。春季試験の倍率は10倍だった。

ひとりで勉強するのも心細いので、今年は予備校に通った。

そして、自分がどんなに能天気だったかを知る。

ライバルは、みな心理学部の現役4年生。そして、入試問題は全問が論述形式。まぐれ当たりが期待できない上、大学院によって「精神分析」「行動主義」「人間性心理学」など学派が異なるので、学校別の受験対策が必要だという。

例えば、精神分析派の教授が仕切る大学院を受験して、うっかりフロイトの理論を批判する論述を書こうものなら、一発でレッドカード退場!なのだ。

心理学初心者の社会人が何も知らずに出向けば、まず100%返り討ちに会う。

「一校受験はとても危険です!」

予備校のカリスマ講師・ミヤガワ先生に諭されて、今回はギリギリのタイミングで、隣県のY大学院にも願書を出した。ろくに学派も調べずに。

そして結果は…

面接で和気あいあいだった本命S大学院は、またもや不合格。これで3連敗だ。

そして、悲惨なロールプレイを演じたY大学院からは、まさかの合格通知が。

 

「2年越しの片想いの相手(Sちゃん)に3回告白してフラれ、通りがかりにナンパしたYちゃんには、出会い頭に愛されちゃいました」

とミヤガワ先生に報告したら、

「いい例えですね」と褒められた。

貴重なご縁を頂いたY大学院に、お世話になろうと思う。

Nagoya City Museum of Art, 2025


2025年10月24日

否定しない がんばれと言わない

 

生活保護世帯の小中学生を教えていた数年前、その塾の講師仲間は、学校の先生だった人が多かった。

「そんなやり方じゃダメ!」

子どもと接する時、彼らがまず「否定」から入るのが、とても気になった。

いま働いている自然学校でも、小中学生を引率する先生たちから「ダメ」という言葉をひんぱんに聞く。言い方も、かなり高圧的だったりする。

 将棋の藤井聡太七冠の“師匠”杉本昌隆八段が、「子どもの才能をぐんぐん伸ばす親がしているたった1つのこと」と題してメディアのインタビューに答えていたので、その一部を紹介します(ダイヤモンド・オンラインより)。

・現在の弟子は10人、以前は将棋教室を開催していたので、その生徒も含めると100人近くの子どもと接してきた

・子どもの才能をつぶさないために気をつけていることは、「否定をしない」こと。将棋の指し方は、弟子の人生観にも関わる。必ず一手や二手は“いい手”があるから、まずそこを褒める

・そして褒めた後に「ここでは自分ならこうするかな」と、否定ではない表現で指導する

・「がんばれ」という言葉も、あまり言わないようにしている。これは弟子だけでなく、自分の子どもに対しても同じ

・学校、習いごと、SNSや友達との距離感……現代の子どもたちは、私たちが子どもの時代より多くのストレスを抱えている。大人が思っている以上に頑張っているはずで、少しの余裕もないほど気持ちが張り詰めている

・こちらが励ますつもりで口にした「がんばれ」という言葉で、かえってその気持ちが爆発してしまうことも起こり得る

・対局前も「がんばって勝て」とは言わない。「勝て」と言われて勝てたら苦労しないし、2人が対戦すればどちらか1人は負け、全員が勝つことはできない

・「奨励会」は、26歳までにプロである四段に昇段できなければ退会となる。昇段するのは全体の2割で、ほとんどの人は棋士になれない、成功できない

・かといって「棋士になれないこと」が、「人生の失敗」ではない。負けて何かが手に入らなかったり、失ってしまったりすることはあっても、取り返せないような失敗や負けというものはないのではないか

・これは将棋に限らず、一般的な進学や就職など、人生の山場でも同じ

・大切なことは精一杯やる、力を出しきることだから、よく話すのは「いい内容にするように」ということ

・実力が互角なら、最後は強い気の人、前向きな気持ちの人が勝つ。技術(実力)はもちろん大事だが、自信がないとその先で技術がいかされない。だからなるべくいいところを見つけて、自信をもたせる

Babgkok Thailand, 2025



2025年10月17日

心理学者の子育て

 

実験台のイヌに餌を与えると、条件反射で唾液が分泌される。

次に、餌を与えながら、メトロノームの音を聞かせる。

何度も何度も、それを繰り返す。

やがてイヌは、餌なしでも、メトロノームの音を聞いただけで唾液を分泌するようになる。

有名な「パブロフのイヌ」の実験だ。

この一連の手続きは「レスポンデント条件づけ」と呼ばれる。これを心理学用語で説明すると、

「無条件刺激と条件刺激の対提示の反復により、無条件刺激に対する無条件反応を、条件刺激のみの提示によって、条件反応として発生させる手続き」

ということになる。

 この実験に人を使ってしまったのが、アメリカの心理学者ジョン・ワトソンだ。

まず、アルバート坊や(1歳)に白いネズミを見せる。

かわいいネズミに手を伸ばして触ろうとする、アルバート坊や。

そこに恐怖はない。

次に、坊やが白ネズミに手を伸ばした瞬間を狙って、ワトソンが鉄の棒を思い切りハンマーで叩いた。大きな音が、響き渡る。

数回繰り返すと、やがて坊やは、白ネズミを見ただけで泣き叫ぶようになった。

この実験により、「恐怖」という情動さえ、条件付けによって学習されることが明らかになった、ということだが…

いやはや、1歳児を相手にとんでもない実験をやったものだ。

 「私に健康な乳児を12人預けてくれれば、彼らを医者でも弁護士でも芸術家でも、どんな種類の専門家にでも育てて見せよう」

と豪語したワトソンは、学習理論を引っ提げて一世を風靡した。

 

ここまでが、心理学の教科書で教わる部分。実は、この話には続きがある。

ワトソンは、「アルバート坊や」の実験で助手を務めた女性と不倫した。それが公の知るところとなり、大学を解雇される。

30代の若さで、心理学界から追放されることになった。

妻子と絶縁したワトソンは、不倫相手との間に2人の子をもうけた。「情緒的接触を排し、冷静に条件づけによって育てる」ことを育児の理想とし、「抱きしめるな、キスするな、頭をなでるな」と説いた本を書き、自ら実践した。

その結果、どうなったか。

長男は、うつ病を発症して自殺。次男も心を病んだ。次男は後年、「私たちは愛情を知らずに育った。父の理論は理論としては立派だが、人間を幸福にはしない」と語ったそうだ。

ワトソンの子どもたちの人生は、愛情を排除した環境がいかに人間を傷つけるかを、証明してしまったのだ。

Cebu Philippines, 2025


2025年10月10日

カリスマ塾講師

 

K塾東京校・S先生の心理学概論は、いつも緊張感に満ちている。

顔を覆うマスクから露出した鋭い目で、眼光ビームを飛ばしながらの講義。時おり510秒ほどの不気味な沈黙が挟まり、ますます生徒の緊張をあおる。

S先生の講義をオンライン視聴していると、自分は名古屋校を選んでホントよかったなぁ、と思う。

 

「ところでみなさん、ゴキブリを素手で掴めますか? 私は掴めます」

生徒を睨みつけるように8秒間沈黙したのち、おもむろにS先生が言った。

先生が解説する「レスポンデント条件づけ」理論によると、人がゴキブリを怖がるのは、ゴキブリを見た母親が「キャーッ!」と叫ぶのを目撃するうちに、いつの間にか「ゴキブリの姿→恐怖反応」と学習した結果なのだという。

「なにしろ大昔、ゴキブリは人間の食料だったんですから」

そして、この恐怖は生得的なものでなく「誤った学習の結果」なので、再学習により「消去」することも可能だという。

そうかなー、自分は一生、ゴキブリを怖がりそうだけど…

 

「ところで皆さん、鼻くそをほじったことはありますか? 私はほじります」「でも、時と場合によります」

この唐突な発言は、「客体的自覚理論」の講義中に飛び出した。人は、他人がいる時といない時とでは、行動がまるっきり違ってくる、という話だ。

そういえば、学生時代に旅したバンコクのデパートで、きれいな女子店員が、鼻の穴に小指を突っ込んでいたっけ。ここ最近は残念ながら(?)、そういう光景を見ることはなくなった。

社会的規範は、時とともに移ろうものらしい。

 

「人は生まれた時から性欲を持っており、性感帯が口唇(0~1歳半)から肛門(~3歳)、男根へと移っていく(男児の場合)。4歳ごろから母親への性愛感情を抱くが、父親に復しゅうされペニスを奪われる、という不安を募らせる」

フロイトの「心理―性的発達段階説」を解説しながらS先生、猛烈にフロイトを罵倒した。確かに「ホンマかいな?」と思うような理論だが、一世紀を経てなお心理学の教科書に載るということは、それなりに真実なのかも知れない。

「フロイトは、ただのエロジジイ。天才的なエロジジイです」

「20世紀の思想の巨人」を、公然と「変態」呼ばわりするS先生。フロイト派が多いK大学やG大学の先生には、ちょっと聞かせられない講義だ。

予備校のカリスマ講師は、かくも個性が強いのです。

Shanghai China, 2025


2025年10月3日

代理母とモンスターマザー

 

心理学の世界に「ハーロウの代理母」という、かなり有名な実験がある。

まず、アカゲザルの赤ちゃんを、母ザルから引き離して檻に入れる。

次に、2体の模型の代理母を同じ檻に入れる。

1体は針金製。胴体の表面に、針金がむき出しになっている。

もう1体はタオル製。胴体に、タオルを巻き付けてある。

通常、アカゲザルの赤ちゃんは、母親にしがみついて一日の大半を過ごす。

さて、本当の母親がいないこの子ザルは、どちらの代理母にしがみついたでしょう?

実験の結果は、大方の予想通り。

子ザルは、タオル製の代理母にしがみつく時間が圧倒的に多かった。

そして意外なことに、針金製の代理母にミルク入りの哺乳瓶を付けてもなお、子ザルはタオル製代理母の方を好んだという。

この研究は、子どもはおっぱいで空腹を満たしてくれるから母親を好きになる、という「二次的動因説」への反証となり、父親の育児参加を促すきっかけになった…ということだ。

 それでは、もし私と妻の間に子どもがいたら、その子は私に愛着を示してくれただろうか?

何しろこのお父さん、おっぱいが出ない上に、針金のように痩せている。

結果次第では、心理学史に残る人体実験として、後世に名を残せたかも⁈

 

ハーロウはまた、「モンスターマザー」と呼ばれる実験を行っている。

今度は、子ザルがタオル製の代理母に抱きつくと、突然、針が出て来て突き刺す、というプログラムを組んだ。

この実験で子ザルは、針に刺されてもなお、「母」に抱きつくことをやめなかった。

何度刺されても、泣き叫びながら、再び抱きついていった。

虐待する親にも向けられる、子どもの無条件の愛。

果たしてこの実験結果、人間にも当てはまるのだろうか…

 ※実験が行われたのは、1960年代のアメリカ。そのあまりの残酷さに、現在これを追試して再現することはできない。

 

一連の実験を行ったハリー・ハーロウは、「天才心理学者」「愛を科学で測った男」と呼ばれた。

だが、彼の生涯を描いた本によれば、「愛」を研究対象にしたハーロウ自身は生きることに不器用で、終生「愛」に悩み苦しんだ、と伝えられている。

Bangkok Thailand, 2025


2025年9月26日

『なぜ日本人は間違えたのか』

 

終戦60年の夏、報道カメラマンとして遺骨収集団に同行し、パプアニューギニアに向かった。

日本から遠く5000キロ離れた、赤道直下の島。元日本兵の男性やボランティアの女子大学生らがジャングルの地面を掘ると、ほとんど土と同化した人骨が出てきた。戦時中、野戦病院があった場所だ。

この島に上陸した日本兵約20万人のうち、生きて帰れたのは1万人。食料の補給を絶たれ、死因の大半が餓死や病死だったという。

密林を出ると、出し抜けにケータイが鳴った。東京本社のデスクからだ。

「パキスタンでM7.6の地震発生、死傷者多数らしい。お前、衛星電話持ってるんだろ? すぐに向かってくれ」

(えーっ東京の方が近くないすか? ぼく半袖しか持ってないんですけど)

という言葉をぐっと飲みこみ、ポートモレスビー、アデレード、シンガポール、ドバイ、カラチ、イスラマバード経由で震源の村に向かったのだった…

そして今年は、はや戦後80年。関連ニュースがメディアを賑わせる中、日経ビジネス電子版に作家・保阪正康氏のインタビューが載っていた。

『あの戦争は何だったのか』『なぜ日本人は間違えたのか』などの著作がある保阪氏は、何千人もの元軍人や政府関係者に取材を重ねて史料を徹底検証する、実証主義的なスタンスで知られるノンフィクション作家だ。

インタビューの一部を紹介します。

・学校を出たばかりの二十歳過ぎの若者が、鉄砲を担いでなぜニューギニアなどに送られて死ななきゃいけなかったのか。彼らは行き先も告げられずに船に乗せられ、地獄のような戦場で命を落とした

・なぜこんなことになったのか。戦争で死んだ兵士たちのためにも、きちんとした答えを出さなきゃならない

・戦後の左翼的な歴史観に対して、実証的な歴史研究に基づいて異議申し立てをすると、「お前は右翼だ。軍国主義者だ」と非難される。逆に、太平洋戦争における日本の軍部の問題点を指摘すると「お前は左翼だ」と批判される

・あの戦争が正しかったとか、間違っていたとか論じる必要はない。人は好むと好まざるとにかかわらず、生まれた時代の枠組みの中で生きていくしかない

・あの戦争から学ぶべき1つのポイントは、シビリアンコントロール(文民統制)が存在しなかったこと。ヒトラーもスターリンも軍人ではなくシビリアン。軍人が政治を手中に収めてコントロールしたのは、日本だけ

・首相と陸相を兼務した東條英樹は、国民に「戦争は負けたと思った時に負けるんだ。だからそう思うまで負けていない」と語っていた。まさに精神論。残念ながら当時の日本は、政治と軍事の指導者のレベルが本当に低かった

・慶応大在学中に召集された上原良治は、神風特攻隊として出撃する際「明日は自由主義者が一人この世から去ってゆきます」と全体主義を批判し、一方で「特別攻撃隊に選ばれたことを光栄に思っている」と述べた。

心に矛盾を抱えながら運命を受け入れ、22歳で沖縄の空に散っていった

Vientiane Laos, 2025


2025年9月18日

令和の「できるママ」

 

週末の夜、予備校帰りにフランス風ビストロに寄って、自分へのご褒美にステーキを頬張っていた。

隣のテーブルは、母子と思しき20代と40代の女性2人組。

お揃いのフリフリのコスプレ風ドレスを着て、にぎやかにおしゃべりしながら、ケーキをパクついている。

見たところ、推し活のコンサート帰りか? 

今の20代は、親と仲がいいなぁ。

そういえば一昨年、大学山岳部の学生とヒマラヤ登山をした時も、ケータイが通じる村では皆、日本の母親とLINEでビデオ通話してたっけ。

 

博報堂が1922歳を対象に行った最近の調査で、若者と両親との関係性が、かつてないほど緊密になっていることが判明したという。

以下、日経ビジネス電子版の記事の一部を紹介します。

1994年から2024年の30年間で、若者の幸福度や生活満足度が大きく向上した。「生活に十分満足している」と回答した若者は、9.4%から30.0%に増加。「非常に幸せ」と感じている人も、19.7%から33.5%に増えた

・「失われた30年」の中で育ち、経済成長を経験していない今の若者は不幸なのではないか——そんなイメージとは正反対の結果

・人の幸福度の柱となる経済状況、健康状態、人間関係の3大要素の中で、特筆すべき変化が見られたのが人間関係。なかでも家族、特に母親との関係の緊密化が、若者の幸福度に寄与していた

・以前の若者は思春期以降、親と一緒に街を歩くだけでも恥ずかしく感じていた。一緒に趣味に興じたり、洋服を共用したりするなどもっての外だった

・ところが2024年調査では、「本当の自分を一番見せている相手」や「自分の価値観に一番影響を与えている相手」で「母親」を挙げる割合が大きく増加し、「親友」からトップの座を奪った

・日常生活や趣味、ファッションはもちろん、受験や就職活動、資格取得など様々な面で、息子・娘を問わず、母親の影響を強く受けている

・かつて母親は大学受験や資格試験の受験を経験していなかったり、就労経験が少なかった。父親に比べて社会から遠く、ロールモデルや人生のアドバイザーとしての役割を担いづらい側面もあった

・しかし、現在では女性が男性と同じように学歴社会を歩み、社会の中で実績を積んでいるケースも増えている。「母親が子どもの勉学やキャリアに関わるようになった」というより、「関わることができるようになった」

・母親が様々な経験をしているからこそ、具体的かつ説得力のあるアドバイスができる。子どもから見て、知識もスキルも持ち合わせた「できるママ」が増えている

…令和のZ世代、幸福度爆上がりの原因は「できるママ」の存在だった!

Nong Khai Thailand, 2025


2025年9月12日

HIKIKOMORI

 

不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。

増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。心理系大学院入試でも、事例問題としてよく出題される。

対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循環にアプローチしていくことだという。

 

「社会的ひきこもり~終わらない思春期」(PHP新書)の著者で、不登校やひきこもりの事例に長年関わってきた精神科医の斎藤環氏のインタビュー記事の一部を、日経ビジネス電子版より紹介します。

・「Hikikomori(ひきこもり)」は英語になって、辞書にも載っている。日本には、成人した子どものケアを両親がナチュラルに続ける文化がある

・英国や米国では、成人した子どもは家から出ざるを得ず、社会参加できなければホームレスになる。日本における「ひきこもり」に該当するのは、英米では「ホームレス」

・でも最近は英米でも、子どもがかわいそうだから家で面倒をみよう、という親が増えている

2022年度の統計で、不登校は小・中学校で約30万人。原因の1位は「子ども同士の人間関係」で、いじめも含まれる。2位は「教師との人間関係」で、ハラスメントも含む。3位は「家庭の問題」で、ネグレクトなどの虐待

・逆にいえば、子ども本人に原因があるケースはほとんどない

・ところが文部科学省の調査では「不登校の主な要因」で最も多いのが生徒本人の「無気力・不安」で、次が「生活リズムの乱れ・あそび・非行」。「生徒本人のせいだ」という回答が6割以上を占める

・自分たちのせいにしたくないので、子どものせいにしている

・親の対応としては、不登校の子には学校の話をしない、ひきこもりなら仕事の話や将来の話は一切しない。これが大前提で、それ以外のおしゃべりを親子でたくさんすること

・親としては難しいことだが、そこを我慢する。そして、「話すことを我慢している」ことを子どもに分かるようにする。手のうちを全部見せることが、信頼関係につながる

・暴言や暴力も、不登校・ひきこもりに伴いやすい。親は「私は暴力を受けたくない」「私はイヤです」と言っていい。「ダメ」は「禁止の言葉」で子どもには全く通用しないが、「イヤ」は「拒否の言葉」で結構効く

・親の家出も有効。1週間ほど家出して帰る頃には、子どもの暴力が収まっていることが、かなりの確度で期待できる

・ひきこもりの解決策の優先順位は、「親のセルフケアが1番。2番目が子どものケア」。そうしなければ、共倒れになってしまう

Matsumoto Japan, 2025


2025年9月5日

昭和の新入社員 令和の新入社員

 

山岳部の後輩で4月に就職したなっちゃんと、社会人2年めのマソラさん。

八ヶ岳登山のついでに、わが家に寄ってくれた。

「会社で働くのは楽しいです!」 なっちゃんが、生き生きとした顔で言う。

は? 会社で働くのが、楽しい?

(ぼくは25年会社で働いたけど、楽しいと思えたのは3分だったよ涙)

彼女の会社は、完全フレックスタイム制。出社時間も退社時間も、自分で決められる。

(なっちゃん、ぼくが就職した頃はね、新入社員は誰よりも早く出社しなきゃいけなくて、夜は上司が帰っていいと言うまで毎晩、残業だったよ涙)

マソラさんはというと、新卒で入った組織にさっさと辞表を出してきた。

医療系の国家資格を取るべく、再び学校で勉強するという。

この2人と自分とは、仕事観、職業観がまったく違うんだろうなぁ。

 

『働くということ』(集英社新書)の著者で組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏が、「職場をダメにするブレない上司~成功体験にこだわり部下をつぶす」と題してインタビューに答えている。

こういう上司、いたいた! ウチの職場にも。

日経ビジネス電子版から一部を紹介します。

・一元的な能力主義で組織を運営するマネジャーは、誰に対しても同じ態度で接しようとする。一見、公平でいいことのようだが、多様な人たちに対して同一のモノサシを当てて評価するので、個人の持ち味の違いをうまく引き出せない

・その人がマネジャーに抜てきされたのは、「過去に」成果を上げたから。だから、そのときの成功体験をどうしても引きずってしまう

・一元的な能力主義の下、「強くあれ、勝ち続けろ」「優秀さのみが正しさである」という価値観で仕事をしてきた人が、マネジャーとしてチームを率いる立場になると、部下にも同じことを求めてしまう

・部下が成果を出せないときに、「自分の側が変えられることはないだろうか?」と思えればいいが、相手の問題にするほうが楽。部下が弱かったから、能力がなかったからと考えたほうが「優秀な自分」を温存できて、精神衛生にいい

・マネジャーが自分の成功体験を引きずり、それだけを正攻法だと捉えて部下にも同じやり方を押しつけてしまうと、それが合わない人は認めてもらえなくなる

・いまだに大企業は「優秀な人」を求めている。職務要件をはっきりと定めず、「どんな部署でも頑張れる人」を採りたがっている。求める人材像は「即戦力」で「万能選手」。そんな、スーパーマンみたいな人はいない

Shanghai China, 2025


2025年8月28日

やられたら、やり返せ!

 

学生時代の同級生Z子さんが、わが森の家にやってきた。

昔からの彼女の印象といえば、「まじめ」「物静か」「しっかり者」「努力家」。

卒業後、実業家の夫と結婚して3人の娘をもうけた。

上の2人はもう社会人だ。

娘さんたちは今、恋多き年ごろ? それとも草食系だったりするのかな。

聞いてみたら、長女と次女にはボーイフレンドがいるという。

 

長女に恋人ができたらしいことには、うすうす気づいていたZ子さん。

そのうち、あろうことか、その彼と、夜中に、自宅の洗面所で、鉢合わせするようになった。

「あ、どーも」

「あ、ども…」

お互い、軽く会釈してすれ違う。

そのうち、冷蔵庫の中身が、異常な早さでなくなるように。

そこで初めて、わが娘の部屋にオトコが住んでいることに気づいた。

カセットコンロを持ち込んで、煮炊きしていたという。

「だって私、昼間は仕事でいないし…」

「それにウチは会社兼自宅で、リビングは3階、娘の部屋は1階だから…」

と、言い訳するZ子さん。

「まさか…ダンナも気づかなかったの?」

「彼はほら、あの通り愛想のない人だから」

夜中の洗面所で娘の彼氏と鉢合わせしても、チラッと一瞥をくれるだけ。

ダンナさまも、特に気にしていないという。

隣にいたK子さん(Z子さんの親友)(同じく20代の娘の母)が、口をあんぐり開けて、Z子さんを見つめていた。

 

そして最近、次女にもボーイフレンドができた。

夜になっても、帰って来ない。

どうやら、彼の部屋で同棲を始めたらしい。

ここまで話したZ子さんが、低い声で呟いた。

やられたら、やり返せ! だよ」

やられたら、やり返せ…?

 

長女の彼も次女の彼も、

「2人とも、とってもいい人」

だ、そうだ…

Cebu Philippines, 2025


2025年8月22日

命の恩人

 

猛暑の東京から、今年もXさんがやってきた。

お盆の帰省客に混じって、赤いTシャツに薄いサングラスの怪しい男が、ホームに降り立つ。

こう見えてもXさん、大手新聞の海外支局を渡り歩き、現在も社の中枢を担う敏腕記者である。遠い目をしながら知的な語り口で、理路整然と話し出す。

「赤坂の△△ホテルにナース兼デリヘル嬢のサトウさん呼んで〇〇〇プレイしてたら…」

実は彼の話の8割が、エッチ系下ネタ。カードキーなしでエレベーターに乗れる(=部屋にデリヘル嬢を呼べる)都内の高級ホテルを、完璧に把握しているからすごい。

「そうしたらナースのサトウさんが『Xさん、前立腺が腫れてるよ』って。検査してみたら、放っておけば命に関わる病気が見つかったんです」

〇〇〇プレイ転じて、福となす。

触診で病変を見つけた看護師兼デリヘル嬢サトウさんは、Xさんの命の恩人だ。

(その後も下ネタが続いたが、当ブログの貴重な女性読者を失うので控えさせて頂きます)

「治療のためのホルモン注射で男性ホルモン値がゼロになったから、最近は煩悩も全くありません」と、Xさん。

その割に、先日も真夜中の銀座・ポンパドゥールで、疲れた顔をした水商売の女性にパンを大量におごって、連絡先を聞き出したという。

どこが煩悩ゼロなんだか。

ま、お元気そうで何よりだ。

コロナ禍以降、銀座の夜の店も12時には閉まるようになった。東京メトロ銀座線の終電は、ドレスの上にコートを羽織った物憂げな女性で満員だそう。

八ヶ岳の森から、大都会の夜を垣間見た。

Xさんは世界を取材して歩き、南米もほぼすべての国を制覇している。

「観光旅行で南米に行くとしたら、どの国に行けばいいですか?」

「なんといっても、コロンビアです」

「コロンビア? へぇー、そんなにいい国なんだ」

「ベネズエラもきれいだけど、あそこは整形が多い」

あ、そっち方面の評価ね。

「私は夜型人間だから、朝はいつもコーヒーだけ」

と言った翌朝、Xさんはゆで卵4個にバターを山盛りにして食した。

彼が去った後の食卓には、大量の卵の殻が散乱していた。

私生活での言行不一致が、記事の信憑性を損なう事態に発展しないか心配だ。

帰りの車内で社説を書くそうですが、くれぐれも、あらぬ方向に筆を滑らせないように…

Bangkok Thailand, 2025


2025年8月15日

逃げ腰スクールカウンセラー

 

中学校のスクールカウンセラーの相談室に、3年生の女生徒がやってきた。

そして突然、軽い調子で

「先生、実は生理が遅れているんだけど、やばいと思う?」と聞いてきた。

12月の初めに知り合った男の子と実はセックスしちゃった。コンサートに行って知り合った子で、本名もどこに住んでるのかも知らない」とのこと。

父子家庭で父親は仕事が忙しく、夜遅くまで帰って来ない。

「パパには絶対話さないで。担任にも話さないで」という。

「もし妊娠していたら、あなた一人ではどうにもならないよ」というと、

「テレクラで金のありそうなおじさんと知り合って援交して、お金をもらっておろす」という。

【あなたがスクールカウンセラーだったら、この生徒に対してどのように対応するか。30分、600字以内で答えよ】

 これは先日、名古屋の心理系大学院予備校で出された問題だ。

「事例問題」といって、大学院入試でよく出るスタイルらしい。

この設問も、実際に東京の某女子大学院で過去に出題されたものだ。

もし、本当に女子生徒からこんな告白されたら?

自分なら、大パニック間違いなし。

女性の養護教諭を探し出して、3秒でバトンタッチしたい。

でも、受験本番で答案用紙にそう書けば、3秒で不合格になる。

大汗かきながら、なんとか600字は埋めたが、支離滅裂な答案になった。

帰宅後にテキストの模範解答を読んだら、プロはこのように対応するらしい。

・早急な対応が必要で、受容・共感的なカウンセリングだけをやっていればよいケースとは異なる

・まず援助交際や不特定多数との性行為など、これ以上自分を傷つけないようにすることを要請する

・中絶に伴う困難、出産する場合の困難などの情報を伝える

・産婦人科はハードルが高いので、市販の妊娠検査薬の使用を勧める

・カウンセラーだけでの対処はあり得ない。養護教諭や担任、場合によっては児童相相談所や医療機関とも連携し、チームで対応する

・「あなたにとって一番良い方法を一緒に考える」というスタンスを堅持して、様々な関係者との連携を模索するための下地作りをする

 

ちなみに、この生徒には「躁的防衛」が見られ、「超自我的な抑制」が弱く、親子関係の不全が根底にある「境界例的心性」が想像される、とのこと。

かろうじて、「養護教諭との連携」だけは正解だったけど…

大学院合格への道のりは、かなーり険しいね。

Nagoya Japan, august 2025



2025年8月8日

100日間世界一周の真実

 

セブ島英語留学で知り合ったドクター・ミワのダンナ(略してDD)が、勤めていた大企業を辞めて、船で世界を一周してきた。

これはぜひ話を聞かなくては! 

夫妻が暮らす和歌山まで行ってきた。

予備校の講義を終え、気温38度の名古屋から西へ。城下町・和歌山は海風が吹き抜けて、意外にも涼しい。ま、名古屋と比べての話ですが。

地元っぽい小料理屋の個室で3人、おいしい魚を頂きながら話を伺った。

DDさんが乗った客船は、定員1800人。3分の2が日本人客で、平均年齢76歳。日本を出港してから最初の寄港地までの間に、3人が亡くなったという。

「そういう死に方、本望かも知れませんねー」と、DDさん。

全財産を船室に持ち込んで、船を住処にして地球をグルグル回っている富裕層もいるらしい。

命が尽きるまで海の上…?

寄港地は全部で17か所。今回の航海では南半球をぐるりと回って、南極の氷も見ることができた。

「ペンギンって、群れで水面を滑空するんです。水族館のペンギンとはぜんぜん違った!」

DDさんが大ピンチに見舞われたのは、マダガスカル。日帰りのつもりで内陸のバオバブ林を見に行った帰り、港に戻る飛行機がまさかの欠航。予定外の1泊を強いられた。その間に、無情にも船は出港してしまった。

着の身着のまま、飛行機を乗り継いで船を追いかけ、なんとか1週間後に合流できたという。

南米の寄港地では他の日本人客が強盗に襲われ、金目の物をすべて奪われた。

貧しい国の強盗たちからすれば、お金持ちが豪華客船に乗ってやってくるのは、まるで鴨が葱を背負って来るようなものだろう。

世界一周100日間の船旅は、一見優雅なようで、実はいろいろあるみたい。

いったん帰国したDDさん、今度はモロッコに3週間滞在。魔窟のようなスーク(旧市街)でホームステイしながら、フランス語学校に通った。

そして先月は、娘さんと2人でスイス・アルプスへ。

糸の切れた凧だ。

その間、ドクター・ミワは「私が稼ぐからいいわよー」とばかり、連続36時間勤務の夜勤を挟みながら、病院で働いたという。

ああ見えてDDさん、よっぽど今まで奥さんに徳を積んできんだろうな。

「さすがに金がなくなった。いま妻に離縁されたらすごく困りますー」

最近、DDさんは料理の腕を磨いて、夕食作りを買って出ている。

「妻には、ご飯がおいしいから家に帰るのが楽しみと言ってもらえます」

がっちり、奥さんの胃袋を掴んでいる様子。

策略家である。

Wakayama Japan, 2025


リベラルとリバタリアン

  『 HACK 』『テクノ・リバタリアン』などの著作がある作家・橘玲氏のインタビューが、日経ビジネス電子版に載っていた。 今まで自分の立ち位置はリベラルだと思っていたが、この記事を読むと、私はあの過激な(?)イーロン・マスクやピーター・ティールらリバタリアン(自由至上主義者...