「警察官のこのこ日記」安沼保夫著 三五館シンシャ
元警察官の著者が、その過酷な日常を描いたノンフィクションだ。
特に、警察学校時代の描写がすさまじい。
入校式の前、全員が講堂に集められ、眼光鋭い坊主頭の教官に「おまえ、なめてんじゃねーぞ! やる気がねえ奴は辞めろ! 代わりはいくらでもいるんだ!」いきなり、怒鳴られる。
ネクタイの結び目が曲がっているだけで、「バシッ」容赦なくビンタが飛ぶ。
時には、パンチも飛んでくる。
上司の命令は、絶対。教官の指示には、「はい」か「了解」しか許されない。
「いいえ」と言えるのは、「辞めるか?」と聞かれたときだけ。
「警察官に頭脳はいらねぇ。首から下だけを鍛える首下教場だ」が、鬼教官の口癖。
毎日のランニング、柔道、逮捕術。恐怖政治と、同調圧力に支配された日常…
今どき、こんな世界があったとは…
「権力はウソをつく」
脚本家の大石静さんが、NHK「最後の講義」で、鬼気迫る表情で言っていた。
安保闘争当時、大石さんは、警官隊に殴られて血まみれになった多くの学生を目撃した。それは権力による一方的な暴力だったが、警察側の発表は「市民の負傷者は数名、警官の負傷は数十名」というものだったという。
治安維持を担う警察官は、市民生活になくてはならない存在。立派な職業だと思う。でも、安保闘争を知らない私でさえ、武器を持った国家権力というだけで、条件反射的な拒否反応がある。
この春、わが大学山岳部の後輩が、T県警とN県警に就職した。
ゆくゆくは、山岳救助隊員になることを目指す。
Sくんは男だから大丈夫だろう。一緒にヒマラヤ登山をしたHさん♀が、心配だ。読んだばかりの「警察官のこのこ日記」が、脳裏をよぎる。
久しぶりに、会って話を聞いた。
開口一番、いつもの屈託のない笑顔で
「警察学校、楽しいです!」と言う。
え? けけけ、警察学校が、たたた、楽しい…?
Hさんの教官は、厳しいながらも愛があり、理不尽なところがなく、指導に筋が通っているという。
在学中に2度もヒマラヤ遠征をしたHさんは、体力に余裕があるのだろう。山岳救助隊という明快な目標があるのも、大きい。
万事順調な様子に、ホッとひと安心。
でもHさんの同期は、たびたび彼女の部屋を訪れては、涙を流すらしい。
泣いているその友だちの方が、まともな神経の持ち主だったりして!
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| Fort Kochi, South India 2026 |






