第一志望校に3連敗して入ったこの大学院に、奇跡が起きた。
私が入学した4月に、PCA(クライエント中心療法)のビッグネームが、他大学から移ってきたのだ。
実はワタクシ、目指すはPCAのカウンセラー。
予備知識もなく入学した第二志望の大学で、こんな幸運に巡り合うとは…
そして他の教授陣も、京大出身のユング派分析心理学者、ロールシャッハ・テストの第一人者、長年子ども臨床の最前線で活躍してきた人などなど、期待以上の顔ぶれ。
これまで高校も大学も就職先も第一志望に落ちてきたが、今回も第一志望に落ちて本当によかった!
イギリスの大学院で心理学の学位を得た先生も、2人いる。
そのひとりK先生は、ジョン・ボウルビィなどの心理学者を輩出したタヴィストック・クリニックで週4回の精神分析を、3年間にわたって受けた。
カウチに寝た状態で行われる、本格的な自由連想法だ。
もし自分が受けたら、無意識の中身を丸裸にされてしまいそうで、怖い。
ある意味、とても厳しい訓練だ。
K先生に感想を聞くと、淡々とした口ぶりで、
「自分の何かが大きく変わったということは、特になかったなぁ…」
「でも、こんなに私の話を熱心に聞いてくれる人がいる、と感動しましたよ」
「帰国したら、奥さんに優しくなったかな」
「うん、学生にも優しくなった」
ということだった。
もうひとりの英国帰り、M先生は留学中、イギリス人相手に100回の心理面接を行い、優秀な成績で修了した。
すべて英語でやったのだから、とても大変なことだ。
M先生には、非言語的な共感的理解の力が備わっているのかも…
100セッションの中には、こんな相談事例があったという。
「日本人の女性とセックスがしたい」
なんて突拍子もない…
M先生、身の危険を感じたのではないだろうか。
PCAでも精神分析的心理療法でも、セラピストはクライエントのすべての言葉に対する「平等に漂う注意」が必要とされる。
だがM先生は、先の言葉に囚われて、その後のセラピーをうまくこなすことができなかった。
夏季休暇で一時帰国することになり、先生は彼を先輩心理士に託して、日本へ。
その後、先輩心理士が聞き出した彼の本当の主訴は、大切な友人を亡くしたことの喪失感だったという。
心理職は、言葉の裏の裏まで読まなくてはいけない、といわれるが…


