2026年3月20日

神の見えざる手~心理系大学院合格体験記㊤

この春から、●十年ぶりに学生になる。

やった! また学割が使える! うれしいな。

でも、この前映画館に行ったら、シニア割が使えた。

あんまりうれしくない…

予備校の求めで書いた2年間の激闘(?)の記録を、ここに載せておきます。


〇自己紹介

61歳男性 R大学文学部史学科卒

病院で配偶者を看取った経験や、その後にホスピス病棟で働いた経験から、ターミナルケアにおける患者への精神的支援の必要性を感じ、心理系大学院の入学を志す

2024年4月、独学にて受験勉強開始。2025年4月、K塾名古屋校にて速習コース受講。202510月、Y大学大学院人間文化研究科臨床心理学専攻合格

 

私は東京の会社で25年間働いた後、投資家として独立し、N県に移住しました。移住後は県内の病院で、緩和ケア病棟の看護助手として働きました。

日々終末期の患者と接する中、医師や看護師がその多忙さゆえ、患者の身体的ケアに手いっぱいで、精神的ケアにまで配慮が及ばない実態を知り、心理学を学ぼうと思いました。

その時点で60歳を目前にしていたので、学部からの編入を必要とする公認心理士はあきらめ、臨床心理士のみの資格取得を目標にしました。

幸い、個人投資家としての収入で日々の生活費は賄えていたので、資格取得後は非常勤の仕事でも食べていける、という目算もありました。

私のような地方在住者の場合、臨床心理士指定大学院の選択肢は限られます。N県の場合は、国立S大学大学院総合人文社会科学研究科・臨床心理学コース1校のみでした。

1年めは、K塾及びI予備校で出している受験参考書を全て買い、東京大学出版会や有斐閣の心理学概論書と併せ、独学で受験に臨みました。前年に病院の仕事は辞めていたので、勉強に充てられる時間の確保という点では恵まれていたと思います。

結果、9月の秋季試験、翌年1月の春季試験、ともに不合格。

成績開示を求めたところ、秋季が300点満点中147点、春季が153点でした(配分は筆記200点、面接100点)。

入試倍率は、秋季が受験者30人に対して合格者10人。

春季が受験者10人に対して合格者1人でした。

秋季と春季の間の4か月で6点しか上乗せできなかったことにショックを受け、独学では永遠に合格できないと、2年めは予備校に通うことにしました。

これも地方在住者の悲哀で、心理系大学院受験の予備校は東京、大阪、名古屋など大都市にしかありません。インターネットで検索し、参考書の文体から親しみを感じていたK塾・M先生の講義を受けようと思いました。

M先生が名古屋校の講師である点や、心理学・心理学概論・心理統計法・心理英語の各講義を金土日の週末3日間に固めて受けられることから、自宅から160キロ離れた名古屋のK塾名古屋校を選びました。 

(続く)

NH707 NGO-CTS    名古屋上空


2026年3月13日

美人の特権~セブ島留学日記⑥

 

「どうして日本女性はゴキブリを見つけると、まるでヘビに出くわしたみたいに騒ぐの?」

個人レッスンで英語を教わる jay 先生(20代・男性)が言う。

よくよく聞くと、それは彼の個人案件だった。

jay 先生のガールフレンドは、去年の生徒だった日本女性だ。ワーホリでオーストラリアに住む彼女が今、セブ島に来ているという。

人生で、初めてできた彼女らしい。

「どうして日本女性は、怒ると1時間ぐらい口をきいてくれないの? そんな時はどうすればいい?」

知るかそんなの! 自分で考えろ。

ぼくの元カノ(妻)が怒った時は、1時間なんてもんじゃなかったぞ。

 

「結婚生活は、いつも難しいよ…」

Sao 先生(色黒&小太りの中年男性)が、口癖のように言う。

彼によれば、カトリック教国のフィリピンでは離婚が認められない。

Love doesn’t last forever だというのに…

でもその代わりに、 Annulment というフィリピン独自の制度がある。

過去にさかのぼって、結婚という事実そのものを「最初からなかったこと」にできる制度なのだそうだ。

なんじゃそれ! それって離婚より便利な制度じゃない? 

バツイチにならなくて済むし。

でも Annulment を成立させるためには、長い年月と多額の費用が要る。

だからフィリピンのセレブたちは海外でササっと離婚を成立させ、そんなお金もない市民の間では不倫が大量発生している、と聞いた。

ある日、sao 先生のレッスンで cosmetic surgery(美容整形手術)をテーマに話し合った。

先生曰く、彼が属する業界では beauty privilege(美人の特権) が蔓延しているという。

「男の生徒はもちろん、女の生徒までぼくを敬遠して、担当替えを要求するんだよ。美人は美人に英語を教わりたいものなの? なんでやねん!」

フィリピン英会話学校の先生は、圧倒的に20代女性が多い。若くてきれいな女性が並ぶ中、わざわざ sao 先生を選んで予約する人は…

いないかもなぁ。

ホスピタリティにあふれ、とても勘のいい教え方をするsao先生。顔写真で選ばれがちなオンラインでなく、対面レッスンで地道に固定客をつかんでいくのが、彼がこの業界で生き残る唯一の道かも知れない。

 sao 先生が韓国人の生徒から聞いた話では、韓国で女の子が生まれると、親がその子の整形手術代を貯め始めるそうだ。

「この子が将来、いい会社に就職して、いい人と結婚できますように」

かつてないほどのルッキズムが、世界に広がっている。

Tattoo painting, Cebu 2026


2026年3月6日

お金にまつわる悲喜こもごも~セブ島留学日記⑤

 

ランチタイムの食堂で、校長のhidekiさんに、こんな話を聞いた。

ある年、50代の男性A氏が、英会話3か月コースに入学してきた。

長年勤めた会社を早期退職し、意気揚々と第2の人生に踏み出したところだ。

毎日、それは楽しそうに留学生活を送っていたAさん。

ひと月が過ぎたころ、顔面蒼白で事務室に駆け込んできた。

「急用ができたので、今すぐ帰国します」

ただならぬ気配に理由を尋ねると…

セブ島に来る前、Aさんは退職金数千万円を海外ファンドに注ぎ込んだ。

その朝、久しぶりにパソコンでファンド口座をのぞいてみると…

いきなり、残高がゼロになっていたという。

「投資詐欺ですね。海外投資って怖いですね」と、hideki校長。

いや、海外投資そのものが怖いのではない。Aさんが欲をかいて、あり得ない儲け話に乗ってしまったのだと思う。

留学生仲間を見る限り、10代20代は海外投資に積極的で、金融リテラシーもしっかりしている。

ニーサやオルカンに関する知識も、常識として持っている様子だ。

美大1年生のyumaさんは、中学生でニーサ口座を開いて、海外投資を始めた。最近はコインチェック(暗号資産)も買って、利益を出している。

そしてyumaさんのパパは、大手IT企業を経て40代でFIREを達成。貴金属投資のユーチューバーとして、情報発信している。

この親あって、この子あり…

私と同い年のクラスメートyukoさんは、東京の作業療法士。数年前、職場の友人の影響で海外投資を始めた。

yukoさんのすごいところは、インデックス投信による分散投資を経ず、いきなりアメリカ株を個別に買ったこと。コロナ禍で世界中の株が急落したタイミングで、優良企業の株を底値で買うことができた。

その後の回復局面で、yukoさんの持ち株は、5年間で3倍になったという。

「世の中、地道にコツコツと働くだけじゃ足りないんですね。今ごろわかりました」

真面目で控えめなyukoさんの大胆な行動に、ビックリ。

学校事務局の話では、もうすぐ全盲の50代男性がやってくる。

毎年、姿を見せるリピーターだ。

フィリピン人の介助者を雇い、毎日2時間ほど英会話のレッスンを受けながら、半年ほど滞在していく。留学費用は、ほぼ障害年金で賄えるらしい。

交通事故による中途失明者、ということだ。

お金の価値を最大限に生かして、前向きに、心豊かに生きてるなぁと思う。



2026年2月27日

日本から逸脱した人たち~セブ島留学日記④

 

セブ島に来ている社会人留学生は、私と、同い年の作業療法士 yuko さんあたりが最年長。

圧倒的に、2030歳代が多い。

髪を明るいホワイトブロンドに染めた asuka さん(26)は、実は超難関国立大卒の戦略コンサル。カナダに2か月留学したのち、ここで1か月間のビジネス英語コースを履修した。

セブ島最後の日、asukaさんは先生と留学生を集めて、パワポでビール業界に関する英語プレゼンを行い、さっそうと帰国していった。

asuka さんと同い年の riku さんは、M&Aが専門の外資系に就職を決めた。5月の入社を前に、1日8時間×6か月、みっちり英語を学んでいた。

九州の現役ポリスマン ken さんは、1週間の超短期留学。

「1週間の有給取るのに、1年前から根回ししましたよ。観光旅行だなんて言ったら、とても認められなかっただろうな」

苦労して取得した貴重な休暇を、語学学習に充てるニッポンの警察官。最近、近くに台湾の大手半導体企業が進出して、署にも外国語の電話が掛かってくるそうだ。

堅気のクラスメートは、せいぜいこの3人。この時期、何週間もフィリピンにいられるのは、自称個人投資家の私を含め、日本社会の決められたレールから逸脱した人が多い。

グループレッスンで先生に「先週末は何してた?」と聞かれた、迷彩服ファッションの takeda さん。

「ずっと部屋でコーディングしてました」

彼は、独立系ソフトウェアプログラマー。完全フルリモートで働けるので、1年の半分以上をベトナム、タイ、フィリピンなどで過ごしている。

「部屋に籠ってコーディングばかり。そんな日本での生活が寂しくて…」

その気持ち、よくわかる。ここに来れば、話し相手がたくさんいる。

tomo さん(38)もまた、典型的なデジタルノマドだ。ITと不動産投資を主戦場に、1日の労働時間は3時間ほど。FIREを目前にしている。

見るからにプレイボーイの tomo さん、夜な夜なバイクタクシーで繁華街に繰り出し、昼間はあくびばかりしている。セブの次はジャカルタに行くそうだ。

わざわざ、イスラム教国で夜遊び?

彼しか知らない穴場があるのだろう。

ふわりとしたフレアスカートの maiさん(38)は、ずっと住宅業界で働いてきた。営業担当だった昨年、顧客として職場を訪れた転職エージェントにヘッドハンティングされた。自分の市場価値の高さを知り、目が覚めた。

「この際もっと自分の評価を上げて、人生のオプションを増やしたい」

さらに英語力を磨くため、セブ島の次は、イギリス沖にあるジャージー島で学ぶという。

ここにいる人たち、留学を終えても、まっすぐ帰国する気はさらさらない。




2026年2月20日

青い瞳の少女~セブ島留学日記③

  

2月、最初の週明け。

留学先の「C英語アカデミー」クラスメート6人が帰国し、新たに14人が入学した。その多くが、春休みに入った学生たちだ。

大学生に混じって、青いカラコンの高校生、沖縄出身のfuukaさんがいた。留学中、彼女には「パパ」とか「おさるのジョージに出てくる黄色い帽子のおじさん」などと呼ばれ、さんざんいじられた。

fuukaさんとの会話は時として、英語ネイティブと話すより難しい。

私「そのカラーコンタクトつけてると、周りが青く見えたりするの?」

f「当ったり前じゃん! で、パパはネイルやる?」

私「メール? もちろんやるよ」

f「違うよ、ネイルネイル!」

やるわけないじゃん!

彼女の周りの男子は、主に清潔感を演出するため、せっせと指先のおしゃれに励むらしい。

Lost in translation...

1020代のクラスメートには、初めての海外がフィリピン、という人も。

「日本から持って来たドライヤーをコンセントにつないだら、ボンッっていって壊れました」

うう…フィリピンの電圧は220V、日本の倍以上だ。そのままつなげば、下手すると発火する。

「次にアイロンをコンセントにつないだら、またボンッていって壊れました」

え? アイロンまで持って来たの? え? ヘアアイロン? 

女の人って、髪の毛にもアイロンかけるんか…


 彼ら学生たちの間でも、ニーサやオルカンへの関心は高い。

18歳のfuukaさんにも、「投資は早く始めた方がいいの?」と聞かれた。

そうだなぁ… 

とりあえず、ネット証券にニーサ口座を開くぐらいは、やってもいいかも。

試しに少額を投資して、マーケットの値動きの荒さを肌で感じておくのも、いいかも知れない。

でも、1020代の感受性は、期間限定だ。

今は金融資産に投資するより、語学留学や、途上国への旅で「自分」に投資した方が、将来のリターンが高い気がする。

fuukaさんがフィリピン留学を選んだのは、大正解だと思いますよ…

そんなようなことを、答えた。

「大人になったら、絶対お金持ちになってやる!」

「お金持ちになって、子どもの学費を現金一括払いで、バーンって払う」

珍しく真顔で語るfuukaさんの「お金持ち」像が、妙にリアルだった。




2026年2月13日

目的はオトコ漁り~セブ島留学日記②

 

去年のセブ島英語合宿は、先生だけで500人いるマンモス校だった。

グループレッスンには、韓国美人のミョンジンや、マカオのイケメン、マークがいた。校内のカフェテリアでは、ベトナムやロシア、モンゴル、台湾、タイ、フランスの人たちと隣り合わせた。

打って変わって今年は、先生も生徒も20数人、という小規模校。しかも、クラスメートは全員が日本人。セブ島の片隅に、空気を読んだり忖度しあったりの、小さな日本人社会ができた。

朝昼晩の食事時は、全員が寮の食堂に集まる。語学留学の常で、マジョリティは女性だ。果たして今日は、どの席で誰と食べようか…毎回、気を遣った。

髪を金色に染めたminaさん(推定60代)が、持参のウイスキーをテーブルにドンと置き、ドバドバとコップに注いでいる。2日で1本が空くハイペース。目が据わっていて、怖い。

「うちな、マニラのスラム街で子どもに飴ちゃん配るのが好きやねん」

根はやさしい人…かも。

そのminaさんと寮で相部屋なのが、東京から来たminoriさん(21)。ある晩、minoriさんが寝ようとすると、隣のベッドの真ん中に、まあるい丘がふたつ、暗がりに並んでいるのが見えたような、見えなかったような…

翌朝、minaさんが

「うちな、寝る時はいつも素っ裸になるねん。自宅のベッドはシーツが上等やから、裸で寝ると、そら気持ちええで~」

inaさんがトイレに立った時の、minori さんとの会話

「生まれも育ちも違う大阪の酒豪と一緒に暮らせて、minoriさんってすごいな。ホント尊敬します」「もっと他のことで尊敬して下さい」

iho(29)さんは長身、黒髪のクールビューティ。きっぱり会社を辞めてきた。

ITエンジニアは、転職しないと給料が上がりませんから」

そして、

「英語学習の目的は、クラブで金持ちの白人男をゲットしたいから」

と公言する。

mihoさんの率直な言葉を受けて、清楚な方々のガールズトークがさく裂した。

「この辺の男はビンボーだから、タクシー拾ってITパークに行くといいよ」
 ※ITパーク…マイクロソフトやIBMなどの多国籍企業が集まるセブ島の異界

「ワーホリ行くなら、イケメンが多いカナダがお勧め! 私もめっちゃ惚れた人ができて、2人で旅行に行ったりで楽しかった」

「私が高校時代つき合ってた男は、担任の女教師と二股かけてた。卒業式で、ふたりがペアリングしてるの見ちゃった」

TV業界の男は、すぐ二股かけるから要注意だよ」

世の中そんな男ばっかりじゃないよ、と言いたくても、多勢に無勢。

セブ島の蒸し暑い夜が、今日もぽつりぽつりと更けていく。

(怖そうな人は仮名にしてあります)



2026年2月5日

サナエが許さない~セブ島留学日記①

 

夜のセブ国際空港に降り立ち、配車アプリで白タクを呼んで市内へ。

その途中、ドライバーが

「アイウォントペイ!」「アイウォントペイ!」

と叫びながら、急ブレーキで暗がりにクルマを停めた。

すわ強盗に変身か! 一瞬、身構えた。

彼は車を降りると、一目散に草むらに駆けていく。

どうやら、膀胱が満タンだった様子。アイウォントピーと言いたかったのね。

 

ここセブ島は、本物の銃が撃てることで有名だ。今回の留学先「C英語アカデミー」の同級生女子が、「私もテッポウ撃ってみたい!」という。

最初の週末、その好奇心に便乗することにした。

個人レッスンで教わるS先生が、ガンクラブの会員だ。射撃練習場に予約を入れ、マイカーで送迎までしてくれた。

インストラクターに撃ち方を教わって、まず手始めに、片手で撃てる拳銃からスタート。憎っくきパワハラ元上司の名前を標的に書いて、コルトの9ミリで撃ちまくった。

残念! 急所を外した。運のいい奴だ。

次に、銃身の長いショットガン(45キャリバー)を試す。ヘッドセットとゴーグルを身に付けても、ものすごい発射音と衝撃が、身体全体に伝わってくる。実弾50発を購入したが、半分も撃てずにギブアップした。

射撃場の客は、軍隊上がり風のマッチョばかり。我々は完全に場違いで、浮きまくっていた。でも同行のニッポン女子たち、思いのほか楽しんだみたい。

私「S先生の趣味、ずいぶん野蛮ですよね~ テッポウ撃つのってそんなに楽しいかなぁ」

S「それはもう! 水鉄砲で撃ってたガキの頃から大好きでしたから。ガンシューティングはぼくの stress reliever でもあるんです」

私「頭のおかしな奴が来て乱射事件を起こしたら、なんて心配はないの?」

S「ぼくもそれは不安。一度、ウチの生徒がべろべろに酔って来たことがあって、すごく怖かった。やばそうな生徒が銃を撃ちたいと言ってきた時は、予約で一杯と言って断ってますよ」

私「もし日本が戦争に巻き込まれても、テッポウ撃つなんて無理! その時は難民になってセブ島に亡命するから、先生かくまって下さい」

S「ハッハッハッ、そんなことは、サナエが許さない」

その数日後。レッスン中の雑談で、S先生自身も大の酒好きだということが判明した。

アルコールが切れると、手が震えてくるという。

実弾射撃場…ハイ、金輪際近づきません。




神の見えざる手~心理系大学院合格体験記㊤

この春から、●十年ぶりに学生になる。 やった! また学割が使える! うれしいな。 でも、この前映画館に行ったら、シニア割が使えた。 あんまりうれしくない… 予備校の求めで書いた2年間の激闘(?)の記録を、ここに載せておきます。 〇自己紹介 61 歳男性  R 大学文学部史学科...