久しぶりの横浜で。
昼過ぎのJR京浜東北線で横浜から関内に向かっていた時、初老の男性が、すぐ近くに座っていた中年女性に歩み寄った。
「携帯電話での通話はご遠慮ください」
その時初めて、女性がケータイを耳に当ててヒソヒソ話をしているのに気がついた。男性はそれを、遠くから目ざとく見つけたようだ。
そそくさと通話を終えようとする女性。その耳元に思い切り顔を近づけた男性が、今度は怒気を含んだ大声を出した。
「携帯電話での通話はご遠慮ください!」
女性に怯えた表情が浮かび、慌ててケータイを切る。その時ちょうど、駅に着いてドアが開いた。逃げるように、ホームに降りる女性。
その背中を追いかけて、3度めの大声が響く。
「携帯電話での通話はご遠慮ください!」
精神分析の創始者フロイトは、人の心が「イド」「自我」「超自我」の3つで成り立っているとした。快楽原則に基づく「イド」を、道徳原則に基づく「超自我」が検閲し、現実原則に基づく「自我」がその2つを調節する。
予備校で心理学概論を教わっていた時、講師のミヤガワ先生が呟いた。
「最近の日本人は、ちょっと超自我が強くなりすぎている気がしますねー」
名古屋から2時間半のフライトで向かった、週末の上海。
日が暮れると黄浦江沿いの西洋建築がライトアップされ、歩道は人であふれる。中国の人たちは元々声が大きいが、解放感に浸ってますますボリュームアップ! すごい騒ぎになっていた。
若いカップルの愛情表現もストレートだ。「公衆の面前で」なんて、ハナから気にしていない。あちこちで熱いキスを交わしている。
(思い返せば昭和のニッポンでも、カップルが電車内でキスしていたような…)
老若男女ともども、感情豊か。休日の高揚感がビンビン伝わってきた。
日本の子どもは、
「人さまに迷惑をかけないようにしなさい」と教えられる。
中国の若い世代は、
「人に迷惑をかけないで生きるなんてムリ! だから、あなたも他人に寛容でありなさい」と言われて育つのかも。
「イド」(快楽原則)を大切にする生き方も、それはそれで悪くない。
帰国の朝、空港行の上海地下鉄2号線に乗った。
平日の車内は意外にも(?)、東京メトロ並みに静かだった。
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Shanghai 2025 |
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