八ヶ岳山麓で生まれ育ったシゲちゃん(75)とミネちゃん(75)は、小学生の頃からの仲良し同士だ。
時々、ふたりの同窓会に混ぜてもらっている。
そのたび、農家の食卓って豊かだなぁと思う。
けさ畑から採ってきたばかりの野菜で作った、てんぷら、おひたし、胡麻和え等々5~6品と、自家製米の炊き込みご飯が、テーブルいっぱいに並ぶ。
「コロナの頃、県民割で1泊数万円の温泉旅館に泊まってみたけど、出てきた『ご馳走』がウチの夜ご飯みたいだったのよね~」
と、シゲちゃん。
いやホントこれ、高級旅館の夕食みたいでございます。
「今日の材料費、ほぼ0円よ!」
ミネちゃんは、朝3時に起きて畑仕事に精を出す。採れた野菜は近くの農産物直売所に持っていくが、夕方、売れ残りを回収する手間もあるという。
「朝から晩まで働いて、もうけはたったの300円よ~」
それでも、ふたりとも元気いっぱいだ。
彼女たちが話題にしていたのが、倍賞千恵子主演の「プラン75」という映画。配給元のあらすじ紹介によると、
「少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行された。夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチは、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める…」
実際に見てみると、「プラン75」は政府が現金10万円をエサに、元気な高齢者に安楽死を選ばせるという、かなり露骨な話だった。
そして映画の後半には、アウシュビッツさながらの光景が描かれる。
アウシュビッツ絶滅収容所を題材にした洋画「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」は、史実を元に描かれている。辛いシーンも、がんばって見なければと思う。
でも100%フィクションのこの映画は、高齢化社会の捉え方が一面的で、あまりにも悲観的。75歳のふたりには、とても勧められない。
クールで優秀な市役所職員を演じる磯村勇斗クンの大ファンだというなら、無理には止めないけど…
別れ際、「熱中症に気をつけて下さいね」と言うと、
「その瞬間まで畑で仕事して、あれ?と気絶して、やがて息絶えて…なんて悪くないなぁ! 天からのご褒美みたいな死に方!」と、ミネちゃん。
さすがは生粋の農家さん、腹が据わっている。
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Bangkok Thailand, 2025 |
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