今年のセブ島英語留学では、「ITパーク」にある学校を選んだ。
ITパークはその名の通り、欧米のテック企業や大手金融機関、外資系会計事務所などのビルが並ぶ、セブ市内でも特別なエリアだ。
ビルに入る時には、ドレスコードのチェックがある。ノースリーブや短パン、サンダル履きでは入館できない。
そうは言っても、ここはフィリピン。朝の出勤時間帯にエレベーターに乗り合わせた女性が、のんびりアイスをなめていたりする。あまりの緊張感のなさに、膝からガクンと崩れ落ちそうになる。
アラームの電子音にたたき起こされて、真っ暗な中を学校に向かう。ITパークに入ると、ビルというビルの窓に明かりが灯っている。
歩道の人混みも車通りの多さも、日中とまったく変わらない。レストラン街もほとんどが営業中で、むしろ昼間より客が多い。新宿の歌舞伎町でさえ、終電が出てしまえば閑散とするだろうに。
服装チェックの女性警備員も、1日3回通って常連になったコーヒー屋台の店員も、みんな昼間と同じ顔ぶれ。いったい何時間働くのだろうか。
週明け、学校の先生に事情を聞いて納得した。
このITパークには、グローバル企業のコールセンターが集まっている。働く人の多くはアメリカ人の顧客を相手に、アメリカ時間で働いているのだ。
セブ島の土曜日午前3時は、アメリカ東部時間の金曜日午後1時。彼ら彼女らは、完全に昼夜逆転の生活を送っている。
顧客のアメリカ人には、フィリピン訛りの英語を嫌う人もいる。ストレスの多い職場で、体調を崩す人もいるらしい。
この英会話学校は、600人いる先生のほとんどが20~30代の女性たち。みな対面授業の他にオンライン授業も受け持っているから、生徒の国の時間帯に合わせて、とんでもない時間に働いていたりする。
欧米の英語ネイティブと違って、フィリピン人教師の母語はセブアノ語だったり、ワライ語だったり、タガログ語だったりだ。英語を流ちょうに繰るまで、相当な努力をしてきた。
日本に来れば、まず間違いなく英語人材として上位1%に入りそうな人が、割に合わない給料で外国人相手の英会話教師や、コールセンターでの深夜業務をしている。
1日6時間、マンツーマンでいろいろな先生のレッスンを受ける中で、若さに似合わない、翳りのある表情を見せる人がいた。
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Teacher's dance performance, Cebu 2025 |
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