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2026年4月10日

アライグマのいる大学

 

「大学院生の皆さんは、マイカーで通学して下さい。この辺りは、暗くなるとアライグマが出没します。ハクビシンも出ます。キツネもタヌキもいます。クマは出ませんが、不審者は出ます.。徒歩や自転車で通うのは危険です

「院生室は、土足禁止。スリッパに履き替えるとき、中にムカデがいることがあるので気をつけてください。スリッパの中にハチがいて、刺されて病院送りになった人もいます」

入学式後のオリエンテーションで、唐突にこんなことを言われた。

4月から通う大学院は、市街地の外れにある。周囲を畑に囲まれ、校舎の背後に山が迫る。確かに、とても自然豊かな環境ではある。

さらに、こんなことも言われた。

「院生は夜中まで学校にいることが多いから、最終バスに間に合いません。マイカーは絶対に必要」

「院生は、精神的に追い詰められがち。辛くなったら学生相談室へ」

げ… 大学院って、そんなに大変なところなの?

好きで選んだ道とはいえ、早くも登校拒否になりそう。

 

学年ビリから偏差値を40上げて慶応大学に合格し、映画にもなった「ビリギャル」小林さやかさん(37)。大学院に進んで教育学を学んだ後、さらに米国に留学した。

読売新聞電子版に掲載された彼女のインタビューに勇気づけられたので、ここに少し紹介します。

・大学院で修士論文を書きながら、「なぜビリギャルはあんなにがんばれたのか、もっと深く知りたい」との思いが募った。「1回、海外に出たほうがいい」という予備校の先生の言葉を思い出し、30過ぎて米国に留学した

・留学先では認知科学を研究した。認知というのは「心の眼鏡」。人それぞれ心の眼鏡が違うので、物事のとらえ方も異なる

・私の認知の形成は、母の存在が大きい。母は、私が何をやっても「すごい」と感動してくれ、落ち込んでいると「それは失敗じゃないよ」と言って、自信をつけてくれた

・自信には2種類ある。一つは「自己肯定感」。幼少期にある程度決まってしまうもので、大人になってから向上させるのは時間がかかる

・もう一つは「自己効力感」で、成功体験を積み重ねることで伸ばる。日本の子どもは、失敗を「恥ずかしいもの」という意識が強いが、失敗しなければ、成功もできない

・そういう自分の経験から、大人の子どもへの声がけが大事で、まずは大人が自信を持つ大切さに気付き、帰国後にオンライン英会話サービスを始めた

・自信を持つためには、英語はいいツール。正しい方法で続ければ上達し、成功体験を積みやすい

Puducherry(Pondicherry), south India 2026


2026年1月23日

予定調和が苦手な人

 

農家の主婦、ミネちゃんとシゲちゃんに、餅つきに誘われた。

冬の農閑期に入り、ふたりとも盛大に朝寝坊しているらしい。

彼女たちは、小学校からの親友同士。76歳の会話は、まるで漫才だ。

ミネ「最近かかってくる電話、詐欺まがいなのばっかり!」

シゲ「ウチもよ~ 詐欺か勧誘しか、かかってこないんだから! いっそのこと、固定電話を解約しちゃおうかな~ スマホだけで十分だと思わない?」

ミネ「え、それは困るよ! いつもスマホをどこに置いたか忘れて、固定電話から自分のスマホに電話かけて探すんだから。もし固定電話がなくなったら、スマホまでなくなっちゃう!」

進学や結婚というライフイベントを経て、ずっと同じ町に暮らす人もいれば、片や17歳で単身、イタリアに渡った人もいる。

前回に引き続き、「スティーブ・ジョブズ」などの著作がある漫画家・ヤマザキマリさんのインタビューの一部を紹介します(日経ビジネス電子版より)。

・アメリカのマンガ展に招待されて、スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)が生涯を送ったサンフランシスコに行った。ジョブズのような堂々とした異端を育む、リベラルな空気感が漂っているような気がした

・ここは住民全員が皆どこからかやってきて、いったん人生をリセットした人たち。予定調和などないことが当たり前だ、と受け入れてきた人たちが祖先

・ジョブズがまだ生きていた時、日本の文科省がジョブズ育成プログラムみたいなものを企てたことがあったが、育成とかいっている時点で、もうダメ

・ジョブズは「育成する」のではなく、もう既にどこかに「いる」。でも日本では、そういう人の存在は煙たがられ、学校ではいじめられ、社会では排除され、せっかく稀有の才能を持っていても、その力を発揮せずに終わってしまう

・日本にジョブズのような子どもがいたら、まず親が心配する。自分の子どもが学校でいじめられて帰ってきたら、たいていの親は「なぜ、いじめられるようなことをしたの?」と、いじめた方の視点に立つ質問をしてしまう

・欧州で子どもが学校でいじめられていたり、うまくなじめないでいたりしたら、学校とやりあってさっさと他に転校させる。そういう親のふるまいが、結構当たり前だった

・私も子どもの頃から、とにかく周りと足並みをそろえられなかった。そろえると気持ちが悪くなる。マスゲームは、見ていると目まいがする。通学路で、みんなが背中に同じランドセルを背負って歩いている光景が怖かった

・髪が伸びたら三つ編みにしなきゃいけない校則だったが、私はそんなダサい髪形は絶対イヤだったので、細かい三つ編みのドレッドにして学校に行った

・集団社会になじめない私の特性が、10代半ばでいよいよ顕在化。高2の時に母から「あなた、もういいから、高校を辞めてイタリアで絵の勉強をしてきなさい」と唐突に勧められ、学校を辞めてイタリアに渡った

Sapporo Japan, winter 2025



2026年1月16日

就職面接では、机に足を乗せないこと!

 

「人生の時間は限られている。死を前にすれば、他者からの期待、妙なプライド、失敗することへの恐れなどは、すべて消え去る。失うものは何もないのだから、自分のハートと直感に従う勇気を持とう」

アップル創業者のスティーブ・ジョブズが、スタンフォード大卒業式で行ったスピーチ。がんで余命宣告を受けた人の言葉だけに、なおさら凄みを感じる。

20年以上勤めた東京の会社を辞める時、YouTubeで18分間のこのスピーチを何度も聞いて、背中を押してもらった。晴れてフリーランスになった矢先に、妻にがんが見つかり、ジョブズと同じ歳であの世に行ってしまった。

命の有限性を思い知った今、改めて彼の言葉をかみしめる。

STAY HUNGRY.  STAY FOOLISH.

 「スティーブ・ジョブズ」などの著作がある漫画家のヤマザキマリさんが、最近改めて、ジョブズについて語っている。日経ビジネス電子版のインタビュー記事から、一部を要約して紹介します。

・うちの息子はイタリアで生まれ、日本、シリア、ポルトガルで育ち、アメリカの大学でロボット工学を専攻した。言葉は4カ国語を話せる

・そんな「黄金の経歴」を持つ彼が、日本の就職活動で落ちまくった。私は息子がオンライン面接を受けている様子を見て、「ああ、こいつが日本で就職するのは無理だわ」と確信した

・その態度の横柄なこと。マナーがアメリカ風というか、物言いが率直過ぎる。椅子に深く座って腕を組みながら「いや、それについてはそうは思いません」「お宅の会社の方針はそうかもしれませんが、僕の考えはそれとは少し違いますね」。私は脱力して、その場で崩れ落ちそうになった

・日本では調和を乱すような異端者はご法度で、「あなた色に染まります! 御社の経営方針に引かれています!」という態度を示さないと採用されないんだよ、と息子を激しく諭した。でも、彼はピンと来ていない

・日本は、調和重視の島国精神でここまでかたどられてきた国。出る杭は叩くか抜くかで、自分たちも一緒に飛び出す杭になろう! というのはない。スティーブ・ジョブズみたいなのは社会に歓迎されない

・もっとも、ジョブズは基本的にどこでも無理。若い頃のジョブズは、ロン毛で風呂嫌いで不潔。足が汚い時は、便器の中に足を入れてざーっと洗っちゃう人だった

・就職面接で部屋に通された時、はだしで小汚いジョブズは、担当者が来るまで机に足を乗せて、ふんぞりかえって待っていた。それで放った一言が「で、オレ、雇ってもらえるんですよね?」

・企業の人事担当者には、人間を表層的な言動で決めつけない「審美眼」が必要。異端だけど、最悪だけど、だからこそイノベーターとして他の人にないセンスを持ち、とんでもない発想を生む。それで社会も経済も動く。だから我慢だ、とわきまえる。天才や異端がどうのではなく、周辺の人間の問題



2026年1月10日

日本のウーバーは、普通のタクシー

 

最近、やっと街中でウーバーの車を見かけるようになってきた。

但し! 海外のウーバーとは、完全に似て非なるもの。アプリで呼べるというだけで、料金はあのバカ高いタクシーとまったく同一なのだ。

これって、意味ある?

前回、前々回に引き続き、日経ビジネス電子版に載った作家・橘玲氏のインタビューを紹介します。

 

・破天荒な人物として有名な、米ライドシェア大手ウーバーの創業者トラヴィス・カラニックに限らず、イノベーターには反逆的な思考を持つ人が多い

・ウーバーにしても、民泊のエアビーアンドビーにしても、利用者に利益があるのだから、厳密には違法かもしれないけど、とりあえずやってしまえという発想が根底にある

・それに対して、日本はグレーゾーンに厳しすぎ。「利用者が不安になる」などの理由をつけて業界の既得権を守ろうとする。結果、今では東南アジアのどこの国でも配車サービスを自由に使えるのに、日本だけ普及していないという情けないことになる

・日本国内にいると、おかしなことに気づかなくなる。外国人観光客がタクシーがつかまらなくて困っていても「自分たちには関係ないんだからどうでもいい」という感じ。こういうのを「排外主義」という

・日本は1960年代~70年代の高度経済成長期から時間が止まっているように感じる。もともと日本人は太平洋戦争の終戦時に何もかも失ってしまったから、新しいことにチャレンジする以外に生きる術がなかった。ところがそれがうまくいくと、成功体験が既得権になって、これまでのやり方を変えることに頑強に抵抗するようになった

・年功序列・終身雇用の日本的雇用が典型。すでに機能不全を起こしている過去の遺産をひたすら守ろうとして、右肩下がりのまま半世紀が過ぎた

・今の日本では、親は子どもになぜ学校に行かなくてはならないのか説明できないし、自分が会社に通うことの意味すら分からなくなっている

・人種間や男女の格差ばかりが話題になるが、現代社会の最大の格差は「生まれた国」の違い。たまたま豊かな欧米や日本などに生まれた者と、アフリカや南アジアに生まれた者との間には、とてつもない経済格差がある

・私たちはどこで生まれるかを選べないのだから、リベラリズムの原則に立ってあらゆる差別が許されないなら、国境を開放するしかない

・カラニックら、テクノ・リバタリアンを動かしている一番大きな要因は「死の恐怖」。論理的・数学的知能が極端に高い人たちのなかには、幼少期に「死すべき運命」を知ってから、ずっとそれにとらわれている人が多い

・よって、テクノロジーによって変革をスピードアップさせようとする加速主義の本質は、「死の拒絶」



2026年1月3日

ハンドメイド投資家


明けましておめでとうございます。

ブログ12年めは、まずお金の話題から…

私が海外投資に目覚めたのは、アジア金融危機で山一證券が倒産した1997年。

橋本龍太郎政権の「金融ビッグバン」で、ようやく個人でも外国株が買えるようになったタイミングだ。

とはいえ、「ニーサ」や「オルカン」などは、まだ影も形もない時代。米国アマゾン経由でパーソナルファイナンスの原書を買って読み込み、米国籍のインデックス投信を組み合わせて、国際分散投資のシステムを自作した。

当時、そんなハンドメイド投資家の指南役となったのが、オンライン掲示板「海外投資を楽しむ会」を主宰した作家の橘玲氏だ。最近も、『HACK』『テクノ・リバタリアン』『言ってはいけない』などの話題作を書いている。

前回に続いて、日経ビジネス電子版に載った橘玲氏のインタビューを一部紹介します。

・マイクロソフトが「Windows 95」を発売して脚光を浴びた時、証券会社の窓口でおじさんに「マイクロソフトの株はどうやって買えばいいんですか」と聞いたら、「なんですかそれ」。「米国の株です」と答えると、「日本株じゃないのに買えるわけないじゃないですか。もうちょっと株のことを勉強してから来てください」と説教された

・それまでの日本の証券会社には、富裕層の顧客が外交員から提供される内輪の情報で儲けるような、きわめて不公正な商慣行があった。だから自分たちは、オープンな情報を組み合わせて「普通の奴ら」の上を行くことを試みた

・ビットコインが出てきたとき、非中央集権的なマネーというのはものすごく魅力的だと思った

2010年ごろ1万ビットコインはピザ2枚と交換されたが、現在は1ビットコインが8万8000ドル(約1400万円)になっている。だが、初期の頃にビットコインに投資しても、それを長期で持ち続けるのはものすごく難しい

・普通なら価格が10倍になれば、怖くなって売ってしまう。ビットコインのようなボラティリティーの高い資産を保有し続けるためには、国家が発行する貨幣や中央集権的なシステムを拒否する、リバタリアン(自由至上主義者)の信念みたいなものが必要

・暗号資産のシステムを支えるブロックチェーンの仕組みを理解して、それが世界を変える可能性を持っていることに気づくには、きわめて高い論理的・数学的知能が必要

・そして、AIや暗号資産を含むテクノロジーによる社会変革を推進しているのは、イーロン・マスクやサム・アルトマン、ピーター・ティールなど、個人の自由を重視するリバタリアン

・テクノロジーの指数関数的な能力の向上が近代の土台を揺るがし、中規模の国家に匹敵する富と強大なテクノロジーを持つ個人がとてつもない影響力を持つようになった。

この現実を認識しておく必要がある 

Yomitan Okinawa, winter 2025


2025年12月26日

リベラルとリバタリアン

 

HACK』『テクノ・リバタリアン』などの著作がある作家・橘玲氏のインタビューが、日経ビジネス電子版に載っていた。

今まで自分の立ち位置はリベラルだと思っていたが、この記事を読むと、私はあの過激な(?)イーロン・マスクやピーター・ティールらリバタリアン(自由至上主義者)に近い。

記事の一部を紹介します。

 

AIや暗号資産など、テクノロジーによる社会変革を推進しているのは、マスク(テスラCEO)やティール(Open AI創業者)、サム・アルトマン(同)など、個人の自由を重視するリバタリアン

・日本のメディアは、原理主義的で人工中絶に反対する人たちをリバタリアンと呼んでいたが、本来のリバタリアニズムは自由を至上のものとする政治思想で、自己選択権の最大化を目指している

・テクノロジーは自由を与えてくれるし、テクノロジーの進歩には自由が必要。テクノロジーによって自由を拡大することで「よりよい社会」「よりよい未来」をつくることができるという理想主義が、シリコンバレーの中核

・「自分らしく生きたい」というのは現代社会の根底にある価値観で、もはや誰もそれを否定できない。リベラリズムの本質は自己決定権の最大化で、「いつどのように死ぬかも個人が決められるようになるべきだ」という考え方

・日本でも、安楽死の合法化を求める声が多数派。メディアはそれを可視化したくないから世論調査をしない

・現代社会の最大の格差は「生まれた国」のちがい。たまたま豊かな欧米や日本などに生まれた者と、アフリカや南アジアに生まれた者との間にはとてつもない経済格差がある

・私たちはどこで生まれるかを選べないから、リベラリズムの原則に立ってあらゆる差別が許されないなら、国境を開放するしかない。ところがリベラルのなかに、そのような「不都合な主張」をする者はほとんどいない

・その代わり、もっと安全で注目を集めやすい格差として、人種やジェンダーの話ばかりする

・日本人は第二次世界大戦で国家の暴走であれだけひどい目にあったのに、結局いま「国家はやさしいお母さん」で、国が自分たちの面倒を見てくれるのが当然、という意識に戻ってしまった

・そうやって市民が国家に依存するのは「国家主義」。日本では、リベラルな知識人やメディアが率先して「国家主義者」になっている

・リベラリズムの大原則は、市民の自律。まずは自分で何とかするのが基本

Yomitan Okinawa, winter 2025


2025年12月19日

専業パパの告白

 

職場の忘年会に、産休明けのナギサさんが顔を出した。

胸に抱く赤ちゃんは、4か月にして体重8キロ。おっぱいをたくさん飲み、ナギサさん自身はいくら食べても痩せてしまうそう。母は大変だ。

出産には、ダンナが立ち会った。

「分娩室の壁や天井に血が飛び散って、夫は、てっきり私が死ぬんじゃないかと思ったみたい」 

笑って話す、ナギサさん。

もし自分が立ち会っていたら、卒倒して廊下につまみ出されていたかも…

話を聞いただけで、クラっと来た。

わが子の誕生に父親が立ち会うことは、とても大切だとは思う。

でも小心者は、できれば立ち会いを免除して欲しい。

 

前の会社の同僚クリコさんが、一家4人で近所に引っ越してきた。

クリコさんは台湾の男性と結婚し、夫の国で2児をもうけた。さすがはジェンダー平等の国、当たり前のように立会い出産だったようだ。

夫のシャンさん、度胸あるなぁ。

今回、妻の国日本に移住したクリコ一家は、夫婦の役割を交代。妻が外で働き、夫が家事や育児を引き受けている。

二足歩行を覚えて、あらゆる方向に突進する次男(2)を追いかけながら、一家の主役の座を奪われた長男(5)の気持ちにも、そっと寄り添う。

淡々と、マルチタスクをこなすシャンさん。見かけほど簡単なことではない。

そしてイクメン・シャンさんは、恋愛ドラマの主役を張れそうなイケメンだ。自ら、「ぼくの取り柄は顔だけだよ…」と言うそうだ。

でも彼が facebook に寄せた文を読めば、そんじょそこらのイケメンじゃないことがわかる。

人として深みのある、イケメン。

日々の facebook のポストには稀有な、ド直球の彼の投稿を紹介します(原文は中国語・繁体字)。

クリコさん、あなた男を見る目があるね~ 

ただの面食いじゃないんだね~

 

育児はまさに修行~専業パパの本音告白

 最初はただ単純に「育児休業には補助金があるし、取らないともったいない」という気持ちで、会社に半年の育休を申請しました(職業的な燃え尽きもあったのですが)。

ところが専業育児の世界に足を踏み入れてみて、これは仕事というより、徹底した心の修行だと痛感することに……

親になって、というより「主要な育児者」になってはじめて、「見なければ心乱れず」という言葉の深い意味を思い知りました。

以前の私は、「育児にも積極的に参加している、標準以上の優良パパ/夫」だと思い込んでいました。

ところが、専業育児を始めて気づいたのは、自分は結局ちょっとだけよく手伝う、そえもの系パパに過ぎなかったということ。

あの「距離があるからこその気楽さ」は、今思えば最高レベルの贅沢であり、無知でした。

当時は、子どもの衣食住のほとんどを妻が担い、私は単発タスクと週末の楽しい時間だけ担当。

それで「週末なら一人で子ども二人を丸一日見れるし、俺は仕事も家庭もいける男だ」と満足していたのです。

でも、平日の月〜金を継続して見るのと、週末の12日だけを根性で乗り切るのとでは天地の差!

12日だけなら、ご褒美モードでやれる(たくさん遊ばせたり、ジャンク食べたり、生活リズム無視したり、未来の自分から前借りする運用)。

でも平日はそうはいかない。買い物、料理、登園・降園、食事、睡眠、全部きちんとこなす必要がある。

役割が入れ替わって主要な育児者になって、ようやく分かりました。

主要な養育者が抱える精神的負荷、閉塞感、縛られた感覚は、「仕事から帰ってきて子どもを抱っこするだけ」のあの軽さとはまったくの別次元なんですよね。

専業育児の難しさは、社会に大幅に過小評価されている

「専業で子どもを見る」と聞くと、たしかに難しくなさそうに聞こえる。

タスクもシンプル:食べさせる、おむつ替え、寝かしつけ、遊ぶ。

でも、この仕事が難しい本質は、

《コントロール不能》と《絶対的な拘束性》にあります。

拘束感:

時間は完全に細切れ。10分連続で確保できない。トイレの自由すらない(職場でスマホ見ながらトイレしてた頃が懐かしい)。ましてや「自分時間」なんて存在しない。

感情のブラックホール:

幼児の感情は読めず、24時間ずっと「受け止め、ほぐし、切り替え」をし続ける必要がある。理性の糸が何度もちぎれてはつなぎ直され、メンタルが削られる。

低い達成感:

一日で床を10回掃除してもすぐ散らかる。

力を込めて作ったごはんも、子どもは大量に残す。

この仕事には「見える成果」や「報酬」がほとんどない。

だからこそつらい。価値を数字にしにくいから。

その反動で私はデイトレに手を出し、1週間でやめました(笑)。

稼げないどころか育児にも集中できず、本末転倒。早めに気づいて本当に良かった

一見シンプルなタスクでも、相手が小さな子どもになった瞬間、難易度は「簡単」からいきなり「地獄」へランクアップします。

専業主婦/主夫の大変さは、社会に本当に過小評価されており、サポートも十分ではありません。

怨み節から、楽しめる育児へ

最初はネガティブな気持ちが多く、情緒も不安定でした(長く家計を支える側として生きてきたので)。

自己否定:

「自分って無能?日本に来たら稼げなくなるの?」

拘束と孤独:

自由にできる時間はゼロ。子どもとにらめっこ。寝たときだけが唯一の休息(ただし自分が一緒に寝落ちしないことが条件)。

落胆スパイラル:

子どものコントロール不能さに怒ってしまい、その後、自己嫌悪と後悔のループ。

それでも、格闘し続ける中で、少しずつプラスの面も見えてきました。

つながりの強化:

以前はママにしかできなかったことが、今は父である私も普通にできるように。

子どもが私に甘えたり、私だけがすぐ寝かしつけられたり、その特別な絆は言葉にならない。

歩みをゆるめる時間:

子どものゆっくりしたペースに合わせるうちに、僕自身も立ち止まり、「人生の優先順位」や「本当に大事な価値観」を考えるようになった。

心を鍛える修行:

育児は超硬度の砥石のように、ずっと私の忍耐と気性を削り続ける。

自分の限界を知り、崩壊寸前をどう歩くかを学んだ。

子どもがいるからこそ気づく——自分って意外と包容力ある(麻痺してる?)んだな、と。

予想外の副産物:

料理スキルが爆上がり。しかも安定して出し続ける必要がある。

台湾にいた頃なら絶対に起きなかった進化。

次のステップは?

弟はあと1年で幼稚園。

子どもたちが園に通い出したら、私は自分のキャリアと人生を再構築する必要があります。

この深く、そして人生で一度きりの「専業育児の修行」を経て、

自分が本気で打ち込みたい、情熱と意味を感じられる仕事を探したいと思うようになりました。

この修行は、私に自分自身を知る力を与え、家族をもっと愛せるようにし、

そして「自分にとって本当に大切なもの」をはっきりさせてくれました。

もし「専業育児が私に何をくれたのか?」と問われたら、こう言うと思います。

——人生の終わりや、子どもが巣立つ日になっても、

『子どもの幼少期に寄り添えた』と胸を張って言えること。

後悔なく、笑って手を離せること。

それこそが、専業育児がくれた最大の贈り物です

Christmas decoration, Tokyo Ginza, winter 2025


2025年11月14日

「オータニ・エフェクト」

 

たまには、タイムリーな話題を。

今年も米大リーグのMVPに輝いた大谷翔平選手は、広告界でも唯一無二の存在だ。ロサンゼルスで広告代理店を経営する岩瀬昌美氏が、マーケターの視点から「オータニ・エフェクト」を取り上げている。

プレジデント・オンラインから、一部を紹介します。

・大谷選手の昨年の広告収入は、推定7000万ドル(約109億円)。ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手(700万ドル)の10倍だ

22年に達成した「規定打席と規定投球回を同時にクリア」「投手として10勝以上・打者として30本塁打以上」、24年の「50本塁打&50盗塁」はいずれもMLB史上初。その圧倒的な実績が、大谷選手のブランド価値の基盤にある

・だが、大谷選手が広告界で成功した大きな要因は、彼がアメリカで築き上げた「古き良きアメリカの野球少年」というパブリック・イメージにある

・球場にゴミが落ちていれば拾い、不調でもベンチで暴れない。いつも爽やかな笑顔で、勝っても負けても腐らない。こうした振る舞いがアッパー層の「ジェントルマンであれ」という価値観に合致し、「よくできた息子」として、アメリカのお母さん世代から絶大な支持を得ている

・さらに、アメリカが抱える人種問題の中で、大谷選手は「ダイバーシティ・イメージ」のポジティブな側面を持っている

・英語が堪能でない東洋人が、純粋な情熱とひたむきな努力によって成功を収める姿は、多様性を重んじるアメリカ社会において希望の象徴となり得る

・以前、大谷選手が通訳を使っていることを揶揄した野球解説者が、コメントの撤回と謝罪に追い込まれた。これは、移民への偏見を是正しようとするアメリカ社会の動きを反映している

・大谷選手のドジャース移籍後、球場広告の値段が爆上がりしたにもかかわらず、その5割が日系広告になった。エンゼルス時代、目立つバックネット裏に広告を出した「くら寿司」は、超お得な買い物をしたといえる

・ロサンゼルスで家族4人で野球観戦に行けば、チケットだけで約400ドル(5万7000円)。ホットドッグや飲み物、お土産代を含めれば14万円を超える

・「持てる者」と「持たざる者」の格差が広がる中で、それでも大谷選手を見にスタジアムに足を運ぶ人々は、彼に「夢」を見出しているのかも知れない

・水原一平元通訳による違法賭博問題の際、「なぜ多額の資金の動きに気づかなかったのか」「なぜ自分で英語で説明しないのか」という批判が噴出した。アメリカが自己責任の国であり、移民社会であるからこそ、成功者には「アメリカン・ドリームに挑戦した者」の責任と自覚が求められる

・大谷選手が少しずつ英語でメディア対応するようになったことは、アメリカ人から「本当の仲間」と見なされるきっかけになる

・大谷選手が輝き続ける限り、日本もまた世界でその存在感を持ち続けることができるだろう

Yarigatake, from NH707 NGO-CTS  2025/11/07


2025年10月24日

否定しない がんばれと言わない

 

生活保護世帯の小中学生を教えていた数年前、その塾の講師仲間は、学校の先生だった人が多かった。

「そんなやり方じゃダメ!」

子どもと接する時、彼らがまず「否定」から入るのが、とても気になった。

いま働いている自然学校でも、小中学生を引率する先生たちから「ダメ」という言葉をひんぱんに聞く。言い方も、かなり高圧的だったりする。

 将棋の藤井聡太七冠の“師匠”杉本昌隆八段が、「子どもの才能をぐんぐん伸ばす親がしているたった1つのこと」と題してメディアのインタビューに答えていたので、その一部を紹介します(ダイヤモンド・オンラインより)。

・現在の弟子は10人、以前は将棋教室を開催していたので、その生徒も含めると100人近くの子どもと接してきた

・子どもの才能をつぶさないために気をつけていることは、「否定をしない」こと。将棋の指し方は、弟子の人生観にも関わる。必ず一手や二手は“いい手”があるから、まずそこを褒める

・そして褒めた後に「ここでは自分ならこうするかな」と、否定ではない表現で指導する

・「がんばれ」という言葉も、あまり言わないようにしている。これは弟子だけでなく、自分の子どもに対しても同じ

・学校、習いごと、SNSや友達との距離感……現代の子どもたちは、私たちが子どもの時代より多くのストレスを抱えている。大人が思っている以上に頑張っているはずで、少しの余裕もないほど気持ちが張り詰めている

・こちらが励ますつもりで口にした「がんばれ」という言葉で、かえってその気持ちが爆発してしまうことも起こり得る

・対局前も「がんばって勝て」とは言わない。「勝て」と言われて勝てたら苦労しないし、2人が対戦すればどちらか1人は負け、全員が勝つことはできない

・「奨励会」は、26歳までにプロである四段に昇段できなければ退会となる。昇段するのは全体の2割で、ほとんどの人は棋士になれない、成功できない

・かといって「棋士になれないこと」が、「人生の失敗」ではない。負けて何かが手に入らなかったり、失ってしまったりすることはあっても、取り返せないような失敗や負けというものはないのではないか

・これは将棋に限らず、一般的な進学や就職など、人生の山場でも同じ

・大切なことは精一杯やる、力を出しきることだから、よく話すのは「いい内容にするように」ということ

・実力が互角なら、最後は強い気の人、前向きな気持ちの人が勝つ。技術(実力)はもちろん大事だが、自信がないとその先で技術がいかされない。だからなるべくいいところを見つけて、自信をもたせる

Babgkok Thailand, 2025



2025年10月3日

代理母とモンスターマザー

 

心理学の世界に「ハーロウの代理母」という、かなり有名な実験がある。

まず、アカゲザルの赤ちゃんを、母ザルから引き離して檻に入れる。

次に、2体の模型の代理母を同じ檻に入れる。

1体は針金製。胴体の表面に、針金がむき出しになっている。

もう1体はタオル製。胴体に、タオルを巻き付けてある。

通常、アカゲザルの赤ちゃんは、母親にしがみついて一日の大半を過ごす。

さて、本当の母親がいないこの子ザルは、どちらの代理母にしがみついたでしょう?

実験の結果は、大方の予想通り。

子ザルは、タオル製の代理母にしがみつく時間が圧倒的に多かった。

そして意外なことに、針金製の代理母にミルク入りの哺乳瓶を付けてもなお、子ザルはタオル製代理母の方を好んだという。

この研究は、子どもはおっぱいで空腹を満たしてくれるから母親を好きになる、という「二次的動因説」への反証となり、父親の育児参加を促すきっかけになった…ということだ。

 それでは、もし私と妻の間に子どもがいたら、その子は私に愛着を示してくれただろうか?

何しろこのお父さん、おっぱいが出ない上に、針金のように痩せている。

結果次第では、心理学史に残る人体実験として、後世に名を残せたかも⁈

 

ハーロウはまた、「モンスターマザー」と呼ばれる実験を行っている。

今度は、子ザルがタオル製の代理母に抱きつくと、突然、針が出て来て突き刺す、というプログラムを組んだ。

この実験で子ザルは、針に刺されてもなお、「母」に抱きつくことをやめなかった。

何度刺されても、泣き叫びながら、再び抱きついていった。

虐待する親にも向けられる、子どもの無条件の愛。

果たしてこの実験結果、人間にも当てはまるのだろうか…

 ※実験が行われたのは、1960年代のアメリカ。そのあまりの残酷さに、現在これを追試して再現することはできない。

 

一連の実験を行ったハリー・ハーロウは、「天才心理学者」「愛を科学で測った男」と呼ばれた。

だが、彼の生涯を描いた本によれば、「愛」を研究対象にしたハーロウ自身は生きることに不器用で、終生「愛」に悩み苦しんだ、と伝えられている。

Bangkok Thailand, 2025


2025年9月26日

『なぜ日本人は間違えたのか』

 

終戦60年の夏、報道カメラマンとして遺骨収集団に同行し、パプアニューギニアに向かった。

日本から遠く5000キロ離れた、赤道直下の島。元日本兵の男性やボランティアの女子大学生らがジャングルの地面を掘ると、ほとんど土と同化した人骨が出てきた。戦時中、野戦病院があった場所だ。

この島に上陸した日本兵約20万人のうち、生きて帰れたのは1万人。食料の補給を絶たれ、死因の大半が餓死や病死だったという。

密林を出ると、出し抜けにケータイが鳴った。東京本社のデスクからだ。

「パキスタンでM7.6の地震発生、死傷者多数らしい。お前、衛星電話持ってるんだろ? すぐに向かってくれ」

(えーっ東京の方が近くないすか? ぼく半袖しか持ってないんですけど)

という言葉をぐっと飲みこみ、ポートモレスビー、アデレード、シンガポール、ドバイ、カラチ、イスラマバード経由で震源の村に向かったのだった…

そして今年は、はや戦後80年。関連ニュースがメディアを賑わせる中、日経ビジネス電子版に作家・保阪正康氏のインタビューが載っていた。

『あの戦争は何だったのか』『なぜ日本人は間違えたのか』などの著作がある保阪氏は、何千人もの元軍人や政府関係者に取材を重ねて史料を徹底検証する、実証主義的なスタンスで知られるノンフィクション作家だ。

インタビューの一部を紹介します。

・学校を出たばかりの二十歳過ぎの若者が、鉄砲を担いでなぜニューギニアなどに送られて死ななきゃいけなかったのか。彼らは行き先も告げられずに船に乗せられ、地獄のような戦場で命を落とした

・なぜこんなことになったのか。戦争で死んだ兵士たちのためにも、きちんとした答えを出さなきゃならない

・戦後の左翼的な歴史観に対して、実証的な歴史研究に基づいて異議申し立てをすると、「お前は右翼だ。軍国主義者だ」と非難される。逆に、太平洋戦争における日本の軍部の問題点を指摘すると「お前は左翼だ」と批判される

・あの戦争が正しかったとか、間違っていたとか論じる必要はない。人は好むと好まざるとにかかわらず、生まれた時代の枠組みの中で生きていくしかない

・あの戦争から学ぶべき1つのポイントは、シビリアンコントロール(文民統制)が存在しなかったこと。ヒトラーもスターリンも軍人ではなくシビリアン。軍人が政治を手中に収めてコントロールしたのは、日本だけ

・首相と陸相を兼務した東條英樹は、国民に「戦争は負けたと思った時に負けるんだ。だからそう思うまで負けていない」と語っていた。まさに精神論。残念ながら当時の日本は、政治と軍事の指導者のレベルが本当に低かった

・慶応大在学中に召集された上原良治は、神風特攻隊として出撃する際「明日は自由主義者が一人この世から去ってゆきます」と全体主義を批判し、一方で「特別攻撃隊に選ばれたことを光栄に思っている」と述べた。

心に矛盾を抱えながら運命を受け入れ、22歳で沖縄の空に散っていった

Vientiane Laos, 2025


2025年9月18日

令和の「できるママ」

 

週末の夜、予備校帰りにフランス風ビストロに寄って、自分へのご褒美にステーキを頬張っていた。

隣のテーブルは、母子と思しき20代と40代の女性2人組。

お揃いのフリフリのコスプレ風ドレスを着て、にぎやかにおしゃべりしながら、ケーキをパクついている。

見たところ、推し活のコンサート帰りか? 

今の20代は、親と仲がいいなぁ。

そういえば一昨年、大学山岳部の学生とヒマラヤ登山をした時も、ケータイが通じる村では皆、日本の母親とLINEでビデオ通話してたっけ。

 

博報堂が1922歳を対象に行った最近の調査で、若者と両親との関係性が、かつてないほど緊密になっていることが判明したという。

以下、日経ビジネス電子版の記事の一部を紹介します。

1994年から2024年の30年間で、若者の幸福度や生活満足度が大きく向上した。「生活に十分満足している」と回答した若者は、9.4%から30.0%に増加。「非常に幸せ」と感じている人も、19.7%から33.5%に増えた

・「失われた30年」の中で育ち、経済成長を経験していない今の若者は不幸なのではないか——そんなイメージとは正反対の結果

・人の幸福度の柱となる経済状況、健康状態、人間関係の3大要素の中で、特筆すべき変化が見られたのが人間関係。なかでも家族、特に母親との関係の緊密化が、若者の幸福度に寄与していた

・以前の若者は思春期以降、親と一緒に街を歩くだけでも恥ずかしく感じていた。一緒に趣味に興じたり、洋服を共用したりするなどもっての外だった

・ところが2024年調査では、「本当の自分を一番見せている相手」や「自分の価値観に一番影響を与えている相手」で「母親」を挙げる割合が大きく増加し、「親友」からトップの座を奪った

・日常生活や趣味、ファッションはもちろん、受験や就職活動、資格取得など様々な面で、息子・娘を問わず、母親の影響を強く受けている

・かつて母親は大学受験や資格試験の受験を経験していなかったり、就労経験が少なかった。父親に比べて社会から遠く、ロールモデルや人生のアドバイザーとしての役割を担いづらい側面もあった

・しかし、現在では女性が男性と同じように学歴社会を歩み、社会の中で実績を積んでいるケースも増えている。「母親が子どもの勉学やキャリアに関わるようになった」というより、「関わることができるようになった」

・母親が様々な経験をしているからこそ、具体的かつ説得力のあるアドバイスができる。子どもから見て、知識もスキルも持ち合わせた「できるママ」が増えている

…令和のZ世代、幸福度爆上がりの原因は「できるママ」の存在だった!

Nong Khai Thailand, 2025


2025年9月12日

HIKIKOMORI

 

不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。

増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。心理系大学院入試でも、事例問題としてよく出題される。

対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循環にアプローチしていくことだという。

 

「社会的ひきこもり~終わらない思春期」(PHP新書)の著者で、不登校やひきこもりの事例に長年関わってきた精神科医の斎藤環氏のインタビュー記事の一部を、日経ビジネス電子版より紹介します。

・「Hikikomori(ひきこもり)」は英語になって、辞書にも載っている。日本には、成人した子どものケアを両親がナチュラルに続ける文化がある

・英国や米国では、成人した子どもは家から出ざるを得ず、社会参加できなければホームレスになる。日本における「ひきこもり」に該当するのは、英米では「ホームレス」

・でも最近は英米でも、子どもがかわいそうだから家で面倒をみよう、という親が増えている

2022年度の統計で、不登校は小・中学校で約30万人。原因の1位は「子ども同士の人間関係」で、いじめも含まれる。2位は「教師との人間関係」で、ハラスメントも含む。3位は「家庭の問題」で、ネグレクトなどの虐待

・逆にいえば、子ども本人に原因があるケースはほとんどない

・ところが文部科学省の調査では「不登校の主な要因」で最も多いのが生徒本人の「無気力・不安」で、次が「生活リズムの乱れ・あそび・非行」。「生徒本人のせいだ」という回答が6割以上を占める

・自分たちのせいにしたくないので、子どものせいにしている

・親の対応としては、不登校の子には学校の話をしない、ひきこもりなら仕事の話や将来の話は一切しない。これが大前提で、それ以外のおしゃべりを親子でたくさんすること

・親としては難しいことだが、そこを我慢する。そして、「話すことを我慢している」ことを子どもに分かるようにする。手のうちを全部見せることが、信頼関係につながる

・暴言や暴力も、不登校・ひきこもりに伴いやすい。親は「私は暴力を受けたくない」「私はイヤです」と言っていい。「ダメ」は「禁止の言葉」で子どもには全く通用しないが、「イヤ」は「拒否の言葉」で結構効く

・親の家出も有効。1週間ほど家出して帰る頃には、子どもの暴力が収まっていることが、かなりの確度で期待できる

・ひきこもりの解決策の優先順位は、「親のセルフケアが1番。2番目が子どものケア」。そうしなければ、共倒れになってしまう

Matsumoto Japan, 2025


2025年9月5日

昭和の新入社員 令和の新入社員

 

山岳部の後輩で4月に就職したなっちゃんと、社会人2年めのマソラさん。

八ヶ岳登山のついでに、わが家に寄ってくれた。

「会社で働くのは楽しいです!」 なっちゃんが、生き生きとした顔で言う。

は? 会社で働くのが、楽しい?

(ぼくは25年会社で働いたけど、楽しいと思えたのは3分だったよ涙)

彼女の会社は、完全フレックスタイム制。出社時間も退社時間も、自分で決められる。

(なっちゃん、ぼくが就職した頃はね、新入社員は誰よりも早く出社しなきゃいけなくて、夜は上司が帰っていいと言うまで毎晩、残業だったよ涙)

マソラさんはというと、新卒で入った組織にさっさと辞表を出してきた。

医療系の国家資格を取るべく、再び学校で勉強するという。

この2人と自分とは、仕事観、職業観がまったく違うんだろうなぁ。

 

『働くということ』(集英社新書)の著者で組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏が、「職場をダメにするブレない上司~成功体験にこだわり部下をつぶす」と題してインタビューに答えている。

こういう上司、いたいた! ウチの職場にも。

日経ビジネス電子版から一部を紹介します。

・一元的な能力主義で組織を運営するマネジャーは、誰に対しても同じ態度で接しようとする。一見、公平でいいことのようだが、多様な人たちに対して同一のモノサシを当てて評価するので、個人の持ち味の違いをうまく引き出せない

・その人がマネジャーに抜てきされたのは、「過去に」成果を上げたから。だから、そのときの成功体験をどうしても引きずってしまう

・一元的な能力主義の下、「強くあれ、勝ち続けろ」「優秀さのみが正しさである」という価値観で仕事をしてきた人が、マネジャーとしてチームを率いる立場になると、部下にも同じことを求めてしまう

・部下が成果を出せないときに、「自分の側が変えられることはないだろうか?」と思えればいいが、相手の問題にするほうが楽。部下が弱かったから、能力がなかったからと考えたほうが「優秀な自分」を温存できて、精神衛生にいい

・マネジャーが自分の成功体験を引きずり、それだけを正攻法だと捉えて部下にも同じやり方を押しつけてしまうと、それが合わない人は認めてもらえなくなる

・いまだに大企業は「優秀な人」を求めている。職務要件をはっきりと定めず、「どんな部署でも頑張れる人」を採りたがっている。求める人材像は「即戦力」で「万能選手」。そんな、スーパーマンみたいな人はいない

Shanghai China, 2025


2025年7月31日

自己愛性パーソナリティ

 

心理的障害のひとつに、「自己愛性パーソナリティ障害」がある。

自己愛性パーソナリティの特徴は、アメリカ精神医学会の診断基準では

・自己の重要性に関する誇大な感覚。業績や才能を誇張する

・限りない成功、権力、才能、美しさの空想に囚われている

・自分が特別で独特で、他の地位の高い人にしか理解されないと思っている

・過剰な賞賛を求める

・特権意識があり、自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する

・自分自身の目的を達成するために他人を利用する

・共感の欠如。他人の気持ちを認識しようとしない、または気づこうとしない

・しばしば他人に嫉妬する。あるいは他人が自分に嫉妬していると思い込む

・尊大で傲慢な行動または態度

・男性に多い

…この性格特徴、某超大国の現職大統領に、ほとんどの項目が当てはまってしまうのでは? 


予備校のミヤガワ先生の話では、幼少時にほとんど叱られず、褒められすぎて育つと自己愛性パーソナリティになりやすい,、という。

現代日本で、子どもは「褒めて育てる」が基本だ。

日ごろ親から褒められて育った子は、自己愛が肥大化する。たくさん賞賛されないと、承認欲求が満たされなくなる。SNSの自分のポストにたくさんの「いいね」がつかないと、不安になってしまう。

何ごとも、ほどほどがよろしいようで。

でも、自己愛性パーソナリティの人が持つ傲慢さ、尊大さ、妥協を許さない心は、創造的な営みにおいては非常に大切らしい。

「誇大ともいえる自信があるからこそ、誰にもなしえない成功ももたらされるのである」(岡田尊司著「パーソナリティ障害」PHP新書より)。

同書によると、アーティストや芸術家にこうした特性は不可欠。画家のサルバドール・ダリ、ファッションデザイナーのココ・シャネル、彫刻家のオーギュスト・ロダンも、自己愛性パーソナリティの持ち主だったようだ。

そしてそして。

引きこもりも、自己愛性パーソナリティ障害の随伴症状だという。

「自分が抱いている偉大な成功と、卑小な現実が釣り合わなくなった時、ナルシシストは、自分の小さな世界に閉じこもることによって、失望したり、傷つくことから身を守るのである」(同書より)。

 

超大国の大統領や芸術家と引きこもりが、同じ精神病理で語られるとは…

心理学って面白い。

Cebu city Philippines, 2025


2025年7月24日

孤独に苦しむのも、孤独を楽しむのも脳

 

毎週、八ヶ岳中腹の自宅から名古屋を往復する。

標高1600mから下った夏の名古屋は…やっぱり暑い!

「まるで、街全体がサウナみたい」と形容しようと思ったら、実はサウナって高温だけど湿度は低いそうですね。知らなかった。

名古屋の夏は正真正銘、高温多湿だ。そして、連夜の熱帯夜。

早朝に名古屋城を走って一周しただけで、汗だくになる。

でも名古屋は、地下街がとても発達している。名古屋駅を中心に四方八方に伸びていて、かなり遠くまで地面の下を歩いていける。中はエアコンが効いて涼しい。

通路の両側には店舗が軒を連ね、まるで名古屋の下に、もう一つ別の地下都市があるみたい。フランス風ビストロや南インド料理専門店など、おいしいレストランもある。

そして地下街を歩く女の人が、東京駅の地下街より数段おしゃれで、美しい。

いやこれ、ホントの話。駅前にモード学園があるせいか? その差は歴然。

名古屋の地下街歩きが、最近の密かな楽しみに…

 

話は変わって(笑)、

脳科学の最新の研究では、孤独は健康リスクとされる一方、脳の創造性や想像力を高める側面もあることが明らかになったという。

『最新研究でわかった!くじけない脳のつくり方』(毛内拡著、日経ビジネス人文庫)から一部を紹介します。

 ・孤独でいるとアルツハイマー病などの認知症になりやすいなど、健康に悪影響を及ぼす。孤独は、肥満や飲酒より健康に悪いという報告もある

・しかし、意図的に孤独の時間を楽しむことで内面の充実や創造性を追求する人も増えている。孤独に苦しむのも、孤独を楽しむのも脳

・カナダのマギル大学の研究によれば、孤独を感じる人の脳は体積が大きく、空想、回想、創造などを司る脳領域の内部ネットワークの接続性が強化されている

・孤独な脳では、デフォルトモード・ネットワークの接続性が向上する。孤独によって将来の計画を立てたり、想像力、創造的思考、シミュレーション能力が向上したと解釈できる

・孤独は、身体に悪影響を及ぼすものとしてネガティブに捉えられがちだが、その一方で、孤独を通じて自分自身と向き合い、内面の豊かさや独自の視点を育むポジティブな側面もある

・最近はSNSやオンラインツールの発展によって、孤独を感じづらくなってきている。「孤高」という言葉もあるように、独創的でありたいなら、あえて一定の孤独状態を保つことも、創造性を引き出す1つの方法

Nagoya Japan, 2025


2025年7月18日

フラーリッシュ

 

全国紙のY新聞に、「シングルスタイル」というコーナーがある。

独身やひとり暮らしの中高年の生き方にスポットを当てて、著名人にインタビューしたり、読者の投稿を紹介したりする。

自分もひとり暮らし歴5年目なのでたまに読むが、そのたびに違和感を覚える。ほぼ毎回、「ひとり暮らしは孤独」「独身は寂しいもの」という考えを前提にして、どうやってそれに対処するかが書かれているのだ。

ひとり暮らしって、そんなに孤独で寂しいものなのかな。

 

「幸福度」の新しい国際的新指標「フラーリッシュ」で、日本はまたまた?最下位になったそうだ。ナショナルジオグラフィック日本版の記事を、さわりだけ紹介します。

・「フラーリッシュ」は持続的幸福度の尺度。22か国20万人に「人生の目的を理解している」「あなたの身体的な健康状態はどれくらいですか」「通常の月の生活費が足りるかどうか心配する頻度はどれくらいありますか」などを質問

・その結果、人々の持続的幸福度は、お互い助け合うことで高まることが明らかになった。深い満足感やウェルビーイングの感覚を与えてくれるのは、所有物やバーチャルな関係ではなく、個人やコミュニティーによる選択

18歳から29歳の人は各国とも持続的幸福度が低い。現代の若者は、生活費の問題やコロナ禍の影響、将来の仕事への不安、宗教や政府など社会制度のほころびといった問題に頭を悩ませている

・人々が感じる人生の意味と持続的幸福度は、その国の1人当たりGDP(国内総生産)と逆相関の関係。人生の意味と目的については、常に第三世界の人々の方が高く回答している

22か国の持続的幸福度1位はインドネシア。インドネシアの1人当たりGDPは約5250ドル(約75万円)で、下から3番目。幸福度が最も低かった日本の1人当たりGDPは約35600ドル(約510万円)

・出生率の低下、家族形成の難しさ、社会的に孤立している男性の多さなどの問題や、宗教行事に参加する人の少なさが、日本人の持続的幸福度の低さに影響を及ぼしている可能性がある

・日本は過去150年間に経験した急激な経済的、文化的な変革のせいで、持続的幸福の多くの領域で比較的高い犠牲を払うことになったと思われる

・ボランティア活動やボウリング大会などの世俗的なコミュニティー行事への参加は、幸福度を大きく上昇させる。グループ活動に参加することは社会的つながりの感覚を高め、よりよく生きる助けとなる

・誰かと一緒に食事をすることも幸福感と強く関連する。だが米国人の4人に1人が、前日の食事は1人で食べたと報告。韓国と日本では過重労働文化の影響か、誰かと夕食を共にするのは1週間に1、2回だけという人が増えている

Shanghai China, 2025


2025年6月20日

閉じたひと 開いたひと

 

心理系大学院受験のための予備校で、ちょっと意外に思ったこと。

う~ん、なんていうか……わりと「閉じた」感じの人が多いのだ。

社会人のクラスメートとは、講義が終わってから焼き鳥屋に行ったりもする。でも大学生たちは休憩時間もテキストを開き、マスクとイヤホンをして、ずっとうつむいている。

教室内はしんと静まり返って、取り付く島もない。

同じ大学生でも、セブ島の英会話学校のクラスメートはオープンマインドだった。週末も一緒に遊んでくれたんだけどなぁ。

比較の対象が間違ってるのか…? でも将来、心理職として対人援助の仕事をするなら、もっと周囲の人にも関心を持った方がいいかもよ。

 日経ビジネス電子版で、公衆衛生学者のキャスリー・キラム氏が「つながりの健康」について解説していたので、ちょっとだけ紹介します。

・これまで健康は「体」や「メンタル」の面から議論されてきたが、最近は「社会的(Social)」な健康が注目されている。人とのつながりや関係に由来するから「つながりの健康(Social Health)」

・どんなに体やメンタルを整えても、人間関係がうまくいかず孤独を感じていては健康になれない

・数十年にわたる研究により、人とのつながりは心臓発作や認知症、鬱、糖尿病などにも影響することが科学的に証明されている。感情論で重要といわれているわけではない

・米調査会社ギャロップの調査によると、世界では4人に1人が孤独感を抱えている

・結婚せずに1人で暮らす人は増えているし、スマートフォンにばかり気を取られてリアルの人間関係を構築できず、どんどん孤独に傾倒していく流れもある。米国では、孤独による経済損失は年間4000億ドルという試算がある

・私たちは人生の多くの時間を労働に充てている。一緒に働く人との関係性はイヤでも私たちのつながりの健康に影響する

・多くの調査により、職場に友人がいる人は生産性が高いことが分かっている。ギャロップの調査では、「職場に親友がいる」と回答した人は、いない人に比べて7倍もエンゲージメント(仕事への熱意)と生産性が高く、職場でけがをする確率も低い

・米マイクロソフトには「自分の失敗を認める会」がある。チームごとに自分の失敗談と、そこから得た学びを話し合う。ここで重要なのは、一番偉い人から話し始めること。失敗を共有する行為は、職場での心理的安全性にも寄与することが分かっている

・体を鍛えたり、メンタルケアをするように、つながりも鍛えたり、ケアしたりしないといけない

Bangkok Thailand, 2025


2025年6月12日

人生最後に残る趣味

 

「結局、人生最後に残る趣味は何か」 林望 草思社

(こんな本を手に取るようになった自分に、驚く)

果たして、御年75歳になったリンボウ先生がたどり着いた境地とは?

ほんの一部だけ紹介します。

・普段から仕事一辺倒で、人間としての「余白」がまったくない人は、周囲からつまらなそうに見えてしまう

・つまらなそうに見える人は、周囲の人との関りが乏しくなり、ますます退屈な人生を送るという負のスパイラルに陥る

・名誉ある孤立を保つ人は「秘密のポケット」を心に持っている。その中には、その人にとって大事な宝物が入っている。この宝物こそが趣味というもの

・趣味を持つことの意味は、人間関係を豊かにすることでもあり、自分の人生を楽しみ多いものにすること

・でも最初から「趣味で友だちを作ろう」とは考えない方がいい。そこで良友を得るかどうかは「結果論」でしかない

・趣味を始めようとする人の中には、友だちを増やしたいとか社交の機会を増やしたいという目的を持つ人がいる。草野球よりも試合の帰りに居酒屋に寄って仲間と飲み食いするのが楽しみ、など

・飲み会でだらだらしゃべっているような仲間は、友だちと呼べるのか?何年も会わなくても、常に心を通わせている関係こそ友だちというのではないか

・そして、趣味は大真面目にやった方がいい。無限の向上心と熱意とを持って、やめることなく継続する。継続すれば必ず上達できるし、最終的には思いがけない自己実現につながる

・「できなかったことができるようになる」ことが人間の大きな楽しみ

・適性がある趣味を選ぶこと。それをしている時間が楽しくて寝るのを忘れてしまう、ずっとやっていても苦にならないというのが適性がある証拠

・ピアノの適性がある子は、上手に弾けるのが楽しいからたくさん練習する。自分でも上手になるのが実感できるから、さらに練習する。先生や周りの大人からも褒められるから、さらに練習して上達するというサイクルに入っている

・芸術は、少しでも自分でやった経験を持っている方がより深く楽しめる。絵を描いた経験がある人は絵の見方に熱意と深みが出るし、音楽をやっている人は音楽の聴き方・味わい方が深くなる

・文学は、人に教わらず自己流で取り組んだ方がいい。夏目漱石や森鴎外の作品も、文章の先生について学んだわけではなく、その心の中から自発的に湧き出てきた世界。文学や絵画はほんらい誰からも独立の世界であるべき

・時間を節約するためのもっとも正しい方法は「やらなくてもいいことをやめる」こと

・人生において、時間を無駄にする一番の元凶は「惰性による人づきあい」

Bangkok Thailand, 2025


2025年5月30日

セラピストを目指すワケ①

心理系大学院受験の予備校では、現役大学院生から直接アドバイスを受けられる。

アポを取って3人めにお会いしたKさんは、東京出身の50代女性。とても柔らかい雰囲気の人だ。

Kさんが大企業で働いていた時、同じ職場の女性が相次いで心を病み、離職していった。なすすべもなく、それを見送るしかなかった。

もし自分に心理学の知識があれば…

と、50歳で退職し、名古屋の大学に入学した。

「ど、どうしてまた名古屋に?」

「日本で最初に心理学部を作ったのが、名古屋のC大学なんですよ」

卒業後は公認心理士の資格を取り、産業カウンセラーとして働く女性を支援したいという。

 

早稲田大教授で人類学者の長谷川眞理子氏は、「女性活躍を本気で考えている日本企業はごく一部」だという。だが、希望もあるらしい。

以下、日経ビジネス電子版の同氏インタビューから一部を紹介します。

・米国で第2次トランプ政権が立ち上がり、DEI(多様性、公平性、包摂性)の方針を撤回する動きが広がっている。西洋文化は歴史的に女性に対する差別的感情が根深く、トランプ政権を機に逆回転が始まってしまった

・そもそも米国は基本的に西部劇のような文化。白人の男性が荒野を切り開いて国をもり立ててきた。黒人や女性などのマイノリティーを差別してはいけないと頭では理解していても、文化の根本はやはり西部劇。DEIに嫌悪感を持つ白人男性は多い

1780年代から英国で奴隷貿易を禁止する動きが始まったが、最終的に制度が消滅したのは1888年。約100年もの歳月がかかったのは、奴隷がいなければ成り立たない経済ができてしまっていたから

・男女の溝は根深く100年以上かかると思われるが、ダイバーシティーを進めたほうが経済に良い影響をもたらすと明確になれば風向きが変わるはず

・日本政策投資銀行が特許の経済価値と開発チームの男女比の関係性を調べたところ、同性のみのチームよりも、男女混合のほうが経済価値の高い特許を生み出していた。様々な意見が出されることで、使い勝手の良い特許になる

・日本は男女が共に働く農耕社会だったため、本質的な対立は西洋ほど根深くない。明治時代に西洋文化を取り入れるまで、男女はほぼ平等だった

・男性ばかりの日本企業がうまくいっていたのは、やるべきことが明確な高度経済成長期だったから

・多様な価値観を持つ人が一緒に働くと最初は生産性が落ちて苦労するが、課題に対する新たな解決策が見つかるなどの効果も出てくる

・米国での反DEIの動きも、長い目で見れば一時的な揺り戻し。4年後には以前の状態に戻っていても何ら不思議ではない

・「反DEIの波に翻弄されるな。日本企業はぶれない軸を持て」

Nongkhai Thailand, 2025


快適すぎるインド旅行

  大学院入学を控えたこの春、卒業旅行と称して南インドを旅した。 旧フランス領のポンディシェリ、旧ポルトガル領コーチン、同ゴアなど「インドの中の西洋」を巡り、1日3 食、朝からカレーを食べ続ける旅。 この辺りのカレーは「ケララカレー」といって、ココナツベースで甘みがある。...