2024年12月20日

肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。

現在の山岳部も、12人の部員を束ねる主将はナナコさんだ。

でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。

今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソラさんの場合、趣味は狩猟。仕留めたシカを自分でばらし、アパートの冷蔵庫はシカ肉でいっぱいだという。

夏に会った時、マソラさんが肉食女子だという最重要事項を忘れて、よりにもよってヴィーガン・インド料理レストランに連れて行った。

肉という肉が、すべて大豆ミート。

どうせわかりゃしないだろう…という願い空しく、食後の彼女はとても不満そうだった。

一世一代の痛恨事!

おまけに、小柄なのによく食べることも失念していた。去年一緒にヒマラヤ登山をした時、標高4000mの村でダルバート(カレーと野菜炒め、豆のスープにご飯がついたネパール定食)をお代わりしていた。

自分の胃袋を基準に、ものを考えちゃいけないな。

 

先日、絶好のリベンジの機会がやってきた。

親友のなっちゃんとやってきたマソラさんに、1泊3食、しこたま食わせた。

味はともかく、量に関してはご満足頂けたと思う。

そして、一部例外を除く「老若女女、甘いものに目がない」法則に従って、毎食後のデザートも欠かさなかった。

スイーツを前にした20代女子の、目の輝きといったら!

まるで、瞳に電飾がついているよう。

 

親友のなっちゃんはこの夏休み、北アルプスの山小屋に住み込みで働いた。

OBも泣いて喜ぶ、正統派大学山岳部員!

「山小屋でバイト中、何か面白いことあった?」

「そういえば、近くの登山道で60歳のおじいさんが低体温症で倒れて、間一髪で救助しました!」

60歳の…お、おじいさん…?

ボクってもう、おじいさんなのね。

ショック。

 

夜も更けて会話が途切れた頃、マソラさんが小声でつぶやいた。

「…でも何だかんだ言って、スーパーで普通に売ってる牛や豚、トリ肉が一番おいしいんですよね」

出たっ! ついに本音が!

冷蔵庫にいっぱいのシカ肉、がんばって食べてね~

ボク、手伝わないから。 

Varanasi, India 2024(写真と本文はあまり関係ありません)


2024年12月12日

エイジング・パラドックス

 早朝ジョギングに出かける時、ふと玄関先の温度計を見たら、マイナス10度。

今年は久々に、まともな冬になるかも…

砂利道に積もった雪が、踏むたびにキュッキュと音を立てて気持ちいい。

 

街に下りて勤務先の忘年会に出た夜、そのまま近くのホテルに泊まった。

すぐ隣は、大きな赤十字病院。夜中に何度も救急車のサイレンが聞こえた。

その病院は、地域のがん診療拠点病院だ。私がS病院で働いていた頃、ここで治療をやり尽くし、余命を告げられた患者さんが、わが緩和ケア病棟に移って最後の日々を過ごした。

その中の何人かは、田舎暮らしを夢見て、定年後に首都圏から移住してきた人だった。

田舎暮らしも元気なうちはいいが、いざ病気になると、医療の選択肢は限られる。そして、ここではクルマが生命線。夫が入院してしまうと、運転ができない奥さんは移動の足がなくなる。本人も家族も、本当に大変そうだった。

私が同じ都会からの移住組だと知ると、

「年を取ってからの田舎暮らしは、よくよく考えた方がいいよ」

と口々に言い残して、旅立っていった。

ホテル泊の翌日、農家の収穫祭にお呼ばれする。小さな集落の、白壁に屋号が刻まれた古い家で、ミネちゃん、シゲちゃん、ソエちゃん(揃って75歳、元気印の女性たち)と4人で食卓を囲んだ。

日本から出たことのない彼女たちにとって、カンボジア生まれ&フランス育ちの私と話すことは「異文化交流」なのだそうだ。

大きなすり鉢に山盛りのとろろ芋をメーンに、銀鱈の西京焼き、おでん、大根の皮とごぼうのキンピラ、漬け物各種。

炊きたての白いごはんは、目の前の田んぼで収穫したものだ。

ご馳走に舌鼓を打ちながら、立て板に水の如き女性たちのおしゃべりを聞く。

すると、いつも控えめで普段あまり笑顔を見せないミネちゃんが、

「毎晩、寝る時にいつも布団の中で、あぁ今日も幸せだった~って思うの」

といって、ニッコリ笑った。

特別、その日に何かハッピーな出来事があったわけでもない、という。

ただただ、幸せ。

発達心理学には、「エイジング・パラドックス」という言葉がある。高齢者は様々な衰退や喪失の経験を重ねるのに、なぜか幸福感が高いという。

また、「社会情動的選択性理論」によると、高齢者にはネガティブな情報を避け、ポジティブな情報に向かいやすくなる「ポジティブ選好性」が見られるらしい。

人間って、うまいこと出来てる!

願わくば15年後、自分もこの3人みたいに元気で、幸せな気分でいたい。

その後のことは…成り行き次第かな。あんまり考えないでおこう。

Varanasi India, 2024



2024年12月7日

農家もニーサ!

 

農閑期に入り、やっと畑仕事から解放されたミネちゃん、シゲちゃんと、湖畔のレストランでランチ。

ともに70代女性のふたりとは、病院で働いていた時に看取ったキミちゃん(享年96)を通じて知り合った。

地元の小学校から高校まで、ず~っと一緒だったという大の仲良しだ。

そして今、ふたりとも「新NISA」に興味津々。レストランから森のわが家に場所を移し、メモを片手に根掘り葉掘り、質問攻めに遭った。

う~ん…

年齢的に投資期間が限られた彼女たちに、果たして「全世界株インデックスを使った積み立て投資」なんか勧めていいものか…

「世の中インフレで、お金を銀行に置いておいたら減っていくだけ。少しでも増やして、子どもや孫に残したいの」

あ、3世代に渡って継承するお金か!

それなら、時間はたっぷりあるぞ。

 

安倍政権が始めて、岸田政権が拡充したこの少額投資非課税制度(NISA)。政府の狙いはたぶん、眠っている国民の預貯金を日本企業に投資してもらおう、ということだったと思う。

でもフタを開けてみれば…

投資先に自由な選択の幅を与えられると、皆こぞって、米国株などの外国株を選んだ。

日々変動する為替リスクを取ってまで。

それだけ、日本に期待していない人が多いのだろう。

 

日本に投資せず、外国に投資する私たちは、果たして非国民か、売国奴か。

自分で働いて貯めたお金を、インフレに負けず少しでも増やそうと真剣に考えれば、イノベーションを生まず、従業員への低賃金と長時間労働で利益を絞り出そうとしている多くの日本企業をスルーするのは、当然のように思える。

 

それにしても、老若男女を巻き込んだ「新NISA」の世界株投資ブーム…

すごい破壊力だ。

投資信託経由の家計部門の円売りは、今年14月で早くも4兆円を超え、すでに2023年通年を上回っている。このままいけば年間10兆円を超えて、日本の経常黒字20兆円の半分を食う勢いだ。

最近、再び1ドル150円を超える円安になっている。

これも、新NISAを経由した「家計の円売り」が影響しているのだろう。

みんな毎月の積立で外国株を買っているのだから、この円安は当分続くかも。

Varanasi India, 2024


2024年11月29日

マルハラ、リモハラ、セクハラ

 

「マルハラ」

メッセージの文末にマル(句点)をつけるのは、ハラスメントに当たる

→文末にマルがあると、相手が怒っているような気がするから

「リモハラ」

→リモートハラスメント。新型コロナウイルス禍の在宅ワーク中、会社にずっとPCのカメラオンを指示されたり、オンライン飲み会を強要されたりしたことに由来

…マルハラ? そんなハラスメントあったんか。知らんかった~

元々、SNSのメッセージには句点をつけていない。単に面倒くさいだけだが、それで正解だったのね。

 

相手が嫌がらなければ、セクハラではないのか?

「ビジネス倫理学」が専門の杉本俊介・慶応義塾大学商学部准教授が、この問いに明快に答えている(以下、日経ビジネス電子版の同氏インタビューより)。

・何がハラスメントで、何がそうでないのか。「相手が嫌だと思うことはしない」というのが基本的理解だとしたら、相手が嫌だと思わなければいいのか?

・そうなると、ハラスメントは相手次第という結論になってしまう。同じ行為でも、嫌がる人もいれば嫌がらない人もいる

・倫理学者イマヌエル・カントの「義務論」では、相手を手段として扱わず目的として扱うべきで、相手を目的として扱うとは、相手の人格を尊重するということだという

・奴隷制時代の米国で、奴隷として働かされた人たちがその環境に慣れて、誰もが嫌だと思っていないと仮定する。たとえ嫌がっていなくても、人を奴隷として働かせることはやってはいけない。なぜなら、奴隷制は人を単に手段としてのみ扱う制度だから

・「なぜハラスメントは不正なのか」と考えるのが倫理学的な思考。義務論では、相手が傷つくかどうかではなく、人としてやってはいけない行為だから、ハラスメントは不正だと考える

・パワハラも部下の人格を尊重せず、もっぱら手段としてだけ扱っている。そういう行為は、人としてやってはいけないから不正

・セクハラをしてはいけない理由として、「差別になるから」という考え方も重要。多くの場合、セクハラは男性から女性に向けられるから、女性という集団全体を貶(おとし)めている側面がある

・たとえ個人が同意したとしても、属している集団全体への苦しみにつながるから、セクハラは良くないことと説明できる

・会社や社会の中には、私たちが見過ごしている、気づけずにいる不正がまだまだある。それを放置しないためにも、行為の根拠までさかのぼって不正かどうかを考える倫理学的な思考が必要

Varanasi India, 2024



2024年11月22日

8000mの世界

 

「行動する写真家」47歳の石川直樹さんが、ヒマラヤの8000m峰全14座の登頂に成功した。

登山装備の他に中判のフィルムカメラを担いで、山麓から頂上まで、写真を撮りながら登る。本当にすごいと思う。しかも記録を見ると、

2022年 ダウラギリ、カンチェンジュンガ、K2、ブロードピーク、マナスル

2023年 アンナプルナ、ナンガパルバット、ガッシャブルムⅠ、チョ・オユー

この2年間で9座に登っている。

当然、移動にはヘリコプターを駆使しているだろう。登山技術や体力に加えて、写真家には珍しく資金力もある人なのかな…

登山の様子はNHK特集でも放映されたが、活字メディアでは集英社.com に掲載された石川さんのインタビューが、質問者の問いかけが的確でよかった。

(以下、インタビューから垣間見えた現代ヒマラヤ登山事情です)

・以前のシェルパは、登山は仕事と考える人が多かった。登山シーズンが終われば故郷の村に戻り、ヤクを飼育したり、宿を経営したり。

だがイマジン・ネパール社のミンマ・Gら、最近の30代のシェルパたちは通年山にいる。春秋ネパール、夏はパキスタン、そして冬は別の海外の山へ。

彼らはヒマラヤから外の世界に目を向けた最初の世代であると同時に、自分たちの業績をSNSでアピールするようになった最初の世代。国際ガイドの資格を取得し、海外遠征の経験も豊富。英語や中国語、ウルドゥー語を話し、国際感覚や社会性といったバランスも持ち合わせている。

・石川さんがシシャパンマ登山中、アンナ・グトゥとジーナ・ルズシドロ、2人の登山家もシシャパンマ山頂を目指した。たが双方のルート上で雪崩が発生し、彼女たちと同行のシェルパ、合計4名が亡くなった。2人は「アメリカ人女性初の14座登頂」の栄誉を賭けて、競争するように登っていたという。

(石川さんはこの時の状況を本に書く予定)

・石川さんが初めてヒマラヤを目指した20数年前、8000m峰に登るのは年に1度が一般的だった。お金も時間もかかるし、準備も大変だった。

数年前、ネパール人登山家ニルマル・プルジャが14座全てを7ヶ月で登るという人類最速の記録を打ち立てた頃から、高所に順応した体ができたら連続して8000m峰に登っていく方法がポピュラーになった。

・これまで8000m峰全14座に登ってきた人たちが、いくつかの山で頂上を間違えていたことが最近になって仔細に検証され、わかりはじめた。

ドイツの山岳史家エバーハルト・ユルガルスキーが、今まで14座を登頂した人について、だれが本当の頂上に登ったのか、だれが登っていないのかを、昔の登頂時の写真などから全部調べ上げ、それを「8000ers.COM」というサイトでリスト化して発表した。

石川さんも、カンチェンジュンガとマナスルで「偽ピーク」に登頂していたことがわかり、改めて登り直したという。


この春インドのダージリンに行き、ネパール方面が見渡せる部屋で3泊粘った。でもカンチェンジュンガ峰8586mの頂は、ずっと雲の中だった。

石川さんが撮った8000mの世界が、見たい。写真展には必ず行こう。

Darjeeling India, March 2024


2024年11月15日

「魂の退社」

 

25年間勤めた新聞社を50歳で離れて、今月でちょうど10年になった。

世の中には、似たような人がいる。

「魂の退社~会社を辞めるということ」稲垣えみ子著 幻冬舎文庫

この本の著者もちょうど同じ頃、50歳で朝日新聞を退職した。8年前に単行本で一度読んだのだが、最近母から文庫版をもらって、今回も楽しく読んだ。

著者の稲垣さんは、自由気ままな独身女性。それでも退職を決める際は、かなり逡巡したという。私の場合は扶養家族があったので、当時としては思い切った行動だったかも知れない。

稲垣さんは退職時、ずいぶん会社から慰留されたらしい。

私の退職時は、誰ひとり引き留める人がいなかった。

…なんでやねん!

稲垣さんは給料に頼らない生活を始めるにあたって、「電気のない暮らし」を実践した。冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を使わない。室内の電気もつけない。夜に帰宅したら、玄関でしばらくじっとしている。

暗闇に目が慣れれば、ほとんど何でもできるという。

私といえば退職時、節約生活の代わりに、今まで以上に資本市場にどっぷり浸かる暮らし、つまり株式投資で生きていく方法を模索していた。

そして東京から移住した信州のわが家は、人里離れた森の中だ。いくら玄関でじっとしていても、何も見えてこない。稲垣戦術は使えないのだ。

彼女とはいろいろな面で正反対なのだが、読み進むうちに、思い切って退社した時の懐かしい気持ちがよみがえって来た(以下、本書より引用です)。

「高い給料、恵まれた立場に慣れきってしまうと、そこから離れることがどんどん難しくなる」「その境遇が少しでも損なわれることに恐怖や怒りを覚え始める」「その結果どうなるか。自由な精神はどんどん失われ、恐怖と不安に人生を支配されかねない」

「雇われた人間が黙って理不尽な仕打ちに耐えるのは、究極のところ生活のためだ。つまりはお金のためだ」「会社で働くということは、極論すれば、お金に人生を支配されるということでもあるのではないか」

「『お金』よりも『時間』や『自由』が欲しくなった」

「退職金の一部は税金の支払いを控除されるのだが、この控除額は、勤続年数が長いほど増える」「つまり、会社から自主的に自立、独立する人間には国家からペナルティーが科されるのである」

「失業保険はなんと、別の会社に就職しようとしている人だけが受け取ることができるのであり、個人で独立して生計を立てようとしている人間には受給資格がない」「会社員にあらずんば人にあらず」「国までもが会社に属さない人間に『懲罰』を科してくるのである」

 あの頃は、退職後の日々がこんなに充実するとは想像もできなかった。

会社を辞める時に背中を押してくれた亡妻のためにも、これからもハッピーに暮らそう。


Musee d'Orsay Paris 2024


2024年11月8日

大統領は自己愛性パーソナリティ

 

あっさりと…

本当にあっさりと、アメリカの大統領が「あの人」に決まってしまった。

 

「自己評価が過剰に高く、他者からの称賛を欲するが、異常なほど自信がなく、自己の失敗を認めない性格の持ち主」

元外務官僚の宮家邦彦氏によれば、「あの人」はアメリカ精神医学会の分類における「自己愛性パーソナリティ症」では?という説があるらしい。「真偽は不明だが、1期目のトランプ政権を見れば実に説得力がある」見方だという。

少なくとも日本と日本人にとって、「あの人」が大統領になることのメリットはひとつもない気がする。

でも宮家氏によれば、よいニュースもないことはない…らしい。

以下、日経ビジネス電子版に載った氏の分析記事を、一部紹介します。

 

・今回の選挙は、トランプ氏が勝利したというよりは、現職副大統領であるハリス氏が敗北したと見るべき。ハリス氏の敗因は、インフレや住宅不足などの経済問題

・中国との競争では、中国を抑止する力を日米が共同で強化していくことが大切。だがトランプ氏にそのような問題意識があるかどうかは疑問。氏は安全保障について、米国の国益よりも、同盟国の国益よりも、同盟メカニズムの利益よりも、トランプ氏個人の利害を優先する

・自国に世界最強の軍隊がありながら、その指導者が軍事力の使い方を知らず、軍事力行使の有無を個人の利害や好みに応じて決めること自体、驚くべきこと。そして中国は、そのことを熟知している

・トランプ氏は外交よりも内政、特に自己の名誉回復に最大の政治的精力を傾注する可能性が高い

・よいニュースが全くないわけでもない。トランプ氏は曲がりなりにも4年間、米国大統領職を経験している。生来の癖や性格は変わらないにしても、1期目ほど予測不能な統治は行わないのではないか、という淡い期待がある

・仮にトランプ氏が変わらないとしても、トランプ氏の側近やスタッフの多くはトランプ式意思決定に慣れているはず。彼らの多くはトランプ氏の性格を逆手に取りつつ、米国にとって望ましい政策を不完全ながら立案実行してきた

・日本政府の外交当局にも、第1期トランプ政権とやりとりした有能な人材が残っている。そしてトランプ政権側の関係者も、中国との競争を勝ち抜くためには日米関係が重要であると理解している

 

今回の選挙は「あの人」の圧勝だった。これはアメリカの有権者の意思であり、民主主義である以上、その意思は尊重されなければならない。

「あの人」が勝利宣言した朝、わが家は雪が舞った。



2024年11月1日

宴の後は…

 

朝の気温が1℃だった八ヶ岳の森から、「特急あずさ」で暖かい東京へ。

備忘録代わりに、2日間の滞在で食べたものの写真を載せておこう。

 

1日目のランチ:亡妻のいとこ主催のパーティーで、恵比寿のフランス料理

1日目のディナー:大学時代の友だちと、恵比寿のネパール料理

2日目のランチ:バンコク駐在時代の香港支局長と、銀座で中華(飲茶)

2日目のディナー:前の会社の同僚と、銀座のレバノン料理

 

ふだんは玄米と納豆で生きてるのに、アポを詰め込み過ぎてこんなことに…

お腹壊すかと思ったけど、なんとか持ちこたえた。

 

しっかし、トーキョーは何でもありますなぁ。

安くてヘルシーなレバノン料理は、バンコクやロンドンでさんざんお世話になった。フムスやファラフェル、タジン鍋など、野菜中心の優しいお味。

このレバノン料理だけが自分のチョイスで、それ以外は一緒に食べた方々が選んでくれた店だ。

皆さんグルメだから、外れのない、さすがのおいしさだった。

でも、森の家に戻って作った玄米、キムチ納豆、信州みその味噌汁の「一汁一菜定食」が、これまた五臓六腑に染みわたるようで…

堪りません!






2024年10月25日

怪しい日本人を量産する方法

 

わが家は、市街地からかなり離れた森の中にある。

こんなへき地まで新聞を配達して頂いて、申し訳ない!

…と、思っていたら、今年から新聞が「郵送」されるようになった。

夕方になってから、3日前の新聞が届く。なんとなく読む気になれず、どんどん積み上がっていく。気がつけば世間様からも遠ざかり…私の中では、最近やっと政府与党のトップ(=次の首相)を選ぶ決選投票が行われたところだ。

ひと月前の新聞によると、争点のひとつが「選択制夫婦別姓」。自民党総裁選の決選投票に残った男性候補者は賛成派で、なぜか女性候補者の方が反対しているらしい。

この国では、結婚時に改姓する95%が女性なのに…

不公平を被る側が、なぜ反対する?

男性ながら改姓を経験したサイボウズの青野慶久社長は、「日本人と外国人の結婚では夫婦別姓を選べるのに、日本人同士だと選べないのは違憲では?」と言う。

(以下、日経ビジネス電子版の記事の一部を紹介します)

・日本で法律婚をすると、改姓する人は免許やパスポート、クレジットカード、銀行口座などの名前を変える作業が発生する。平日に有給休暇を取らないとできない作業もある

・会社内でも、名前を変える作業が発生する。変えたくない場合は今までの名前(通称)を使えるが、手続き上は新しい姓名を使うので、人事や経理などのバックオフィスは二重管理しなければならない

・よく問題になるのが海外出張。通称ではなく新姓で取らないと飛行機に乗れないし、ホテルにも泊まれない。女性が当たり前に海外出張る時代すに、無駄な仕事を増やしている

・海外に行けば、パスポートとクレジットカードが身分証代わり。それと一致しない名前を使うのは、外国人にとってはとても怪しい行為。通称を使えるようにしようというのは、怪しい日本人を量産しようとしている、ということ

・本当に通称を世界のどこでも使えるようにするのであれば、選択的夫婦別姓にしない理由は何なのか。何を守りたくて通称にしようとしているのか

・衆院議員全体における選択制夫婦別姓の賛否を見ると、賛成56%、反対27%。多数決であれば成立するはずなのになぜ可決しないかというと、自民党内で党議拘束を外さないから。賛成か反対か、いつまでたっても決まらない

・選択的夫婦別姓を進めるためには、自民党のメンバーを入れ替える必要がある。考えが古い人や宗教団体と癒着している議員がたくさんいるから進まない

・そういう国会議員に票を入れている日本国民にも問題がある。これは選択的夫婦別姓の問題だけではなく、日本が21世紀に向けて本当に変われるかどうかの問題

Flower market, Kolkata India 2024


2024年10月19日

愛着に苦しむ人たち

 

「愛着障害」

愛着障害は、本来「安全基地」として無条件の愛情と世話で子どもを守ってくれる養育者(通常は母親)が、「安全基地」としての役割をうまく果たせないことによって生じる。

最近の研究では、母親との不安定な愛着を示す子どもは人口の3割以上。大人になっても、精神面、健康面で深刻な影響を引きずるという。

 「愛着障害と複雑性PTSD」 岡田尊司著 SB新書

この本では、歴史に名を残すような人たちも愛着の問題を抱えていたことが、精神科医の著者によって明かされている。一部を紹介します。

Mの場合】

父親は誰だか不明。母親は錯乱を起こして精神病院に入院。その間Mは、孤児院と里親の間を10回も行き来して育つ。里親の元では性的虐待を受ける。

16歳で最初の結婚をしたMは、離婚と結婚を繰り返し、妊娠中絶すること13回。

女優として世界的な名声を得るも、36歳で睡眠薬のオーバードースで死亡。

Mとは、あのマリリン・モンロー。モンローは「知性とは無縁のセックスシンボル」というイメージと異なり、大変な読書家だったという。孤児院や施設で育った人は、読書に救いを見出すのだ。

Hの場合】

Hの両親はともに熱心な宣教師。わが子に対して、自然な情愛より聖書の教えに忠実であることを求めた。親の期待や基準ばかり押し付け、それに応えられないHを否定的に見下し、ついには児童相談所に放り込む。

親との確執は成人後も続き、Hは慢性的な希死念慮に苦しんだ。

Hとは、「車輪の下」などで青春期の苦悩を描き続けた作家のヘルマン・ヘッセ。

Yの場合】

Yは裕福な家庭に生まれたが、愛情に欠けた自己愛的な母親に育てられ、不安定な愛着しか育めなかった。長じて結婚したYは夫以外の何人かの男性と関係を持ち、中絶を繰り返す。睡眠薬で自殺を図り、精神病院に入院した。

このYとは、3人めの夫としてジョン・レノンと結婚、前衛芸術家・社会活動家として知られるようになったオノ・ヨーコのことだ。

Tの場合】

Tの母親はお嬢様育ちの上に作家志望で、子育てにまったく関心がなかった。幼いTをひもに結んで柱につなぎ、ひとりで遊ばせた。さらに父親は母親以上に子どもに無関心で、Tの弟が2歳で亡くなった時も、仕事を中断しなかった。

そして母親は、不倫相手と同棲を始めた。

Tとは「太陽の塔」の制作で知られる芸術家の岡本太郎。母親は小説家の岡本かの子。父親は漫画家の岡本一平だ。

 

子どもの頃の過酷な体験が元で、その後も対人関係に苦しみながらも大事を成し遂げた人たち。逆境を乗り越える中では、大変な苦労があったことと思う。

National Portrait Museum, London 2024



2024年10月11日

無節操な読書でもOK!

 

ほんの出来心で、いま心理系大学院を目指している。でも受験勉強にも飽きて、町に出て本を10冊、衝動買いした。

「流出する日本人」「世界は経営でできている」「日ソ戦争」「愛着障害と複雑系PTSD」…ノンフィクション系が多いが、ジャンルはバラバラだ。こんな乱読じゃイカンなぁ、と思っていたら、ネットにこんな記事があった。

「無節操なインプットが強力な『知的戦闘力』を生む」

自分にとって都合のいい話は、すぐ目に入ってくる。これを心理学用語で「知覚的鋭敏化」というらしい。

以下、記事の一部を紹介します(日経ビジネス電子版「知的戦闘力を高める独学の技法』の著者、山口周氏インタビューより)

・人生全体で見れば、アウトプットの量とインプットの量は同じ。インプットせずにアウトプットしていれば、どこかで枯れてしまう

・アウトプットがぱったりと枯れてしまう人がいる一方で、長期間にわたってアウトプットの質・量を維持できる人(斎藤孝氏や内田樹氏など)がいるのは、人生のどこかでインプットし続けている時期があるから

・アウトプットが一時的にウケて、次々と仕事が舞い込んだ状況でインプットのために勉強するのは機会費用が大きい。その時間を執筆や講演に使えばお金になるのに、インプットのための勉強はお金を生まないから

・機会費用を小さくするには、まだ誰からも「本を書いてほしい」「アドバイスをしてほしい」「手伝ってほしい」といわれていない時期、時間が腐るほどあるという時期に、思いきりインプットする

・そして「アウトプットが必要になったとき」というのは、もう「舞台に立て」といわれているわけだから、そこで勉強をしているようでは、どうしても付け焼き刃的な知識の表面的なインプットにならざるを得ない

・他者からアウトプットを求められる時にその人らしいユニークな知的アウトプットを生み出せるかどうかは、無節操なインプットの蓄積による。若いときの無目的で無節操な勉強こそ、継続的に知的生産力を維持するためには重要

・でも「心地良いインプット」には要注意。「共感できる」「賛成できる」ような心地よいインプットばかり積み重ねると、同質性の高い意見や論考ばかりに触れることになり、知的ストックが極端にかたよって独善に陥る

・どんなに知的水準の高い人でも「似たような意見や志向」を持った人たちが集まると、知的生産のクオリティは低下してしまう。多様な意見のぶつかり合いによる認知的な不協和が、クオリティの高い意思決定につながる。これは個人の知的ストックにおいても同様

・キャリアカウンセリングをする際、「好きなもの」よりも「嫌いなもの」を聞いた方が、その人のパーソナリティの深い部分に入り込めることが多い。本を読んで強い反感や嫌悪感を覚えたときは、そこをメモしておこう。後でいろいろな気づきにつながることになる

The Notting Hill Bookshop, London 2024


2024年10月4日

美意識を鍛える

 

ニューヨークのメトロポリタン美術館で、早朝に行われるギャラリートーク。

これまで参加者は旅行者や学生ばかりだったが、最近はスーツ姿の知的プロフェッショナルが目立つという。

なぜ彼ら彼女らは、出勤前の多忙な時間を割いてまで美術館に通うのか? 

「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」山口周著 光文社文庫

本書によると、それは「犯罪を犯さないため」なのだという。

 内容の一部を紹介します。

・昨今の日本企業でコンプライアンス違反を主導した経営幹部の多くは、有名大学を卒業して大企業に就職したエリートたち

・高い業績を上げる人材は達成動機が強いが、高すぎる達成動機を持つ人は「達成できない」という自分を許すことができないため、粉飾決算などのコンプライアンス違反を犯すリスクが高い

・地下鉄サリン事件で有罪判決を受けたオウム真理教の幹部は、東大医学部卒などの超高学歴者。オウム真理教ほど「偏差値は高いが美意識は低い」という日本のエリート組織が抱える闇をわかりやすい形で示した例はない

・オウム真理教に似ているのが戦略系コンサルティング業界と新興ベンチャー業界。昇進の条件に人望や見識といった情緒的な側面はほとんど含まれない。「生産性」だけが問われ、美意識が問われない。問われるのは「早く結果を出すこと」

・ナチスドイツで数百万人のユダヤ人虐殺を主導したアドルフ・アイヒマンは、裁判で「自分は命令に従っただけ」と徹底して無罪を主張した

・「彼(アイヒマン)の最も恐るべき点は、自白によってすべてを語ったのちでも、心から無罪を信じて、それを主張しえたことである。再び同じ状況になれば、彼がまた同じことをすることは明らかである。私たちもするだろう」__エーリッヒ・フロム

・絶対善と考えられる「誠実さ」という概念は、その拠り所となる規範次第で、極め付きの犯罪行為を駆動させる動力源になりうる

・グーグルの社是は「Don’t be Evil(邪悪にならない)」

・偏差値は高いが美意識が低い人に共通するのが、文学を読まないこと。古代ギリシャ以来、人間にとって何が「真・善・美」なのかを純粋に追求してきたのが、宗教と近世までの哲学。そして同じ問いを物語の体裁をとって考察してきたのが、文学

・アメリカ陸軍が現在の社会を表現するために作った言葉が「VUCA」。現代はVolatile(不安定)で、 Uncertain(不確実)で、 Complex(複雑)で、Ambiguous(曖昧)。このような状況の中で、古典的な問題解決アプローチは機能しない

・これまでのサイエンス重視の意思決定から、これからは自分なりの美意識に照らして判断する態度が必要になる

Musee du Louvre, Paris 2024


 

2024年9月27日

failures of kindness

 

猛暑の8月、東京で小学校の同窓会に出た。

「そういえば昼休みに、みんなで卓球したよね」と、誰かが言った。

その時、半世紀も前のある情景が、脳裏によみがえった。

 

2度目の転校で入ったその学校には、卓球台があった。10数人で台の周りをグルグル回り、自分が1回打ったら反対側に回る、という遊びを繰り返した。

失敗した子は輪から外れる、というルールだ。なるべくラリーが長く続くよう、みんなで相手が返球しやすい山なりの球を打った。

クラスにひとり、地味で大人しい女の子がいた。仮に、その子の名をナナちゃんとしておく。

悪ガキ男子たちは、ナナちゃんにだけ容赦ないスマッシュを浴びせて、真っ先に遊びの輪から外した。

ナナちゃんの、困ったような、悲しげな笑顔を思い出す。そして誰あろうこの自分も、彼女にスマッシュを浴びせた悪ガキのひとりだった。

どうしてあんなことをしたんだろう、と思う。今になって謝りたいと思っても、たとえ連絡がついたとして、彼女は絶対にここには出てこないだろう。

 

英語圏で最高の短編作家と称されるジョージ・ソーンダースは小学生の時、転校してきた女の子がいじめられるのを傍観してしまった。そして42年後、彼は米シラキュース大学の卒業式で、こんなスピーチをした。

 Looking back, what do you regret?

人生を振り返って、あなたが後悔していることは何ですか?

What I regret most in my life are failures of kindness.

わたしが人生でもっとも後悔しているのは、「やさしさがたりなかった」ということです。

Kindness, sure, but first let me finish this semester, this degree, let me succeed at this job, and afford this house, and raise the kids, and then, finally, when all is accomplished, I’ll get started on the kindness.

やさしさ、いいね、でもまずはこの学期を済ませてから、この学位を取ってから、この仕事で成功してから、この家を買えるようになってから、この子どもたちを育ててから、そして最後にすべてを達成したら、やさしさに本腰を入れよう。

Except it never all gets accomplished. It’s a cycle that can go on...well, for ever.

ただ、すべてが達成されることは決してないのです。次々と目標が生まれ、永遠に終わりません。

But as you do, to the extent that you can, err in the direction of kindness.

でも、そういうことをやりつつも、できるだけ、やさしさから遠ざからないようにしてください。

Because, actually, nothing else does.

なぜなら、実際、それ以外のことは意味がないからです。


__外山滋比古・佐藤由紀訳「人生で大切なたったひとつのこと」海竜社より 

Musee Magritte, Bruxelles 2024


2024年9月20日

フラストレーション攻撃仮説

子どもの心の中って、いったいどうなってるんだろう?

8月のある日、サマーキャンプに来た東京の小学生と森遊びをしていた。

ここ自然学校の森には、木と木の間に張り巡らした長さ20mほどのロープブリッジがある。ゆらゆら揺れる、スリル満点の綱渡りだ。

子ども10数人が2チームに分かれて、両端からよーいドンでスタート。行き会った所でジャンケンして、負けた方はロープを降り、自陣に戻る。勝った方はそのままロープ上を進んで、2番目の相手とジャンケンする。

そうやってジャンケンを繰り返して、先に相手の陣地に到達した方が勝ちだ。

揺れるロープ上でバランスを崩し、戦う前に落ちてしまう子もいたりして、毎回かなり盛り上がる。

 森に歓声が響く中、女の子がひとり、ゲームに加わろうとしない。こちらに背を向け、しゃがんで泣いている。名前も知らない他の班の子だ。

何度か、「一緒に遊ぼうよ!楽しいよ~」と声を掛けた。

しばらくゲームの審判をしていると、その子が近づいてきた。

いきなり、殴られた。蹴られた。

頭突きまで食らった。

まぁそこは小学生、痛くも痒くもないゾと言いたいところだが…力いっぱい繰り出してくるパンチやキックは、かなり痛い。

…彼女の小さな体の中には、家庭や学校でのストレスがマグマのように溜まっていて…それをうまく言葉にできなくて、体で表現してるのかな。

そんなことを考えながら、人間サンドバッグになっていた。

 帰宅して心理学の概論書を読むと、このような子どもの攻撃行動には、次のような可能性が考えられるという。

   攻撃することが報酬獲得のオペラント行動として強化される(学習理論)

   他者が攻撃によって報酬を獲得する様子を観察した結果、代理強化による観察学習が成立している(これも学習理論)

   欲求不満が怒りを喚起し、攻撃行動を起こすフラストレーション攻撃仮説(家庭で親に構ってもらえない、学校で友だちからいじめられるなどの欲求不満を経験する一方、フラストレーション耐性を十分に獲得していないから、私に八つ当たりした)

   報復・制裁・挑発・防衛など、他者との関係において攻撃を利用(私の気を引くために、わざと怒らせようとした)

   死の本能(タナトス)の投影による外的対象への攻撃(親との対象関係が未熟で、死の本能による自己破壊の衝動があり、それを私に投影した)

いま考えても、やっぱりあれは③だったんだろう、と思う。

それにしても臨床心理士って、ずいぶん理屈っぽいこと考えてるんだなぁ。 



2024年9月13日

緊急地震速報は子守唄

 

あの晩、母が暮らす実家の留守電には、7件の録音が残されていた。

ピーッ。

「〇〇病院、夜勤看護師の△△です。お伝えしたいことがありますので、大至急お電話ください!」

ピーッ。

「もしもし? もしもし? もしもーし!」(姉の声)

ピーッ。

「もしもし~、オーマ(←母のこと)起きて~! 寝てる場合じゃないよ~!」(甥のとんちゃんの明るい声)

ピーッ。

「ジャラン、ジャラン! 緊急地震速報です! 強い揺れにご注意ください!」(とんちゃんがYouTubeから拾った「緊急地震速報」の音源が、大音量で流れる)

ピーッ。

「ジャラン、ジャラン! 緊急地震速報です!」

ピーッ。

Y子ぉ~~~(←母の名前)、起きろ~~~!」(とんちゃん)

「ダメだこりゃ」(同)

ガチャン!

ピーッ。

 何よりも寝ることを人生の楽しみにしている母は、父の容体が急変したあの晩もまた、白河夜船。

緊急地震速報などものともせず、爆睡していたらしい。

そして翌朝。小鳥のさえずりで目覚めた母が、あ~よく寝た~!と軽くひとつ伸びをして、リビングの掃き出し窓を開けた、ちょうどその時。

未明の病院に駆けつけて父の死亡診断に立ち会い、葬儀の打ち合わせも終えた姉一家が、徹夜の赤い眼を腫らして、なだれ込んできた。

そこで初めて、母は事の次第を知ったのだった…

 コロナや肺炎に感染して入院した89歳の父は、感染拡大のあおりを受け、ずっと私たち家族との面会が叶わなかった。

3週間後にようやく相部屋から個室に移り、面会が許された。さっそく見舞いに行った母は、父とゆっくり、ふたりだけの時間を過ごすことができた。

それが、亡くなる前日のこと。

父はこの世に思い残すことがなくなり、母も安心して熟睡したのだと思う。

60年連れ添った夫婦の、あうんの呼吸みたいなものを感じた。

(若い主治医の先生の話では、父はあと2週間は大丈夫ということだったが…いずれにせよ、私たちに覚悟はできていた)


 今年と同様に厳しい残暑が続いた、去年の今ごろの出来事である。

Varanasi India, 2024


2024年9月6日

女王様

 

戦い終わって、日が暮れて。

今年のサマーキャンプにも、本当にいろんな子がいた。

キャンプ3日目のハイライト、北八ヶ岳登山。鬱蒼とした樹林帯を頂上直下まで登れば、待ちに待ったお弁当の時間だ。

岩に腰かけて、リュックからコンビニおにぎりを取り出す。

そこに、別の班のリオコが駆け寄ってきた。

「ビニール取ってあげる!」

かわいい手で、おにぎりのビニールを器用にはがす。

そして半分に割ると、片方を自分の口に押し込んで、ニコニコしながら走り去った。

ああ…

ぼくの大好物の、明太子おにぎりが。

 

子どもとのコミュニケーションを学ぼうと、「アサーション・トレーニング」(平木典子著、日精研)という本を読んでみた。

アサーションは、相手を大切にしながら自分の考えを率直に伝える「自他尊重」の表現方法。黒人や女性、LGBTや先住民など、70年代のアメリカで社会的弱者だった人たちの権利擁護が、そのルーツだという。

そしてアサーティブな自己表現とは、①その場を客観的に描写し、②自分の主観的な気持ちを伝えて、③特定の提案を行う、だそうだ。

従ってこの場面で取るべき態度は、「①リオコさんが、ぼくのおにぎりを半分食べようとしています②でも、ぼくだってお腹が空いているんです③せめて食べるのは4分の1にしてもらえないでしょうか」と主張することらしい。

よし、来年の夏までに練習しておこう。

…ぐだぐだ言ってる間に、またリオコに全部食われそう。

 その本には、ある家裁調査官の手記も載っていた。少年鑑別所で35年以上、非行少年たちの幼少時の記憶を聞いてきたが、母親や父親との思い出がほとんど出てこないという。

ほぼ例外なく、放任型の養育態度の家庭で育っている。

そうやって親に大切にされなかった少年は、小学校に入っても、教師などの大人と親密な関係を築くことができない。そして中学校に進学すると、万引きなどの非行に走る。親からは叱責され、教師からは指導される。

そしてますます、大人への反抗が増えていく…

 

東京からサマーキャンプにやって来る小学生は、親から大切にされているのがわかる。女王様とやんちゃ坊主ばかりだが、その笑顔には一点の曇りもない。

そのまま、すくすく育ってくれや。

おにぎりの恨みは消えないけど。



2024年8月30日

ウン〇は漏らしても、子は宝

 サマーキャンプ3日目の、爽やかな朝。

1年生の男の子が「パンツの中にうんちしちゃった~」と、いきなり爆弾発言! 大慌てで替えのパンツを探して彼のリュックを漁ると、中からオムツの束が出て来た。

オムツ交換までぼくらがやるのなら、追加料金もらいたいよな~

そんなハプニングはあったものの、今年も150人全員、無事に親御さんの元に返すことができた。うんちは漏らしても、この国にとって、子は宝である。

 

ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏が、「国家滅亡級の少子化が進む根本原因」と題してプレジデント・オンラインに寄稿している。

御年81歳の大前さん、相変わらず冴えてる~! 一部を紹介します。

・戦前の日本では、きょうだい10人という家庭が珍しくなかった。子どもをたくさん産んで早く働かせようとした。子どもは家計を支える労働力だった

・今、子どもは親の生活を支える存在から、自分の将来のために親の金を使う“金食い虫”に変わった。子どもが投資対象になれば、産む人数を絞って一人当たりの投資額を集中させた方が有利。だから先進各国で少子化が進んだ

・人口はそのまま国力につながる。生産年齢人口が減れば、国家は衰退する

・フランスの合計特殊出生率は1.83、スウェーデン1.66。日本は1.30

・日本の低出生率を考える上で避けて通れないのが、未婚化。未婚化が進んだ背景の一つは、男女間の経済格差の縮小

・女性は、自分より年収が150万円程度多い男性との結婚を望む傾向がある→女性から見れば「希望に沿う相手がいない」、男性から見れば「女性に相手にされない」という状況

・日本では、男性の方が高収入でなければ格好がつかないという意識がいまだに根強い。女性が多く稼ぐと、夫婦関係もうまくいかなくなる。その意識を根本から変えないと、未婚化は改善しない

・またフランスやスウェーデンでは、生まれてくる子の5~6割が婚外子(婚姻関係にない男女から生まれた子)。それに比べて日本は2%。この国には、婚外子への差別がある

・フランスやスウェーデンは戸籍制度を撤廃した。父親が誰であろうと、母親が子を産めば親子関係は証明できる。一方、日本の戸籍制度は慣習的に父親中心で、未婚のまま父親の戸籍に入らなければ法的に不利を被り、社会的にも差別される→「非嫡出子」

・移民大国アメリカの合計特殊出生率は1.64。ドイツ、カナダ、オーストラリアも、移民の受け入れで出生率を下支えしている

・自民党の一部や右翼勢力は国粋主義的で、移民の受け入れに反対している。父系社会と日本人の純血を守れれば、少子化で国が滅んでもいいと考えている

・政府は「異次元の少子化対策」を言う前に、父系社会の象徴である戸籍制度を撤廃する「ごくふつう」の少子化対策から始めなくてはならない



2024年8月23日

サマキャン3日目のプッツン

 

あ~、またやってしまった。

サマーキャンプ3日目のプッツン。

今回の現場は男子テント。その朝も、テント内はありとあらゆるモノが散乱して、足の踏み場もない。あと30分で迎えのバスが来るというのに。

早く全員のリュックに荷物を詰めて、テントを畳まなくては…

あぁそれなのに、ギャングエイジの悪ガキどもは、今日もいたってマイペース。「このパジャマ誰の?」「この懐中電灯は?」と聞いても、そっぽ向いて「ぼく知らない」。

そのうち1年生のあおくん(ひとりっ子)が、

「ボクちゃんの帽子がない~」と騒ぎ始めた。

「そのうち出てくるから、まず他のものから整理しようよ。このタオル誰の?この下着は?」「ボクちゃんの帽子どこ~? 帽子がないよ~、帽子帽子!」

他の男子は、ガン無視。こっちは寝不足と疲労でフラフラなのに…

つい、大声が出た。

テントの外で同僚が、「ホトケの宮さんがキレた」と喜んでいる。

(おんどれら何さらしとんねん! 下手に出りゃーつけ上がりやがって、なめとんのかワレ! いてこましたろかー!)

と、河内弁でまくしたてたら、さぞかしスッキリしただろうな~

でも私ごときが怒ったぐらいで、まったく効き目なし。そもそも、自分のことは自分でやろうという発想がない。家では全部ママがやってくれるのだろう。

結局みんなのママに成り代わって、彼らの荷物を全部ひとりでパッキングする羽目になる。

 

いつも他のスタッフに、「宮さんは子どもに優しすぎる」と言われる。

この前は小6の女子に、「宮くんは子どもに優しすぎる」と真顔で諭された。

そんなこと言われても、上手な怒り方がわからない。

子どもへの接し方って、本当に難しい。

 

サマーキャンプでは毎回、ホームシックになる子が出る。

日が落ちた頃、「ママに会いたい~」と言って泣き出す。男の子が多い。

こういう時は、我ながら冷淡だ。

何しろこちとら、生まれも育ちも日本国外。小学生の頃は、粗野で不潔なフ〇ンス人のガキどものサマーキャンプに、1か月単位でぶち込まれた。

「あ? たった2泊でママに会いたいだ? 勝手に泣いてろ」なのだ。

でも女の子がさめざめ泣いていると、話は別。放っておけない。

女性スタッフによると、半分は気を引くためのウソ泣きだというが…

あれが演技だとすると、女の子って生まれながらの名女優!

喜んで、だまされたい。優しく慰めてあげたい。

扱いが不公平?

世の中、そんなもんでしょう。

Yatsugatake Japan, summer 2024




2024年8月17日

ケンロウさんのこと

 

ヒマラヤの高峰、ダウラギリのベースキャンプ。

ケンロウさんのテントは、すぐ目と鼻の先にあった。

標高4800メートルの氷河上に張った、小さなテントで過ごす日々。夜は降るような星空の下で、気温は氷点下だ。人工音が一切ない、太古の静寂が周りを支配する。

「んごごー、ギシギシッ、んごごー、ギシギシッ」

枕の下では氷河が軋みながら、悠久の時間をかけて移動していく。

…いや、どうも違うみたいだぞ。

音の主は、隣のテント。ケンロウさんのイビキと歯ぎしりだった。

(…ったく擬音の多いやっちゃなぁ!)

まだ20代のその頃から、ケンロウさんが撮る山の写真は、構図や光線の使い方が素晴らしかった。版画家のお父さん、染色家のお母さんを持つ血筋ゆえか。センスのかけらもない写真を撮る報道カメラマンの自分とは、雲泥の差だ。

シスパーレ北東壁、ラカポシ南壁、ティリチミール北壁、カールンコー北西壁。

その後ケンロウさんは、「登山界のアカデミー賞」ピオレドール賞を2度も受賞する先鋭的なクライマー、「世界のナカジマ」になった。

(あの歯ぎしりケンロウがねぇ…感慨無量)

同時に、民放「イッテQ!登山部」やNHK「ヒマラヤ・グレートトラバース」などの撮影で、その類いまれな絵心を存分に発揮した。プライベートの山登りと仕事で、最近は、1年の半分以上はヒマラヤにいたんじゃないかと思う。

ケンロウさんを見かけるのは、もっぱらテレビ画面を通してになった。

去年の春、久しぶりに自分もヒマラヤを登れることになり、ケンロウさんに相談した。ロールワリン山群のラムドゥンピークという、あまり知られていない、そして我々の力量にぴったりな山を教えてくれた。

登山を終えたカトマンズで、久しぶりにケンロウさんに会った。相変わらず、テレビの仕事で何か月もネパールに入り浸っているとのこと。

「長女の小学校の入学式があるから、明日の便でちょっとだけ帰国します」

と、嬉しそうだった。

ケンロウさんとパートナーの平出さんの次の目標が、K2西壁だと知った時、この夏は緊張しっぱなしになるぞ、と思った。

岩壁そのものの危険度に加えて、今回は8611mという高さ。

ケンロウさんは、高所順応に時間がかかる体質のようだった。ダウラギリでも辛そうだったし、番組でサポートしたイモトアヤコさんには、「強いけど、誰よりも早く高山病になるのもケンロウさん」と突っ込まれていた。

パキスタンに向けて出発する前、松本の石井スポーツでサイン会を開いたケンロウさんに会った。

「ぼくも、もう40ですよ~」

相変わらずの、柔らかな関西弁。気のせいか、いつもより口数少なだった。


K2西壁では、何が起きてもおかしくない。

頭では、わかっていたつもり。

でも、本当にこんなことになるとは…



2024年8月9日

理想と現実

 

この夏もやって参りました、怒涛のサマーキャンプ月間!

東京の小学生が25人ずつ、6波に渡って自然学校の森に押し寄せ、2泊3日のテント生活を送る。

「リサちゃんは東京のどこに住んでるの?」「…南麻布」

参加費を値上げしたせいか、今年は富裕層の子弟が増えたようだ。

この春、移動教室や課外授業でたくさんの小学校を受け入れた。一部の教師が子どもたちに高圧的な態度で接するのを見て、少なからぬ違和感を覚えた。だからサマーキャンプでは、子どもたちを「小さい大人」として扱った。

「非指示的」に接し、「共感的理解」と「無条件の肯定的配慮」を心がけた。

我ながら、立派なリーダーだと思う。その結果どうなったか、というと…

無条件に、ナメられた。

食事の時はウチの班だけ、おしゃべりやいたずらで大騒ぎ。いつまで経っても食べ終わらない。あんまり急かしたくないしなぁ、と思っているうち、他の班が食器を片づけ始める。

「また宮さんの班がビリですか…」

前職は永田町のプライベートエクイティ・ファンドだという、切れ者キャプテン・なっちゃんの冷たい視線が、背中に刺さる。

「お願いだから早く食べてよ~」と小学生に懇願している自分が…哀れだ。

さらに悪いことに、私の班には「片づけられない女」が集まっていた。キャンプ2日目の女子テントは、ヘアバンドやら鼻をかんだティッシュやら、脱ぎ捨てられたパンツやらかわいい靴下の片方やら、が散乱した。

(あまりの凄惨さに写真を撮ったけど…非公開とします)

「キョウカさん、シャワーの順番が来たよ」と促しても、

「パジャマもタオルもなくした!」と言って、動こうとしない。

「この着替え、シホさんのでしょ」と1年生のシホに手渡したら、

「畳んで!」と、投げ返された。

「…また宮さんの班が、ビリですか」

切れ者キャプテン・なっちゃんの冷たい視線が、またもや背中に刺さる。

キャンプ最終日、シホが「6泊7日のサマーキャンプってないの?」と聞く。

「2泊じゃ足りない?そんなに楽しかったんだ、嬉しいね」「いや、ここにいる間はママに怒られなくて済むから」

子どもたちを新宿行きの特急あずさに乗せ、やっと自然学校に静寂が戻った。

「さっき、宮さんの班にいたあらたんのママから電話があったよ」

校長のまりさん(←親御さんからのクレームを一手に引き受ける気の毒な役柄)が、ボソッと言う。

「また苦情かと思ったら、ウチの子を1分でも長く預かっといて下さい!だって」

あぁやっぱり。あの小さい人たち、実は札付きのワルだったのね。

親子のさまざまな思いが交錯する、信州の森のサマーキャンプ…



2024年8月2日

好奇心夫と、感受性妻

 

「オーストラリアで英語教授法の博士号を取った小学校教諭」

「働きながらアメリカの大学院にオンライン留学して、修士号を取ったキャリアコンサルタント」

3月にセブ島英語留学した時の同級生は、超がつくほどの努力家揃いだった。

そして、この人も。

先日関西から遊びに来てくれた同じセブ仲間の女医ミワコさんは、大学の薬学部を出ていったん会社勤めしたものの、一念発起して医学の道へ。

薬剤師と医師、ダブルで資格を持っている。

今回、夫のエイイチさんにも会えた。彼も先月、同じセブ島の学校で4週間、英語漬けの毎日を送ってきた。

留学初日に「あなたの英語学習の目的は?」と聞かれて、

「いやぁ、妻に強く勧められたもので(仕方なく)…」と答えたそうだ。

3人で森を散歩していたら、エイイチさんが電光石火の早業でセミの抜け殻を3つ見つけ、大事そうにタッパーにしまった。

エゾハルゼミ、という種類だそうだ。

エイイチさんは、昆虫や動物が大好き。今年は、17年に一度しか孵化しない珍しいセミを追って、米イリノイ州の森に分け入ってきた。会社勤めの傍ら、これまでにガラパゴス諸島やマダガスカルにも足を延ばした。

そしてこの冬、彼は南半球をぐるりと回る世界一周の船旅に旅立つ。誰もが名を知る有名企業の社員だが、100日間の休職が認められないと知るや、あっさり退職届を出してきた。

「地球温暖化で風景が変わる前に、この世界を見ておきたい。チャンスは今だけですから」

妻のミワコさんは、「私が働いて稼ぐからいいよ~」と、悠然としている。

今まで「セミ?うるさいなぁ」ぐらいの認識だったが、目をキラキラさせながら話すエイイチさんを見ていると、こちらまでワクワクする。

その翌日は、森の音楽堂へ。3人で葉加瀬太郎氏のコンサートを聴いた。ミワコさんが大ファンで、ファンクラブにも入っている。

今まで「ハカセタロー? あの、もじゃもじゃ頭のおじさんかぁ」ぐらいにしか思ってなかったが…

ステージから3列め、生演奏で聴く「アナザースカイ(ANAの機内曲)」や「情熱大陸」は、想像をはるかに超える素晴らしさ。葉加瀬さんが奏でるバイオリンの澄んだ音色に、涙が出た。

いくつになっても、好奇心と感受性を失っちゃあダメですね。

ミワコ夫妻から、大切なことを学んだ。

Cebu, Philippines 2024


2024年7月27日

「人生を変える読書」

 

「オペラント条件付け」「ピグマリオン効果」「認知的不協和理論」「多変量解析」「統計的仮説検定」「原始的防衛機制」「系列位置効果」…

言葉の意味、わかりますか?

先月105歳でスタンフォード大の修士号を取得したアメリカ人女性、B・ヒスロップさんに触発されて?この私も、某国立大大学院を目指して勉強中…

ま~ず一発では受からないと思うけど、

Whether you succeed or not is less important than doing your best.

ということで、ガンバリマス。

 

『人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える』の著者、多摩大学大学院経営情報学研究科教授・堀内勉氏のインタビューに唸ったので、日経ビジネス電子版より一部を紹介します。

・読書は孤独な行為と思われがちだが、実は人との出会い。どんな本にも必ず筆者がいる。つまり読書とは、本を書いたさまざまな人間との対話。自分の人生と照らし合わせて読めば、生きる糧になる

2400年前に生きたプラトンと直接会うことができなくても、本人が書いた本を読めば、プラトンの言葉に触れ“対話”することが可能。読書は絶対に会えないような素晴らしい人たちと、時空を越えて間接的に対話できる優れもの

・一人の人間が一生の間に実際に体験できることは限られている。しかし人生における体験を拡張するツールとして読書を活用すれば、疑似的に体験できる世界は、それこそ無限に広がっていく

・日本のビジネスパーソンは、いわゆるエリートといわれるレベルでは、世界的に見ても圧倒的に勉強が不足していると感じる。日本のビジネスパーソンは働きすぎなのだと思う

・仕事と勉強の比率は、仕事の方が圧倒的に多く、読書などを含む自己研鑽にほとんど時間を使っていない人が多い印象

・日本のビジネスパーソンは、“内向き”なことに時間を使いすぎ。それは日本の多くの企業の中に「組織に対する忠誠心の貯金」のようなものがあるから

・長時間労働、上司との飲み会、接待、ゴルフなどによって社内の忠誠心の貯金は増えていくが、残念なことにそれは会社から一歩外に出るとまったく通用しない「地域通貨」

・そのような生き方を否定するつもりは全くない。また組織そのものを否定しているわけでもなく、一人で生きていくことを推奨しているわけでもない。しかし、その集団にすべてをからめ取られてしまってもいいのだろうか

・自分の人生は自分で生きるしかない。他人の人生を生きることはできないし、他人に自分の人生を生きてもらうことも不可能

・読書を通じて優れた人物との対話を重ねることは、人間とは何か、自分とは何か、一度きりの人生を一人の人間としてどう生きたらいいのか、を考える力になる

…そうは言っても、受験参考書以外の読書はしばらくお預けだなぁ。

Varanasi, India 2024


肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...