早朝ジョギングに出かける時、ふと玄関先の温度計を見たら、マイナス10度。
今年は久々に、まともな冬になるかも…
砂利道に積もった雪が、踏むたびにキュッキュと音を立てて気持ちいい。
街に下りて勤務先の忘年会に出た夜、そのまま近くのホテルに泊まった。
すぐ隣は、大きな赤十字病院。夜中に何度も救急車のサイレンが聞こえた。
その病院は、地域のがん診療拠点病院だ。私がS病院で働いていた頃、ここで治療をやり尽くし、余命を告げられた患者さんが、わが緩和ケア病棟に移って最後の日々を過ごした。
その中の何人かは、田舎暮らしを夢見て、定年後に首都圏から移住してきた人だった。
田舎暮らしも元気なうちはいいが、いざ病気になると、医療の選択肢は限られる。そして、ここではクルマが生命線。夫が入院してしまうと、運転ができない奥さんは移動の足がなくなる。本人も家族も、本当に大変そうだった。
私が同じ都会からの移住組だと知ると、
「年を取ってからの田舎暮らしは、よくよく考えた方がいいよ」
と口々に言い残して、旅立っていった。
ホテル泊の翌日、農家の収穫祭にお呼ばれする。小さな集落の、白壁に屋号が刻まれた古い家で、ミネちゃん、シゲちゃん、ソエちゃん(揃って75歳、元気印の女性たち)と4人で食卓を囲んだ。
日本から出たことのない彼女たちにとって、カンボジア生まれ&フランス育ちの私と話すことは「異文化交流」なのだそうだ。
大きなすり鉢に山盛りのとろろ芋をメーンに、銀鱈の西京焼き、おでん、大根の皮とごぼうのキンピラ、漬け物各種。
炊きたての白いごはんは、目の前の田んぼで収穫したものだ。
ご馳走に舌鼓を打ちながら、立て板に水の如き女性たちのおしゃべりを聞く。
すると、いつも控えめで普段あまり笑顔を見せないミネちゃんが、
「毎晩、寝る時にいつも布団の中で、あぁ今日も幸せだった~って思うの」
といって、ニッコリ笑った。
特別、その日に何かハッピーな出来事があったわけでもない、という。
ただただ、幸せ。
発達心理学には、「エイジング・パラドックス」という言葉がある。高齢者は様々な衰退や喪失の経験を重ねるのに、なぜか幸福感が高いという。
また、「社会情動的選択性理論」によると、高齢者にはネガティブな情報を避け、ポジティブな情報に向かいやすくなる「ポジティブ選好性」が見られるらしい。
人間って、うまいこと出来てる!
願わくば15年後、自分もこの3人みたいに元気で、幸せな気分でいたい。
その後のことは…成り行き次第かな。あんまり考えないでおこう。
Varanasi India, 2024 |
0 件のコメント:
コメントを投稿