「行動する写真家」47歳の石川直樹さんが、ヒマラヤの8000m峰全14座の登頂に成功した。
登山装備の他に中判のフィルムカメラを担いで、山麓から頂上まで、写真を撮りながら登る。本当にすごいと思う。しかも記録を見ると、
2022年 ダウラギリ、カンチェンジュンガ、K2、ブロードピーク、マナスル
2023年 アンナプルナ、ナンガパルバット、ガッシャブルムⅠ、チョ・オユー
この2年間で9座に登っている。
当然、移動にはヘリコプターを駆使しているだろう。登山技術や体力に加えて、写真家には珍しく資金力もある人なのかな…
登山の様子はNHK特集でも放映されたが、活字メディアでは集英社.com に掲載された石川さんのインタビューが、質問者の問いかけが的確でよかった。
(以下、インタビューから垣間見えた現代ヒマラヤ登山事情です)
・以前のシェルパは、登山は仕事と考える人が多かった。登山シーズンが終われば故郷の村に戻り、ヤクを飼育したり、宿を経営したり。
だがイマジン・ネパール社のミンマ・Gら、最近の30代のシェルパたちは通年山にいる。春秋ネパール、夏はパキスタン、そして冬は別の海外の山へ。
彼らはヒマラヤから外の世界に目を向けた最初の世代であると同時に、自分たちの業績をSNSでアピールするようになった最初の世代。国際ガイドの資格を取得し、海外遠征の経験も豊富。英語や中国語、ウルドゥー語を話し、国際感覚や社会性といったバランスも持ち合わせている。
・石川さんがシシャパンマ登山中、アンナ・グトゥとジーナ・ルズシドロ、2人の登山家もシシャパンマ山頂を目指した。たが双方のルート上で雪崩が発生し、彼女たちと同行のシェルパ、合計4名が亡くなった。2人は「アメリカ人女性初の14座登頂」の栄誉を賭けて、競争するように登っていたという。
(石川さんはこの時の状況を本に書く予定)
・石川さんが初めてヒマラヤを目指した20数年前、8000m峰に登るのは年に1度が一般的だった。お金も時間もかかるし、準備も大変だった。
数年前、ネパール人登山家ニルマル・プルジャが14座全てを7ヶ月で登るという人類最速の記録を打ち立てた頃から、高所に順応した体ができたら連続して8000m峰に登っていく方法がポピュラーになった。
・これまで8000m峰全14座に登ってきた人たちが、いくつかの山で頂上を間違えていたことが最近になって仔細に検証され、わかりはじめた。
ドイツの山岳史家エバーハルト・ユルガルスキーが、今まで14座を登頂した人について、だれが本当の頂上に登ったのか、だれが登っていないのかを、昔の登頂時の写真などから全部調べ上げ、それを「8000ers.COM」というサイトでリスト化して発表した。
石川さんも、カンチェンジュンガとマナスルで「偽ピーク」に登頂していたことがわかり、改めて登り直したという。
この春インドのダージリンに行き、ネパール方面が見渡せる部屋で3泊粘った。でもカンチェンジュンガ峰8586mの頂は、ずっと雲の中だった。
石川さんが撮った8000mの世界が、見たい。写真展には必ず行こう。
Darjeeling India, March 2024 |
0 件のコメント:
コメントを投稿