わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。
現在の山岳部も、12人の部員を束ねる主将はナナコさんだ。
でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。
今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソラさんの場合、趣味は狩猟。仕留めたシカを自分でばらし、アパートの冷蔵庫はシカ肉でいっぱいだという。
夏に会った時、マソラさんが肉食女子だという最重要事項を忘れて、よりにもよってヴィーガン・インド料理レストランに連れて行った。
肉という肉が、すべて大豆ミート。
どうせわかりゃしないだろう…という願い空しく、食後の彼女はとても不満そうだった。
一世一代の痛恨事!
おまけに、小柄なのによく食べることも失念していた。去年一緒にヒマラヤ登山をした時、標高4000mの村でダルバート(カレーと野菜炒め、豆のスープにご飯がついたネパール定食)をお代わりしていた。
自分の胃袋を基準に、ものを考えちゃいけないな。
先日、絶好のリベンジの機会がやってきた。
親友のなっちゃんとやってきたマソラさんに、1泊3食、しこたま食わせた。
味はともかく、量に関してはご満足頂けたと思う。
そして、一部例外を除く「老若女女、甘いものに目がない」法則に従って、毎食後のデザートも欠かさなかった。
スイーツを前にした20代女子の、目の輝きといったら!
まるで、瞳に電飾がついているよう。
親友のなっちゃんはこの夏休み、北アルプスの山小屋に住み込みで働いた。
OBも泣いて喜ぶ、正統派大学山岳部員!
「山小屋でバイト中、何か面白いことあった?」
「そういえば、近くの登山道で60歳のおじいさんが低体温症で倒れて、間一髪で救助しました!」
60歳の…お、おじいさん…?
ボクってもう、おじいさんなのね。
ショック。
夜も更けて会話が途切れた頃、マソラさんが小声でつぶやいた。
「…でも何だかんだ言って、スーパーで普通に売ってる牛や豚、トリ肉が一番おいしいんですよね」
出たっ! ついに本音が!
冷蔵庫にいっぱいのシカ肉、がんばって食べてね~
ボク、手伝わないから。
Varanasi, India 2024(写真と本文はあまり関係ありません) |
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