2024年10月19日

愛着に苦しむ人たち

 

「愛着障害」

愛着障害は、本来「安全基地」として無条件の愛情と世話で子どもを守ってくれる養育者(通常は母親)が、「安全基地」としての役割をうまく果たせないことによって生じる。

最近の研究では、母親との不安定な愛着を示す子どもは人口の3割以上。大人になっても、精神面、健康面で深刻な影響を引きずるという。

 「愛着障害と複雑性PTSD」 岡田尊司著 SB新書

この本では、歴史に名を残すような人たちも愛着の問題を抱えていたことが、精神科医の著者によって明かされている。一部を紹介します。

Mの場合】

父親は誰だか不明。母親は錯乱を起こして精神病院に入院。その間Mは、孤児院と里親の間を10回も行き来して育つ。里親の元では性的虐待を受ける。

16歳で最初の結婚をしたMは、離婚と結婚を繰り返し、妊娠中絶すること13回。

女優として世界的な名声を得るも、36歳で睡眠薬のオーバードースで死亡。

Mとは、あのマリリン・モンロー。モンローは「知性とは無縁のセックスシンボル」というイメージと異なり、大変な読書家だったという。孤児院や施設で育った人は、読書に救いを見出すのだ。

Hの場合】

Hの両親はともに熱心な宣教師。わが子に対して、自然な情愛より聖書の教えに忠実であることを求めた。親の期待や基準ばかり押し付け、それに応えられないHを否定的に見下し、ついには児童相談所に放り込む。

親との確執は成人後も続き、Hは慢性的な希死念慮に苦しんだ。

Hとは、「車輪の下」などで青春期の苦悩を描き続けた作家のヘルマン・ヘッセ。

Yの場合】

Yは裕福な家庭に生まれたが、愛情に欠けた自己愛的な母親に育てられ、不安定な愛着しか育めなかった。長じて結婚したYは夫以外の何人かの男性と関係を持ち、中絶を繰り返す。睡眠薬で自殺を図り、精神病院に入院した。

このYとは、3人めの夫としてジョン・レノンと結婚、前衛芸術家・社会活動家として知られるようになったオノ・ヨーコのことだ。

Tの場合】

Tの母親はお嬢様育ちの上に作家志望で、子育てにまったく関心がなかった。幼いTをひもに結んで柱につなぎ、ひとりで遊ばせた。さらに父親は母親以上に子どもに無関心で、Tの弟が2歳で亡くなった時も、仕事を中断しなかった。

そして母親は、不倫相手と同棲を始めた。

Tとは「太陽の塔」の制作で知られる芸術家の岡本太郎。母親は小説家の岡本かの子。父親は漫画家の岡本一平だ。

 

子どもの頃の過酷な体験が元で、その後も対人関係に苦しみながらも大事を成し遂げた人たち。逆境を乗り越える中では、大変な苦労があったことと思う。

National Portrait Museum, London 2024



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