2015年4月19日

オダハラの賢人


 「えっ、銀行預金だけじゃインフレに勝てない? 株も持つべき? じゃあ何かいいカブの本あったら教えて」

カタギの友人に言われる。迷った挙句、

 「敗者のゲーム」チャールズ・エリス 日本経済新聞出版社

 をお勧めした。

 この本は1985年に初版が出て以来、アメリカで累計100万部が売れているカブ本の定番。私も、マルキール著「ウォール街のランダムウォーカー」、シーゲル著「株式投資」とともに愛読している。

このほど第6版が出た。人に勧めた手前、改めて読み返してみた。

 「仕事から引退した投資家が、心の平安を得るために債券を好むとすれば、彼らはその時、経済的利益よりも感情を優先させていることを自覚すべきだ」

 心中を見透かされたようで、ぎくりとした。今年78歳になるエリス先生、相変わらずアグレッシブでうれしくなる。

 「あなたと家族にとってより効率的な意思決定は、おそらく100%株式に向けることだ」

 「ポートフォリオのキャッシュ比率はミニマム、できればゼロでよい」

 「10年以上運用する資産はすべて株式に投資せよ」

 いやいや、実に威勢がいい。こういう楽観主義は大好き。悲観は気分の問題だが、楽観は意志の問題なのだ。

 私は小心者だが、なぜかマーケットの上げ下げには図太い。30代で将来に備えた株式投資を始めてから、円高不況、アジア通貨危機、ITバブル崩壊やサブプライム危機など、何度も暴落を経験したが、夜は熟睡できた。リーマンショックの時は、ポートフォリオの半分が吹き飛んだが、これも一時的と思えた。

根っからの楽天家なのか、ただ鈍感なだけなのか。たぶんシーゲルの本などで、アメリカ式投資教育を受けてしまったからだろう。いつの間にか、資本主義と市場経済の熱烈な信奉者になっていた。

新聞が「100年に一度の大不況」と騒ぎ立てていた2008年当時、哲学者の山折哲夫ひとり「これはただの景気循環」と喝破し、とても勇気づけられた。日本にも達観している人はいたのだ。

新聞記者はインサイダーの立場になりうるので、会社から株の売買を制限されている。私は、「売買」はいけないが、「買買」つまり、買ったら死ぬまで持ち続ければ問題ないだろうと解釈。投資信託のほかに、あのバフェット率いるバークシャー・ハザウェイ株を買い、永久保有銘柄にしている。

いつか「オマハの賢人」ならぬ「オダハラの賢人」と呼ばれたい。

 件の友人は、「勧められて読んではみたけど、やっぱりわからないや」と。そう言える人は、私ほど会社人生に行き詰っていないのだと思う。
バンコクの夕景

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