2015年4月12日

Stay Hungry, Stay Foolish


 アップル創業者スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学で行ったスピーチ。これまで youtube で800万回以上、繰り返し再生されている。

 そのうちの100回ぐらいは私だ。

 当時、ジョブズは50歳。ガンで一度は余命宣告を受けながら、手術で奇跡的に回復した時期だ。クビになった会社に経営者として復帰、私生活では結婚もして、この頃が人生の絶頂だったと思われる。ガンの再発で6年後に死ぬ運命にあることは、本人を含めて会場の誰も知らない。

 私はマック党ではなく、アップル製品は旧型 ipod しか持っていない。ジョブズが人間的に相当嫌な奴だった、という評判も聞いている。それでも、この15分間のスピーチには、私にとっては宝物のような言葉がいくつもちりばめられている。会社を辞めることを迷っていた時、夜中にひとりで何度も聞いた。

それまで報道の現場で働いてきた身に、中間管理職への昇進は、同僚の言葉を借りれば「まるで別の会社で働いてるみたい」なものだった。ひたすら社内にこもっての調整業務。仕事を覚えていくうちに、権限はないのに、責任ばかり問われることがわかってくる。誰かの役に立っている実感は全く得られず、自分が給料泥棒にしか思えなくなった。

それに、自分自身も成長している気がした現場での日々と違い、このまま中間管理職を続けて行けば、どんどんこの会社でしか通用しない人間になる、という焦りが募った。


プノンペンで
何度か上司にお願いした結果、降格同然ではあるが、管理業務を外れ、現場でも働けるポジションに替えてもらえた。ところが今度は、現場にも新鮮味を感じられず、ひたすら惰性で仕事をこなしている自分がいた。予想外のことだった。

今後10年15年、高給取ってモチベーションに欠けた働き方をすれば、若い人が迷惑する。この辺で何かを変えなければ、と強く思った。

 「毎朝、鏡の自分に問いかける。もし今日が人生最後の日だったら、これからやろうとしていることは、本当に自分がやりたいことだろうか」

 こうして自己流に和訳してみると、ジョブズの言葉は青臭く、ナルシスティックだ。それでも同じ50歳に差し掛かり、人生の残り時間を数えはじめた人間にとって、一度は死を覚悟したこの人の言葉は身に染みた。背中を押された。

スピーチの合間に映し出される聴衆スタンフォード大生の、なんとも能天気な表情。本気で拍手しているようには見えない。豚に真珠・・・私こそ、最前列で聴きたかった。

彼の締めくくりのひと言、

Stay hungry, stay foolish

これからも肝に銘じたい。


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