2015年3月15日

新しい職場で


 25年間働いた会社を辞め、同時に東京から地方都市に引っ越し、片付けもそこそこに今度は東南アジアに渡り、そして3か月後に帰国した。

日本に戻ってきたという実感はあるが、自分の街に帰ってきた気はしない。かといって、まだ旅の途中、という気分でもない。暑季が始まり、最低気温が25度を超えてきた街から、春とはいえ最高気温が10度そこそこの街へ移り、気候にもまだ慣れていない。

 新しい住まいは、畑と隣接したマンションの3階。北向きの洋室に机とイスを据え、念願の書斎を作った。ここを勝手に新しい職場に見立てて、毎朝食後、リビングから徒歩18歩の通勤をしている。

窓からは、住宅街の彼方に標高1000メートル級の山々が望める。見晴らしに満足して振り向けば、本や衣類、未整理の段ボール箱、月1回しか回収してもらえない「燃えないゴミ」の入った袋、などが乱雑に散らかっている。できるだけ机に向かい、後ろを振り返らないようにする。

新しい「職場」で何をしているかというと、生産的なことは全くしていない。確定申告の電子申請をしたり、確定拠出年金(DC)を会社から個人に移す手続きをしたり、企業健保を国民健保に切り替えるタイミングを調べたり。時間はたっぷりあるからいいようなものの、ペーパーワークの連続にはうんざりする。サラリーマンをやめて自立するということは、格段に雑用が増えることと自覚した。

それにしても、役所が作る書類やウェブサイトは、どうしてこんなにわかりにくいのか。重要なことと枝葉末節が、抑揚もなく同じ調子で並べてある。加えて、私に言わせれば、ネーミングが絶望的に下手くそだ。

「国民年金」と「国民年金基金」がまったく別物である件、今回初めて知った。DC移管の手続きで、まずここに引っかかり、書類が返送されてきた。書き直して再送すると、今度は口座引き落としの銀行で引っかかり(シティバンクはだめだそうだ)、また返送、書き直し。ダメ出しをするのは国、移管先は民間企業なので、書き直すための用紙は、そのたびに電話で請求しなければならない。私が事務処理能力に欠けるせいもあり、いつまでたっても終わりそうにない。

自分で税金関係の手続きをしていると、サラリーマン時代は感じなかった「重税感」をたっぷりと味わうことが出来る。収入がゼロなのに、住民税が月7万円、健康保険が月6万円、国民年金が月3万円・・・。前年度の収入をもとに計算されたり、これまで会社と折半して払っていたのが全部自分持ちになったり、そして私が会社人生における収入のピークで辞めたのも一因とはいえ・・・

これから1年ぐらい無収入を続け、来年はたっぷり「軽税感」を味わいたい、という誘惑に駆られる。
ラオス北部で

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