2024年2月16日

イギリスはおいしいか

 

イギリス家庭にホームステイすれば、フレアスカートの奥様が紅茶と手作りスコーンでもてなしてくれる…

なぁんて期待はしていないが…現実はキビシかった。

外出から戻った私が2階にいると、5時55分ごろ階下のキッチンで物音がし始め、そして6時きっかりにAC(←私の名前)! ディナー!!」

ハリス夫人が大きな声で呼んでくれる。

調理時間、およそ5分。

夕食はいつもキッチンカウンターで、丸椅子に尻を乗せてひとりで食べる。ガラ~ンとしたこの家には食卓もイスもないから、誰かと一緒に食べるのは物理的に不可能なのだ。夫人曰く、「ウチはモダンな家庭だからね」。

メニューはたいてい一皿で、「麺と同じ量のソーセージが乗っかったミートソースパスタ」だったり、その翌日が「肉あんかけ乗せ中華麺、でもなぜか前日のミートソースと味が同じ」だったりする。

また別の日は、茶色い焼きめしの上にカレーをかけたワンプレート。キッチンに残されたパッケージには「Curry rice Chinese style」とあった。

毎日、茶色っぽい。

日本の友人に写メしたら、「ほとんどジョークみたいな食べものだね」

キッチンはいつもピカピカだ。滞在中、一度も鍋やフライパンを見かけなかったから、電子レンジしか使わないみたい。ハリス家は共働きだから、スーパーの総菜や冷凍食品でもぜいたくは言えない。

私の食事中、ハリス夫人は居間のテレビでクイズ番組を見ている。「ご飯はこれから?」と聞くと、「私?適当にクッキーやチョコをつまむだけよ」

夫人より10歳は若そうなドレッドヘアの夫マイケルは、大量にストックしてある缶ビールとポテトチップスでカロリー補給している様子。

イギリス人家庭、恐るべし。

私に用意してくれる食事は、肉の量がすごい。とても食べきれないので、夫妻の愛犬ステラ嬢(3歳)に手伝ってもらう。「太るからあげちゃダメ!」と釘を刺されたので、夫人の視界の影でこっそりと…

でも興奮したステラ嬢の咀嚼音がすごくて、毎度ハラハラした。

完食(?)して「おいしかった、ご馳走さま!」と言い続けたら、夫人も満足顔。そのうち、別皿でサラダが付くようになった。

滞在終盤、珍しくハリス夫人が朝から圧力鍋を持ち出して、何か煮込んでいる。そして午後6時、サイコロ状に切った肉と野菜が山盛りの「英国風シチュー」が満を持して登場。いつものように茶色一色だが、今度こそ手作りだ。

期待に胸を膨らませて、最初のひと口。

ん…? 

やっぱり冷凍食品の方がいいかも。

ふと足元を見ると、お嬢が万全の態勢で待機している。

今夜もステラ嬢の全面協力を得て、「ぜんぶ食べました、ご馳走さま!」

St Pancras International, London


2024年2月10日

真っ赤な聞き間違い

 

ロンドンでのホームステイ生活、2日目の朝。
2階の寝室からリビングに下りると、半裸の男がソファに転がっている。

ハリス夫人の夫、マイケルだ。昨夜どこかに出かけたと思ったら、朝帰りしたらしい。水のボトル片手に「飲み過ぎた、頭いてぇ」と唸っている。

お腹も背中もタトゥーだらけ!

 

2週間のパリ滞在を終え、ユーロスターでドーバー海峡を潜ってロンドンへ。ロンドン滞在では、留学エージェントにホームステイの手配をお願いした。

受け入れてくれたのは、ハリス夫人一家。夫のマイケル、愛犬ステラ嬢(3歳)と共に暮らしている。去年、還暦の記念にハワイへ行ったという。

ロンドン中心部から地下鉄で30分ほど走った郊外に、ハリス家はある。日本式に玄関で靴を脱ぐ決まりで、1階がダイニングキッチン、2階にトイレとシャワールームに寝室が3つという間取りだ。

金髪を頭の上でダンゴにしたハリス夫人は、地域のケアホームで司祭をしているという。「司祭」という言葉が聞き取れず、メモ帳に書いてもらった。

PRIETS

ん? もしかして「PRIEST」では? ハリス夫人、スペル間違えてますよ。

滞在中は朝夕二食付なので食事時間を聞くと、

「特に決まった時間はないのよ。あなたが食べたい時にチンして食べてね」

言われてみれば、リビングルームには食卓がない。あるのはL字型のソファと壁の液晶テレビだけ。食事は各自、キッチンカウンターで済ませるらしい。

みんなで夕食を囲む時間が英会話のチャンスだっただけに、ちょっと期待外れ。残念だが、正直ホッとした面もあり…

恐れていたイギリス英語だが、ハリス夫人は今まで何人もの日本人学生を受け入れて来ただけあり、わかりやすく話してくれる。でも夫婦の会話を横で聞いていると、ほとんど理解できない。

酒飲み夫マイケルは特に、ろれつが回らないくせに早口なので、

「…ファッキン…ファッキン…ファッキン…」

5秒間に3回ぐらい挟まる「ファッキン」以外、まったく聞き取り不能。彼とのコミュニケーションは困難を極めた。

ちなみにドレッドヘアの彼は、ハリス夫人より10歳は若そう。

さらに滞在3日目、ハリス夫人が実は司祭ではなく「引退した司祭11人が共同生活を送るケアホームのヘルパー兼清掃係」だったことが判明した。

司祭のダンナが朝帰りの酔っ払いだなんて、おかしいとは思ってたんですが…

真っ赤な聞き間違い。

英語習得への道のりは、果てしなく遠い…



2024年2月2日

パリの混沌

 

「クルマも来ないのに赤信号で立ち止まってるバカな奴」

パリの交差点で歩行者用信号が青になるのを待っていると、そういう視線を浴びる…気がする。

まずたいていの人が、信号を無視する。近づいてくる車のスピードを目で測りながら、その鼻先をすり抜けて道を渡っていく。

フランスの小学校は必ず親が付き添って登下校するのだが、ママやパパたちも、わが子の手をしっかり握って、果敢に信号無視だ。

実は自分も密かに「クルマも来ないのに赤信号で待つのは人生の浪費」と思うクチだ。パリでは道の向こうに無垢な子どもがいても、率先して信号無視して大人の矜持、大人の流儀、大人の規範を見せる。とても居心地がいい。

ただ、くせ者は自転車だ。いつの間にかパリ中の大通りに自転車専用レーンが整備され、電動アシスト付自転車も普及した。クルマだけ見て道を渡ろうとすると、反対方向から電動自転車が、時速40キロで音もなく近づいてくる。

あんなのに轢かれたら、死なないまでも、大けが必至だ。

 

10代から50代のパリジャン&パリジェンヌは、たいてい耳にワイヤレスイヤホンをつけている。日本みたいに大人しく音楽を聴いている人は少なく、ポケットのスマホ経由で、どこかの誰かと賑やかに通話しながら道を歩く。

傍から見ていると、歩行者がみんな大声でひとり言を言っているよう。さらに身振り手振りが加わるから、まるでそこら中で一人芝居をやっているみたい。

やがてそういう風景に慣れても、時々、意味不明の言葉を大声で繰り返しながら行ったり来たりする男性や、あり得ないほどのテンションで笑い続ける女性を見かけたりする。

薬物中毒かも… 精神障害かも…

できるだけ目を合わせない方がいいだろうなと、つい伏し目がちになる。

 

そしてパリは、ホームレスの人が多い。

セーヌ川にかかる橋の下にはテント村ができているし、道を歩いていても普通に見かける。

そして彼らも、一般パリ市民に負けず劣らず自己主張が強い。

冷たい雨の中、近くの軒先に入ろうともせず、全身ずぶ濡れになりながら人通りの多いカフェの入り口に陣取るのは…なぜ?

片側2車線の大通りのど真ん中で、騒音と排ガスにまみれながら中央分離帯に寝袋を敷いて寝るのは…なぜ?

どんな境遇でも、人とは違う自分でありたいのだろうか。

東京が予定調和の街だとしたら、パリは不協和音に満ちている。



2024年1月27日

汚いけど、きれい

 

パリに2週間滞在して、一度も犬のウンコを踏まなかった!

これは画期的な出来事だ。

毎朝ジョギングした後、モンパルナスからメトロを使わず歩いて美術館に通ったから、1日平均15キロは路上を移動したはずだ。

パリも少しはきれいになった…?

でもシャンゼリゼやリボリ通りはともかく、16区辺りの歩道は依然として、大型犬のがとぐろを巻いている。要注意である。

住んでいた頃のいい思い出はあまりないが、観光客として訪れるパリは最高だ。まさに花の都。もちろん冬のパリに花は咲かないが、パリ20区内は街全体が美術館のようなもの。華やぎがあって、何時間歩いても飽きない。

そして冬のパリ最大の楽しみは、やっぱり美術館。ルーブルに3回、オルセー美術館には2回通った。

ポンピドーセンターの国立近代美術館、モネの「睡蓮」があるオランジュリー美術館、レオナール藤田が鑑賞できるパリ市立近代美術館、ロダン美術館も…毎日、美術館に入り浸っていた。

ホテルの朝食会場でテレビを見ていたら、「ルーブル美術館、今日から値上げ」がトップニュース。街頭インタビューでフランス人観光客が、「大人22ユーロ(3500円)は高すぎる!」とコメントしている。

確かに高い。ニュースによると、入場者の40%がタダ客だという。EU国籍の25歳以下は無料なのだ。道理で、館内が若いカップルのデートスポットになっている訳だ。

ホテル代も食事も美術館も、何もかも高いので、途中でホテルからキッチン付アパートに引っ越し、バゲットにチーズを挟んで食べながら美術館に通う。それでも日々美しいものに触れることができて、心満たされた。

そしてパリは大都会の割に、妙に人間臭い街だ。

至る所にあるカフェは平日でも人が溢れ、ちょっと日が差せばテラス席まで満員に。気温3度でも、時間を忘れてしゃべりまくっている。

カフェで隣に座ったカップルの男の方が、やおらコートと長袖シャツを脱ぎ捨ててTシャツ姿に。長袖シャツの襟もとに鼻をくっつけてクンクン嗅ぎ、「うん、まだ臭くない!」だって。不潔だなあ。

また、パリっ子は喫煙率が高い。ベビーカーを押した女性が、平気で歩きタバコしている。道端でタバコをふかしている人に、見ず知らずの通行人が「ボクにも一本」という場面も目撃。たいてい、もらえていた。

雨の日にメトロを使った時。途中で、ギターを抱えた薄汚い男性が乗り込んできた。その弾き語りは騒音にしか聞こえなかったが、一曲終えた彼が紙コップを手に車内を回ると、何人もの乗客がチップを与えていた。

パリは、飽きない。



2024年1月20日

フランス人が英語を話した!

ウクライナ戦争の影響でロシア上空を飛べず、羽田発パリ行きの飛行機は、アラスカや北極圏の上を大きく迂回していく。

14時間を超えるロングフライトだ。

ちょうど私の座席の前が非常口。その小さな空間に、幼児連れの母親が入れ代わり立ち代わり、赤ちゃんをあやしに来る。ママが膝をクッションにして揺らすと、盛大に泣いていた赤ちゃんも安心して泣き止む。

どの夫婦も、パパはわが子にノータッチ。

でも、ママたちの横顔は幸せそう。

 

ようやく飛行機が降下態勢に入る。ここまで快晴の空を飛んでいたのに、着陸直前、地表を覆う厚い雲に呑み込まれる。

そして降り立った、パリの空は鉛色。

まずはバスに乗ってオペラ座まで。車窓から見えるパリ郊外のアパート群は、壁が落書きだらけ。そして市内に入ると、あちこち工事中だ。夏にオリンピックを控えているせいだろうか。

出発前、心配顔の家族に「道端でスマホを出すと、あっという間にかっさらわれるよ!」と脅された。道行く人を観察すると、けっこう皆さん歩きスマホしている。そこまで治安は悪くなさそう。

帰宅ラッシュの渋滞を抜けてバスを降り、雑踏の街でメトロの入り口を探す。昔懐かしい10枚つづりの紙の回数券(カルネ)は廃止になり、今は「ナビゴ」というIC乗車券を買うらしい。

ところが。

メトロ改札口に降りると、6台あった自動券売機が、全て故障中。

窓口にも人の気配がない。

荷物を背負って階段を登り返し、隣の駅まで歩く羽目になった。

以前は不良たちが跳び越えて無賃乗車していた自動改札は、背丈以上ある扉でがっちりガードされていた。混み合うメトロ車内は、ケータイかけ放題で騒然としている。

フランス語だけでなく、東ヨーロッパ系やアフリカ系など色々な言語が耳に飛び込んでくる。東京メトロも最近は国際色豊かだが、パリはその比ではない。

途中で2回乗り換えて、夜のモンパルナスへ。とりあえずの宿は、パリ市内に何軒もあるCampanile というビジネスホテルチェーン。日本でいえば「東横イン」みたいな狭い部屋が、1泊100ユーロ以上する。

フロントの黒人女性は親切な人。でも私のフランス語に、いちいち英語で返してくる。

そんなに発音悪かったかな… 

いや、フランス人が国際的になった、ということで。



2024年1月11日

気がつけばホテル・ジャンキー

 

ホテルのサブスクを利用して、東京・南青山の長期滞在型ホテルに泊まった時のこと。

近くのカフェで朝ごはんを食べていたら、隣にラグビー日本代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズさんが座った。

トレードマークのセーター姿。目尻にしわを寄せて笑う柔和な顔。

テレビで見たジョーンズさんそのものだ。

秩父宮ラグビー場が近いから、たぶんこの辺の高級レジデンスにお住まいなのだろう。

たまに田舎から出てくると、すぐ著名人と遭遇してしまうトーキョーが眩しい。

 

「いったい、何にお金使ってるんですか⁈」

クレジットカードで、2年に1度ヨーロッパ往復できるぐらいマイルが貯まると言ったら、友だちが絶句していた。

ひとり暮らしで、ふだんの食事は玄米と納豆、みそ汁。

いったい何にお金を使ってるのかと聞かれても、自分にも思い当たる節が…

あった!

ホテル代だ。

標高1600mにあるわが家は、12月も半ばを過ぎれば、明け方の気温がマイナス10度を下回る。街へとつながる山道は凍結して、朝晩の通勤は命がけ。

そんな寒い時期のために、車で1時間半ほど離れた街中にマンションの一室を借りた。だがそこも、真冬の気温は氷点下だ。

移住して初めて知った、とんでもなく寒い土地柄。東京からほんの2時間ほどの距離なのに。体脂肪率11%の痩身には堪える。

仕事が終わって外に出ると、周囲は真っ暗。凍りついた自宅に帰る気をなくして、つい職場近くのホテルに泊まる。

1日の給料が、その晩に消えていく。

週末も、家にいると寒いので、近場のホテルに避難してしまう。

フロントで「お車でお越しですか」と尋ねられ、「いえ…歩きです」と答える時の恥ずかしさよ。

長い冬の間はずっとそんな調子。この辺はゴールデンウィークも雪が降る。

気づいてみれば、去年はホテルに104泊していた。

 

あー、ホテルの部屋はあったかいなぁ。

入浴剤を溶かした風呂に入り、至福のひと時。

でもこの冬は、もう少し建設的なホテルライフを送りたい。

マイルの有効期限も迫っているので、ちょっとヨーロッパに行ってきます。




2024年1月6日

海外投資は、自由への道

いよいよ今年から「新NISA」が始まった。

1800万円まで無期限・非課税で運用できる、ありがたい資産運用ツールだ。

と同時に、10年前の旧NISA初年度に投資した分が満期を迎えた。

どれどれと自分の口座を調べてみると…10年間で55UPという成績。

年率にすると4%ぐらいか?

株式100%のリスクを負った対価としては、ちょっと物足りないなぁ。

わがミヤサカ・ファンドは、ポートフォリオ全体のバランスを考えて、10年前にNY上場のVB(アメリカ小型株ETF)、VSS(アメリカ以外の海外小型株ETF)、FM(フロンティア株ETF)をNISA枠で買った。

ちなみにフロンティア株というのは、新興国よりさらに魑魅魍魎の…じゃなかった、新興国の次に成長が期待される!小国の企業の集合体だ。

FMの保有銘柄は、カザフスタンのソフトウェア会社やウラン採掘所、エジプトの銀行、ベトナムの製鉄所や不動産、ルーマニアのエネルギー企業や石油会社など。そしてFMのこの10年間の年率リターンは、1%ほどだった。

…まだまだ離陸しないようですね。

次にVSSの保有銘柄を見ると、トップ10はウラン鉱山、コンサル、ソフトウェア、エネルギー、運輸、金銀採掘、保険などなど。すべてカナダの会社だ。

VSS10年間の年率リターンは、3.8%だった。

そしてアメリカの小型株を集めたVB10年間の年率リターンは、8.1%。

もし10年前、奇をてらわず素直にSPYなどのアメリカ大型株ETFにしておけば、年率11.9%のリターンがあった。元手が2倍以上に増えたことになる。

国際分散投資の考え方は正しいにしても、策に溺れて分散しすぎたか…

でもポートフォリオ全体では円安にも助けられて、去年もそこそこリターンがあった。まぁよしとしましょう。

今年からの新NISAではシンプルに、日本を含む世界株インデックスで積み立てようと思う。

ただこのインデックス、新興国株の比率があまりにも低すぎる。いまや世界第2の経済大国になった中国や、将来的にその中国をGDPで抜くと予想されるインドが、過小評価されすぎなのだ。

だから、新興国株インデックスも買おうと思っている。

 

2022年、日本の1人当たりGDPは先進7か国中、ついに最下位に転落した。人口減少と少子高齢化が同時進行するじり貧ニッポン。この国に住み続けるなら、海外投資はギャンブルでも何でもない、立派な生活の技術だ。

私が時給933円の田舎の病院に週3日働くだけで食っていけるのも、株式インデックスを使った国際分散投資のおかげなのです。

海外投資は、職業選択の自由への道! 

Matsumoto Castle project mapping, winter 2023



HIKIKOMORI

  不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。 増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。 心理系大学院入試でも 、事例問題としてよく出題される。 対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循...