イギリス家庭にホームステイすれば、フレアスカートの奥様が紅茶と手作りスコーンでもてなしてくれる…
なぁんて期待はしていないが…現実はキビシかった。
外出から戻った私が2階にいると、5時55分ごろ階下のキッチンで物音がし始め、そして6時きっかりに「AC(←私の名前)! ディナー!!」
ハリス夫人が大きな声で呼んでくれる。
調理時間、およそ5分。
夕食はいつもキッチンカウンターで、丸椅子に尻を乗せてひとりで食べる。ガラ~ンとしたこの家には食卓もイスもないから、誰かと一緒に食べるのは物理的に不可能なのだ。夫人曰く、「ウチはモダンな家庭だからね」。
メニューはたいてい一皿で、「麺と同じ量のソーセージが乗っかったミートソースパスタ」だったり、その翌日が「肉あんかけ乗せ中華麺、でもなぜか前日のミートソースと味が同じ」だったりする。
また別の日は、茶色い焼きめしの上にカレーをかけたワンプレート。キッチンに残されたパッケージには「Curry rice Chinese style」とあった。
毎日、茶色っぽい。
日本の友人に写メしたら、「ほとんどジョークみたいな食べものだね」
キッチンはいつもピカピカだ。滞在中、一度も鍋やフライパンを見かけなかったから、電子レンジしか使わないみたい。ハリス家は共働きだから、スーパーの総菜や冷凍食品でもぜいたくは言えない。
私の食事中、ハリス夫人は居間のテレビでクイズ番組を見ている。「ご飯はこれから?」と聞くと、「私?適当にクッキーやチョコをつまむだけよ」
夫人より10歳は若そうなドレッドヘアの夫マイケルは、大量にストックしてある缶ビールとポテトチップスでカロリー補給している様子。
イギリス人家庭、恐るべし。
私に用意してくれる食事は、肉の量がすごい。とても食べきれないので、夫妻の愛犬ステラ嬢(3歳)に手伝ってもらう。「太るからあげちゃダメ!」と釘を刺されたので、夫人の視界の影でこっそりと…
でも興奮したステラ嬢の咀嚼音がすごくて、毎度ハラハラした。
完食(?)して「おいしかった、ご馳走さま!」と言い続けたら、夫人も満足顔。そのうち、別皿でサラダが付くようになった。
滞在終盤、珍しくハリス夫人が朝から圧力鍋を持ち出して、何か煮込んでいる。そして午後6時、サイコロ状に切った肉と野菜が山盛りの「英国風シチュー」が満を持して登場。いつものように茶色一色だが、今度こそ手作りだ。
期待に胸を膨らませて、最初のひと口。
ん…?
やっぱり冷凍食品の方がいいかも。
ふと足元を見ると、お嬢が万全の態勢で待機している。
今夜もステラ嬢の全面協力を得て、「ぜんぶ食べました、ご馳走さま!」
St Pancras International, London |
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