ロンドンでのホームステイ生活、2日目の朝。
2階の寝室からリビングに下りると、半裸の男がソファに転がっている。
ハリス夫人の夫、マイケルだ。昨夜どこかに出かけたと思ったら、朝帰りしたらしい。水のボトル片手に「飲み過ぎた、頭いてぇ」と唸っている。
お腹も背中もタトゥーだらけ!
2週間のパリ滞在を終え、ユーロスターでドーバー海峡を潜ってロンドンへ。ロンドン滞在では、留学エージェントにホームステイの手配をお願いした。
受け入れてくれたのは、ハリス夫人一家。夫のマイケル、愛犬ステラ嬢(3歳)と共に暮らしている。去年、還暦の記念にハワイへ行ったという。
ロンドン中心部から地下鉄で30分ほど走った郊外に、ハリス家はある。日本式に玄関で靴を脱ぐ決まりで、1階がダイニングキッチン、2階にトイレとシャワールームに寝室が3つという間取りだ。
金髪を頭の上でダンゴにしたハリス夫人は、地域のケアホームで司祭をしているという。「司祭」という言葉が聞き取れず、メモ帳に書いてもらった。
「PRIETS」
ん? もしかして「PRIEST」では? ハリス夫人、スペル間違えてますよ。
滞在中は朝夕二食付なので食事時間を聞くと、
「特に決まった時間はないのよ。あなたが食べたい時にチンして食べてね」
言われてみれば、リビングルームには食卓がない。あるのはL字型のソファと壁の液晶テレビだけ。食事は各自、キッチンカウンターで済ませるらしい。
みんなで夕食を囲む時間が英会話のチャンスだっただけに、ちょっと期待外れ。残念だが、正直ホッとした面もあり…
恐れていたイギリス英語だが、ハリス夫人は今まで何人もの日本人学生を受け入れて来ただけあり、わかりやすく話してくれる。でも夫婦の会話を横で聞いていると、ほとんど理解できない。
酒飲み夫マイケルは特に、ろれつが回らないくせに早口なので、
「…ファッキン…ファッキン…ファッキン…」
5秒間に3回ぐらい挟まる「ファッキン」以外、まったく聞き取り不能。彼とのコミュニケーションは困難を極めた。
ちなみにドレッドヘアの彼は、ハリス夫人より10歳は若そう。
さらに滞在3日目、ハリス夫人が実は司祭ではなく「引退した司祭11人が共同生活を送るケアホームのヘルパー兼清掃係」だったことが判明した。
司祭のダンナが朝帰りの酔っ払いだなんて、おかしいとは思ってたんですが…
真っ赤な聞き間違い。
英語習得への道のりは、果てしなく遠い…
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