経済的に恵まれない子が集まる、無料の学習会。
顔を出すたび、子どもたちの変わりように驚かされる。
割り算もおぼつかなかった勉強嫌いのハルナが、中学生になり、複雑な方程式に食らいついている。学習会の90分、ひたすら机に向かう姿に、目を疑う。
誰かいい先生に出会ったの?
ハルナいわく、クラスで一番勉強ができて、しかもスポーツ万能の男子と隣同士なのだそうだ。彼女の苦手な数学を、優しく教えてくれる。
「でも、テストが終わったら席替えなんだ」
やる気の源泉がイケメン男子だとしたら、席替えした後は・・・?
その学習会の子どもたちと、秋祭りに参加した。
フランクフルトソーセージ300本を売ることが、与えられた使命だ。
割り当てられた場所は、通路のどん詰まり。待っていても、人は来ない。
子どもたちは、焼いたソーセージをお盆に乗せて、行商に出た。
物陰から見ていると、ソータが、うどんを食べている家族の横に座り込み、買うと言うまで離れない。その横では、サクラがおじさんを相手に「これ全部売らないと、家に帰れないんです~」
そのセリフ、どこで覚えたの?
かわいい小学生に懇願されれば、とても敵わない。1本100円のソーセージが、見る間に売れていく。人影まばらになると、食べもの屋台を出す他の売り子さんにまで、ソーセージを売りつけていた。
ちなみに、何本売っても、彼らは1円ももらえない。「祭りでソーセージを売る」という行為を、純粋に楽しんでいる・・・のだろうか。
たまに学習会に顔を出す、アンナという10代の子がいる。身長170センチ超。乱暴な男言葉。濃いメイク。鋭い眼光。学校に行かず、彼氏とバイクで遊び回っている。女番長みたいで、近寄りがたい。
そのアンナが、2年前の秋祭りでは、誰よりも大きな声で呼び込みをした。
「フランクフルトいかがですか~! 1本100円!」
2時間もの間、ひたむきに連呼している。300本のソーセージを、ほぼひとりで売り切った。
どうして、そんなにがんばれるの? 金銭的報酬もなしに。
と、思う自分は、インセンティブでしか動かない、汚れたオトナだ。
今年の秋祭り、アンナがお客さんとしてやってきた。目つきが柔らかい。来年、お母さんになるのだという。
おめでとう! でもアンナ、まだ高校生だよね・・・(汗)
※子どもの名前は変えてあります
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