土地勘のない外国で運転するとき、カーナビは強い味方になるはずだ。
タイでレンタカーを借りた際、カーナビも借りた。後付けのカーナビを、係が運転席のフロントガラス正面にマグネットで取り付けてくれた。
本当に目の前だ。タイのドライバーは、こうやって運転するのだろうか。
しかし・・・これでは前が見えない。彼が去ってから、隅の方に装着しなおす。すると運転中、何度も振動で足元に落ちてしまった。
さて今晩のホテルを目的地に入力しようとすると、まず登録されていない。
住所で探してみる。タイ語の地名は、ローマ字表記すると何通りもスペルがある。いろいろスペルを替えてみてもヒットしない。
あきらめて、あらかじめ登録されている市役所などを当面の行き先にした。
途中で気が変わり、クメール時代の遺跡に寄ることにした。脇道に入ると、日本のカーナビなら、最終目的地までの経路を再計算してくれる。ところがこちらのカーナビは、しばらく沈黙した後に「 Impossible! Make U-turn! 」と連呼しはじめた。ヒラリー・クリントンを思わせる、低い女性の声だ。
市民の意向を無視して我を通そうとする。カチンときて、スイッチを切る。
すると何日かして、今度は勝手に電源が切れるようになった。肝心な場面で寡黙になる。彼女の機嫌を損ねたか。どうも、電源コードの接触不良らしい。指で押さえると復活する。
旅の後半、右手でハンドルを握りながら、左手でカーナビを押さえて走った。
それでも、現在地がわかるだけでもありがたい。タイ北部チェンマイでレンタカーを借りたときも、事前にオプションで注文した。
ところが、車内にカーナビが見当たらない。スタッフに指摘すると「契約に含まれていない」「別途つけるなら1日240バーツ必要」という。
おかしい。確かにカーナビ代も払っているはず。私の思い違いだろうか。
今回は田舎道だからいいか、とそのまま出発した。結果、どんな小さな町でも必ず道に迷い、ホテルにたどり着くまで1日平均30分は右往左往した。道行く人に聞きまくり、タイ語の練習にはなった。
改めてレンタカー会社との契約内容を見直すと、確かにカーナビ代を払っている。
最終日。車を返却し、「カーナビ代を払っているのにカーナビなしの車だった」とクレームをつけた。シラを切るつもりなら、断固戦ってやる。
若い男性スタッフは、しばらく端末をいじると「オ~オオ」とつぶやき、女性上司にタイ語で何か言った。すると上司も「オ~オオ」と言い、にっこり笑った。
タイ人と話すと必ず出くわすこの「オ~オオ」、アメリカ人の「Oh!」とは似て非なるもので、感嘆詞ではあるが、本人はあまり驚いていないことが多い。
「OK、カーナビ代は払い戻します。口座に入金されるまでひと月かかります」。
ここで怒ると、かえって事態が悪化することは経験で知っている。久しぶりに、カーナビがない時代のドライブを経験できてよかった。
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