車やバス、バイク、トゥクトゥク、リヤカーなどが入り乱れるバンコクの路上に、レンタカーで繰り出した。
いったん渦中に飛び込んでしまえば、見た目ほど怖くない。
マイカー急増中とはいえ、タクシーや配送などのプロドライバーが多い。運転がうまいので、こちらがミスしても、向こうがよけてくれる。
また、タイ人得意の「あうんの呼吸」で、無秩序の中にも秩序が保たれている。ニューデリーやマニラ、ジャカルタなど、アジアの大都会お決まりのクラクションの洪水が、ここバンコクはないのだ。
赤信号であっても、交差点を忍び足で入って左折できる。最初は面食らうこのようなローカルルールを、見よう見まねで覚える。
これまでアメリカ、カナダ、ベルギー、オランダ、ポーランド、チェコ、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、ニュージーランドで運転した。ベルギーとニュージーランドでは、つい右側通行を忘れて反対車線を激走した。日本でもヨーロッパから帰国直後に逆走したが、今日まで生き永らえてきた。
ここは日本と同じ左側通行なので、「逆走する老人」にはならないで済む。
タイでレンタカーを借りるのは簡単だ。営業所に電話し、クレジットカード番号を口頭で伝えればいい。300バーツ(1000円強)の追加料金で、車をホテルまで届けてもらえる。
約束から30分遅れて、赤いベストを着たAVISのお兄さんが到着。書類にサインすると、彼は私のパスポートと国際運転免許証をスマホで撮影して帰って行った。ピザの宅配と変わらない手軽さだ。
車は、トヨタの現地生産車VIOS。走行13万キロで、車体が派手に凹んでいる。トランクも、思い切り叩き付けてやっと閉まる。オプションで付けた英語音声のカーナビは、すぐ電源が切れる。
それでも、まっすぐ走れなかった某国のレンタカーに比べれば、じゅうぶん許容範囲である。
バンコクを抜けて郊外に出てしまうと、片側3車線のまっすぐな道が延々と続く。鉄道網が貧弱なので交通量は多いが、ほとんどの交差点が立体交差化され、1時間走っても信号がない。制限速度は時速110キロで、一般道なのに東名より流れが速い。
ベトナム戦争中、タイに基地を作ったアメリカが道路を整備した。走ってみれば、気分はフリーウェイ。道路も路肩も広々としている。
昨日は270キロ、今日は380キロを走破して、タイ東部ウボンラチャタニーにやってきた。明日はラオス国境を目指す。
ハンドルを握って手にする自由は、想像以上だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿