2015年2月18日

お坊さん優先席




電車内でこのマークを見つけ、10年前のある情景を思い出した。


2005年暮れ、空路プーケットに向かった時のこと。バンコク空港の搭乗待合室には、オレンジ色の袈裟をまとった僧侶の団体さんがいた。インド洋大津波1年の追悼式典に向かうようだ。


お坊さんの集団など日本では見かけないが、僧侶人口4万人とも言われるタイでは時々目にする。1~2週間だけ僧侶になるプチ出家の制度もあり、それも含めるとタイ人男子100人に2人はお坊さんだ。キョロキョロと美人を気にする俗気丸出しの僧侶もいた。


搭乗アナウンスで機内に入ると、優先搭乗していたお坊さんたちが、きれいに縦一列になって窓側の席を占めていた。その隣に座っているのは普通の乗客だが、全員が男性。女性やカップル、家族連れは真ん中の4列シートに集められている。不思議な光景だ。


自分の席を探すと、私もお坊さんの隣の「一般人、ただしオトコ」の列だった。


離陸してほどなく機内サービスが始まった。若いキャビンアテンダントの女性が、お菓子とジュースをくれる。

サンキュー。

続けて、お菓子とジュースをもう一組くれる。

ノーサンキュー。

すると、女性が困った顔をしている。

ここで鈍い私も気がついた。タイでは、女性が僧侶に触れることは最大のタブー。わざとでなくても、さわってしまったが最後、せっかく積んできた長年の修行が一瞬でパーになってしまう。

我々「一般人ただしオトコ」組は、お坊さんとキャビンアテンダント間のバリケードにされていたわけだ。

不明を恥じながら隣席にお菓子をリレーする。昼からは食事をしてはいけない戒律もあるようだが、朝便だったのでそのお坊さんはおいしそうに食べていた。

現在バンコク市内を走る高架鉄道BTSには、いわゆるシルバーシートのほかに、お坊さん優先席がある。これも、僧侶に席を譲るとともに、女性はその隣に座らないように、という両方の意味を込めているはずだ。

昨日はその席に尼さんが座っていた。

この場合は・・・?

少し混乱した。



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