2024年7月27日

「人生を変える読書」

 

「オペラント条件付け」「ピグマリオン効果」「認知的不協和理論」「多変量解析」「統計的仮説検定」「原始的防衛機制」「系列位置効果」…

言葉の意味、わかりますか?

先月105歳でスタンフォード大の修士号を取得したアメリカ人女性、B・ヒスロップさんに触発されて?この私も、某国立大大学院を目指して勉強中…

ま~ず一発では受からないと思うけど、

Whether you succeed or not is less important than doing your best.

ということで、ガンバリマス。

 

『人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える』の著者、多摩大学大学院経営情報学研究科教授・堀内勉氏のインタビューに唸ったので、日経ビジネス電子版より一部を紹介します。

・読書は孤独な行為と思われがちだが、実は人との出会い。どんな本にも必ず筆者がいる。つまり読書とは、本を書いたさまざまな人間との対話。自分の人生と照らし合わせて読めば、生きる糧になる

2400年前に生きたプラトンと直接会うことができなくても、本人が書いた本を読めば、プラトンの言葉に触れ“対話”することが可能。読書は絶対に会えないような素晴らしい人たちと、時空を越えて間接的に対話できる優れもの

・一人の人間が一生の間に実際に体験できることは限られている。しかし人生における体験を拡張するツールとして読書を活用すれば、疑似的に体験できる世界は、それこそ無限に広がっていく

・日本のビジネスパーソンは、いわゆるエリートといわれるレベルでは、世界的に見ても圧倒的に勉強が不足していると感じる。日本のビジネスパーソンは働きすぎなのだと思う

・仕事と勉強の比率は、仕事の方が圧倒的に多く、読書などを含む自己研鑽にほとんど時間を使っていない人が多い印象

・日本のビジネスパーソンは、“内向き”なことに時間を使いすぎ。それは日本の多くの企業の中に「組織に対する忠誠心の貯金」のようなものがあるから

・長時間労働、上司との飲み会、接待、ゴルフなどによって社内の忠誠心の貯金は増えていくが、残念なことにそれは会社から一歩外に出るとまったく通用しない「地域通貨」

・そのような生き方を否定するつもりは全くない。また組織そのものを否定しているわけでもなく、一人で生きていくことを推奨しているわけでもない。しかし、その集団にすべてをからめ取られてしまってもいいのだろうか

・自分の人生は自分で生きるしかない。他人の人生を生きることはできないし、他人に自分の人生を生きてもらうことも不可能

・読書を通じて優れた人物との対話を重ねることは、人間とは何か、自分とは何か、一度きりの人生を一人の人間としてどう生きたらいいのか、を考える力になる

…そうは言っても、受験参考書以外の読書はしばらくお預けだなぁ。

Varanasi, India 2024


2024年7月20日

下ネタ注意、です

 

人里離れたわがボロ山荘に、某新聞の元中国総局長○○さんと、元アメリカ総局長の◇◇さんが遊びに来てくれた。

久しぶりに再会した○○さん、見違えるほど精悍な体になっている。徹底した糖質ダイエットで、120キロあった体重を半年で70キロまで減らしたそうだ。

ラーメン屋に入り、「麺抜きで」と注文していたという。

めめめ麺抜きラーメン⁈ たいていの店主は承知してくれたらしい。

○○さんは、自称「飲む飲む買う買う買う打つ飲む買う」の人だ。彼の話にはときどき、意味不明な略語が混じる。「この間、MBのかわいい子にマッサージしてもらって…」「なんすか?そのMBって」「マイクロビキニ」

勉強になるなぁ。

以前、私が某国特派員時代にお仕えした△△支局長は、ひたすら「買う買う買う買う買う買う買う買う」のお方だった。

日本の最高学府を卒業して国際政治の著書までありながら、

「オレ新聞記者やめてAV男優になりたい」

と真顔で言う。

△△さんの世界各地での行状を目撃している私たち3人には、彼が100%本心からそう言っているのがわかる。

ある時、△△さんが青ざめた顔をして、エイズ検査に駆け込んだ。

いったい、何があったんだろう。幸い、検査結果は陰性だった様子。

「ネガティブという言葉が、こんなにポジティブに聞こえるとは…」

しみじみ言ったそうだ。

 

わが某新聞社の規定では、海外出張が10日以上になると、費用会社持ちでホテルのランドリーサービスを利用できる。

10日目なんてせこすぎる! 出張にパンツ10枚持ってけってか⁈」

○○さんが怒っている。山登りの世界では、そんなの普通ですけどね。

私「ぼくの母校の山岳部の□□子ちゃん、2週間の夏山合宿をパンツ1枚で乗り切ったみたいですよ」「エエエーーーッ!」

わが山岳部女子、歴戦の全国紙記者を驚かせる。

返す刀で、というべきか。長年海外支局を渡り歩いた××さんは、10日以上の出張に出かける際、自宅の洗濯かごの汚れものを全部持参して、経費できれいにするという。

会社も会社なら、社員も社員だ。

海外の空港を颯爽と歩く国際ジャーナリスト、そのスーツケースの中身はICレコーダーとデジタルガジェット…じゃなくて、汚れたパンツ1ダースだったりするみたい。

※今も会社の中枢にいらっしゃる方、就職を控えた学生の未来のために、実名報道は控えさせて頂きます

Kolkata, India 2024


2024年7月12日

花の都、パリ

 

今年の正月、30数年ぶりでパリへ行き、2週間を過ごした。

毎日美術館に通ったが、街そのものが美術館みたいに美しかった。

パリで6年半を過ごした子ども時代、観光にはいいんだろうけど、住むのは最悪の街だと思っていた。

今回、治安は悪いしインフラはボロボロだしメトロは不潔だし、住むのはごめんだけど、観光には最高の街だと思った。

あれ? 自分の立ち位置が変わっただけで、結局思うことは同じか…

 

「パリの国連で夢を食う。」 川内有緒著 幻冬舎文庫

2000倍の倍率を勝ち抜いて31歳で国際公務員となった著者の、パリ滞在記。国連自体はガチガチの官僚組織だったが、著者は上司と同僚に恵まれたようだ。

パリで働き始めた最初の年、著者の父の体にがんがみつかる。手術後の経過も思わしくない。初めての海外出張を控えていた著者は、セルビア人の上司ミローシュと話す(以下、本書より引用)。

「お父さんの具合はどうなの」(中略)「ノット・ソー・グッド(あんまりよくないです)」「どういう意味?」「今は人工呼吸器につながれているので、話ができない状態です」

「……アリオ、君は日本に帰るべきだ」

彼にしては珍しく真剣な表情になった。

でも、この間お見舞いにいったばかりだし、来週からはロシア出張もあるので…、私が行けない理由を並べ立て始めると、彼は会話を遮ってはっきりと言った。

「リッスン(聞いて)。出張なんかどうでもいいんだよ。人生では家族のことのほうが仕事よりもよっぽど大切だ。出張は代わりにロホンが行けばいい。君が行くところはモスクワじゃなくて、日本だ、わかった? 心配しないですぐにでも出発してくれ。お願いだから」

私は初めて仕事場で泣いてしまった。(引用おわり)

あ~!自分も会社員時代、一度でいいからこんなセリフ言ってみたかった。

 

同僚のギニア人、サキーナと著者との会話も印象的だ。

引っ越しすることになった著者が、サキーナをアパートの内見に誘う(以下、本書より)。

「ねえねえ、せっかくだから、一緒に見に行ってみない?」「う~ん、どうしようかな」「あ、忙しい?だったらいいよ」「ううん、忙しくないんだけど、私、たぶん行かないほうがいいと思うんだ」

サキーナはバツが悪そうな顔になった。

「だって、黒人の友達がいるって知ったら、貸してもらえなくなっちゃうから」

フランスは移民への差別が激しい国で、黒人がアパートを借りるのは至難の業なのだと説明してくれた。(中略)

「私、ほんとに黒人差別がない国があったら、どこでもいいからそこに行きたい。ねえ、日本ってどう?」(引用終わり)

う~ん。日本もあんまりお勧めしません。

Paris, winter 2024


2024年7月5日

いい匂いした?

 

ロンドンでホームステイした時、滞在したイギリス人夫妻の会話がほとんど聞き取れなかった。

特に難解なのが、ジャマイカ人の父を持つ夫マイケルのマシンガントーク。

10秒に3回「Fワード」が挟まることだけ、辛うじて聞き取れる。

うーむ。この一家が話す英語は、お手本にしない方がいいかも。

すぐ方針を変えて、冬のロンドンから南へ。セブ島の英会話学校に転校した。

 

その途中で、インドに寄り道。ガンジス川に面した聖地ヴァラナシにある、露天の火葬場で日がな一日を過ごした。

最大の火葬場「マニカルニカー・ガート」は、周囲を目隠し代わりの巨大な壁に囲われている。15分ほど川沿いに歩いたところに、別の小さな火葬場を見つけた。

焚火かと思って近づくと、野良イヌや野良ヤギが残飯を漁る河岸で、無造作に人が焼かれている。女性の遺体は鮮やかな赤い布に包まれて焼かれるが、男性は顔がむき出し。一体は立派な顔立ちをした、まだ若い男性だった。

病気でやつれた感じはないから、事故死か、あるいは自殺だったのか。

親族の男たちが、担架に乗せた遺体をガンジス川の水に浸した後、薪の上に載せ、火をつける。誰もが淡々として、悲嘆の様子はない。

時おり、係員が遺体を棒でつついて、火の中に押しやっている。

やがて盛大だった火勢が徐々に弱まり、3時間ほどですべてが灰になった。頭骨も大腿骨も、影も形もない。残ったのは、吹けば飛ぶような細かい灰だ。

火葬場の男が、残った灰をサッとほうきで掃き、その上に新しい薪を組んだ。

日本の火葬では、焼け残った骨を骨壺に納める「骨上げ」という儀式が行われる。あれは骨が原型をとどめるよう、かなり慎重に火勢を調節しているのだ。

火葬場のすぐ隣では、大音量のロックに合わせて若者が踊っている。老夫婦が沐浴する姿も見える。

時おり川面を観光船が下って来て、外国人観光客が、火葬の様子を船上から見物していった。

 

その後セブ島に渡り、英会話学校の担任レイア先生に、インドで見た火葬の様子を話した。

表情ひとつ変えずに聞いていた先生が、出し抜けに言った。

「それで、いい匂いはしたの?」

フィリピンには「レチョン」という、子ブタを一匹丸ごと串焼きにする料理がある。

レイア先生、まさか頭の中でレチョンを想像してるんじゃ…

お国が変われば、死生観も変わる。

Varanasi, India 2024


2024年6月28日

自然学校で

 

このところ、勤務先の自然学校に連日、首都圏の小中学校がやってくる。

先日、ある北関東の私立中の先生から「ウチの生徒、新NISAの話になると目の色が変わります。実際に株式投資を始めた子もいますよ」という話を聞いた。

中学生から株式投資! 未成年でも証券口座を開けるんだっけ。

日本人が一生涯に得る平均賃金は2.2~2.7億円(大卒正社員の場合)。限られた収入を運用するかしないかで、人生後半の幸福度に大差がつく。お金の教育は、早ければ早いほどいい。

各校の課外学習(森のオリエンテーリング)を手伝っていて気になるのは、「たまに」と「しょっちゅう」の間ぐらいの割で、子どもを怒鳴る先生がいることだ。

ADHD傾向の子などの一部は、まるで大人の忍耐力を試すような言動を繰り返す。先生という職業、かなりの精神修養を必要とするのは確かだ。

それでも。周囲を凍り付かせるような大声はやめて欲しい。

知性と理性で、子どもに接して欲しい。

 

リクルート出身で、東京都内の中学校で「義務教育初の民間校長」を務めた藤原和博氏。日経ビジネス電子版のインタビュー記事を、一部紹介します。

・現在、小中高の生徒は1200万人強。そのうち、不登校の子が30万人。でもこれは「まだ」少ない。学校に全く興味はないが仕方ないから付き合っている子、この状況にギリギリ耐えている子が、さらに300万人いる

・不登校が増えたというと、大慌てで「不登校を減らそう」というが、それは間違い。今の教員の力量で不登校を減らすことは無理だ

・首都圏のある地域では、教員の出身大学の偏差値は50を切っている。東京都など、昔は16倍くらいの倍率だった教員採用面接が2倍を切った

・この現実を知っていると、教員の質を上げるとか、教員に研修をすればもっと教えられるようになるとか、もっと豊かな教育ができるようになるといった話が幻想だと分かる

・それよりも、先生の半分をオンラインの中に求めた方が現実的。言葉の壁はあと5年の間になくなるから、日本で海外のオンラインアカデミーに学ぶ子がいてもいい。アルゼンチンの算数の教員がすごく面白くてエネルギッシュであれば、そういう人から学んでもいい

・これだけ円安が進むと、金持ちの子しか海外留学できない。そう考えると、ある程度エリート教育を認めざるを得ない。徹底的に優秀な人を数少なくてもいいから増やして、100倍の生産性で日本に恩返ししてもらう

・「irreplacable(代替できない存在)」が、これからのキーワード。言い換えると「希少性」

・自分自身をレアカード化したい

Musee de l'Orangerie, Paris 2024


2024年6月22日

学問の道への入り方

 

最近、心理学や脳科学を専門とする大学教授3人に、立て続けにお会いする機会があった。

壁一面に専門書が並ぶ、某国立大学の研究室。認知心理学を専門とするS先生は、丸顔に口ひげ、人当たりのいい好人物だ。

お互い初対面の緊張がほぐれた頃に、

「ところで先生、どうして心理学を志したんですか?」と聞いてみた。

S先生は相好を崩して、

「いやー、ぼく大学では数学を専攻して、最初は学校の先生になるつもりだったんです。でも、教育実習で知ったあまりのブラック職場ぶりに嫌気が差して、即座に研究者志望に鞍替え。その時、たまたま心理学の大学院が入りやすかったんですよね」

せ、先生! そんなんで大学教授になっちゃっていいんですか!

でも正直な方だ。きっと、オールマイティに頭のいい人なんだろう。

 

2020年に96歳で亡くなった外山滋比古・元お茶の水女子大学名誉教授。その著書「思考の整理学」は、40年以上読み継がれるロングセラーだ。

日経ビジネス電子版のインタビューで、氏は「AI時代に重要なのは、知識を覚えることより自分で考え失敗すること」と言っている。

以下、記事の一部を紹介します。

・学校での教育は、これまで主に知識を身につけることだとされてきた。その一方で、学校では考えることについてあまり教えてこなかった。結果として、小学校から大学まで学び続けても、多くの人は「考えたことがほとんどない」

・知識はどんどん忘れて構わない。いくら忘れようとしても、その人の深部の興味や関心とつながっていることは忘れない。忘れてもよいと思いながら忘れられなかった知見によって、一人ひとりの個性は形成され、そこから新しい思考やひらめきが生まれる

・思考の整理とは、「いかにうまく忘れるか」

AI(人工知能)の発達によって、考えることの重要性は高まっている。知識という点ではどれだけ優秀な人でもAIに太刀打ちできないから

・一昔前まで、大学を卒業する特に文系学部の学生にとって、金融機関は魅力的な就職先であり、優秀な人材の受け入れ先となってきた。これは金融機関が知識を最も生かせる場だったから

・ところが今や金融機関では、仕事の大きな部分がAIに取って代わられようとしている。金融機関が大幅な人員削減を打ち出しているのもこのため

・これからはAIと知識で競うのではないあり方、つまり考えることが大切

・考える力を養うことは、ひらめきを得ることにもつながる。知識は覚えればすぐに使えるが、ひらめきには結びつかない。自分で考え失敗することで、人はひらめき、成功にたどり着くことができる

Varanasi, India 2024


 

2024年6月14日

「子持ち様」

 

NPO法人「フローレンス」会長の、駒崎弘樹さん。

ある日彼は、お母さんが「子どもの看病で会社を休んで、解雇された人がいるんだって」と話しているのを聞いた。

大学卒業後すぐに、病児保育のNPOを設立。

以来、メディアで発言を続けている。

 

5月26日付読売新聞で、久しぶりに駒崎さんのインタビュー記事を見つけた。

相変わらず自らの経験に根差した、的を射た発言が多い。

思わず膝を打ちまくってしまったので、一部を紹介します。

 

・最近、SNSで「子持ち様」という言葉が広がっている

「子持ち様の子が、また熱を出したとか言って休んだ。そのカバーで仕事が増えた」などという使われ方をする。子どもを育てる親が、職場から配慮を受けることを揶揄している

2030代の未婚の男女から、そうした声が上がることに衝撃を受けた。不満をぶつける相手は、仕事のカバー態勢を整えていない会社側であるはず。「被害者が被害者を叩く」悲劇的な構図だ

1980年代は全世帯の半数近くに子どもがいたが、今は2割弱と少数派。こうした言葉で子育て世帯の肩身が狭くなり、さらに子どもを産もうという気持ちが薄れてしまうのではないか。そして少子化が加速するのでは?

・日本では「男性が外で仕事をして、女性が家を守る」という役割分担が無意識にすり込まれている。育児が妻に固定化され、夫の会社がそれにただ乗りしている

・日本は長時間労働を前提としている。法定労働時間(1日8時間)を超える割増賃金が欧州の半分ほどと安く、企業からすると残業させやすいため、働く時間が長い

現状のままでは共働きはできても、共育てはできない。労働時間の短縮が、出生率を大幅に上昇させるという研究結果もある

・少子化を巡る問題が難しいのは、当事者の課題が数年ごとに変わってしまうこと。保育所がない、学童保育に入れないと悩んでも、一定期間を耐えれば過ぎ去る。当事者でなくなっても声を上げ続ける人は、ほとんどいない

・子どもは成長し、今の現役世代が高齢者になった時、社会保障制度を支える担い手になる。誰もが「自分の未来への投資」と考え、社会で子育て世帯を支えていく意識を醸成していく必要がある

「私が好きな言葉はインド独立の父、マハトマ・ガンジーの『あなたが見たいと思う変革に、あなた自身がなりなさい』。自分でやってみて必要があれば広げていく、という姿勢を大切にしています」

Jardin des Plantes Paris, January 2024


HIKIKOMORI

  不登校や引きこもりの子に、心理専門職としてどう関わっていくか。 増え続ける不登校と、中高年への広がりが指摘されるひきこもり。 心理系大学院入試でも 、事例問題としてよく出題される。 対応の基本は、その子単独の問題として捉えるのではなく、家族システムの中に生じている悪循...