ロンドンでホームステイした時、滞在したイギリス人夫妻の会話がほとんど聞き取れなかった。
特に難解なのが、ジャマイカ人の父を持つ夫マイケルのマシンガントーク。
10秒に3回「Fワード」が挟まることだけ、辛うじて聞き取れる。
うーむ。この一家が話す英語は、お手本にしない方がいいかも。
すぐ方針を変えて、冬のロンドンから南へ。セブ島の英会話学校に転校した。
その途中で、インドに寄り道。ガンジス川に面した聖地ヴァラナシにある、露天の火葬場で日がな一日を過ごした。
最大の火葬場「マニカルニカー・ガート」は、周囲を目隠し代わりの巨大な壁に囲われている。15分ほど川沿いに歩いたところに、別の小さな火葬場を見つけた。
焚火かと思って近づくと、野良イヌや野良ヤギが残飯を漁る河岸で、無造作に人が焼かれている。女性の遺体は鮮やかな赤い布に包まれて焼かれるが、男性は顔がむき出し。一体は立派な顔立ちをした、まだ若い男性だった。
病気でやつれた感じはないから、事故死か、あるいは自殺だったのか。
親族の男たちが、担架に乗せた遺体をガンジス川の水に浸した後、薪の上に載せ、火をつける。誰もが淡々として、悲嘆の様子はない。
時おり、係員が遺体を棒でつついて、火の中に押しやっている。
やがて盛大だった火勢が徐々に弱まり、3時間ほどですべてが灰になった。頭骨も大腿骨も、影も形もない。残ったのは、吹けば飛ぶような細かい灰だ。
火葬場の男が、残った灰をサッとほうきで掃き、その上に新しい薪を組んだ。
日本の火葬では、焼け残った骨を骨壺に納める「骨上げ」という儀式が行われる。あれは骨が原型をとどめるよう、かなり慎重に火勢を調節しているのだ。
火葬場のすぐ隣では、大音量のロックに合わせて若者が踊っている。老夫婦が沐浴する姿も見える。
時おり川面を観光船が下って来て、外国人観光客が、火葬の様子を船上から見物していった。
その後セブ島に渡り、英会話学校の担任レイア先生に、インドで見た火葬の様子を話した。
表情ひとつ変えずに聞いていた先生が、出し抜けに言った。
「それで、いい匂いはしたの?」
フィリピンには「レチョン」という、子ブタを一匹丸ごと串焼きにする料理がある。
レイア先生、まさか頭の中でレチョンを想像してるんじゃ…
お国が変われば、死生観も変わる。
Varanasi, India 2024 |
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