2024年6月22日

学問の道への入り方

 

最近、心理学や脳科学を専門とする大学教授3人に、立て続けにお会いする機会があった。

壁一面に専門書が並ぶ、某国立大学の研究室。認知心理学を専門とするS先生は、丸顔に口ひげ、人当たりのいい好人物だ。

お互い初対面の緊張がほぐれた頃に、

「ところで先生、どうして心理学を志したんですか?」と聞いてみた。

S先生は相好を崩して、

「いやー、ぼく大学では数学を専攻して、最初は学校の先生になるつもりだったんです。でも、教育実習で知ったあまりのブラック職場ぶりに嫌気が差して、即座に研究者志望に鞍替え。その時、たまたま心理学の大学院が入りやすかったんですよね」

せ、先生! そんなんで大学教授になっちゃっていいんですか!

でも正直な方だ。きっと、オールマイティに頭のいい人なんだろう。

 

2020年に96歳で亡くなった外山滋比古・元お茶の水女子大学名誉教授。その著書「思考の整理学」は、40年以上読み継がれるロングセラーだ。

日経ビジネス電子版のインタビューで、氏は「AI時代に重要なのは、知識を覚えることより自分で考え失敗すること」と言っている。

以下、記事の一部を紹介します。

・学校での教育は、これまで主に知識を身につけることだとされてきた。その一方で、学校では考えることについてあまり教えてこなかった。結果として、小学校から大学まで学び続けても、多くの人は「考えたことがほとんどない」

・知識はどんどん忘れて構わない。いくら忘れようとしても、その人の深部の興味や関心とつながっていることは忘れない。忘れてもよいと思いながら忘れられなかった知見によって、一人ひとりの個性は形成され、そこから新しい思考やひらめきが生まれる

・思考の整理とは、「いかにうまく忘れるか」

AI(人工知能)の発達によって、考えることの重要性は高まっている。知識という点ではどれだけ優秀な人でもAIに太刀打ちできないから

・一昔前まで、大学を卒業する特に文系学部の学生にとって、金融機関は魅力的な就職先であり、優秀な人材の受け入れ先となってきた。これは金融機関が知識を最も生かせる場だったから

・ところが今や金融機関では、仕事の大きな部分がAIに取って代わられようとしている。金融機関が大幅な人員削減を打ち出しているのもこのため

・これからはAIと知識で競うのではないあり方、つまり考えることが大切

・考える力を養うことは、ひらめきを得ることにもつながる。知識は覚えればすぐに使えるが、ひらめきには結びつかない。自分で考え失敗することで、人はひらめき、成功にたどり着くことができる

Varanasi, India 2024


 

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