2024年7月12日

花の都、パリ

 

今年の正月、30数年ぶりでパリへ行き、2週間を過ごした。

毎日美術館に通ったが、街そのものが美術館みたいに美しかった。

パリで6年半を過ごした子ども時代、観光にはいいんだろうけど、住むのは最悪の街だと思っていた。

今回、治安は悪いしインフラはボロボロだしメトロは不潔だし、住むのはごめんだけど、観光には最高の街だと思った。

あれ? 自分の立ち位置が変わっただけで、結局思うことは同じか…

 

「パリの国連で夢を食う。」 川内有緒著 幻冬舎文庫

2000倍の倍率を勝ち抜いて31歳で国際公務員となった著者の、パリ滞在記。国連自体はガチガチの官僚組織だったが、著者は上司と同僚に恵まれたようだ。

パリで働き始めた最初の年、著者の父の体にがんがみつかる。手術後の経過も思わしくない。初めての海外出張を控えていた著者は、セルビア人の上司ミローシュと話す(以下、本書より引用)。

「お父さんの具合はどうなの」(中略)「ノット・ソー・グッド(あんまりよくないです)」「どういう意味?」「今は人工呼吸器につながれているので、話ができない状態です」

「……アリオ、君は日本に帰るべきだ」

彼にしては珍しく真剣な表情になった。

でも、この間お見舞いにいったばかりだし、来週からはロシア出張もあるので…、私が行けない理由を並べ立て始めると、彼は会話を遮ってはっきりと言った。

「リッスン(聞いて)。出張なんかどうでもいいんだよ。人生では家族のことのほうが仕事よりもよっぽど大切だ。出張は代わりにロホンが行けばいい。君が行くところはモスクワじゃなくて、日本だ、わかった? 心配しないですぐにでも出発してくれ。お願いだから」

私は初めて仕事場で泣いてしまった。(引用おわり)

あ~!自分も会社員時代、一度でいいからこんなセリフ言ってみたかった。

 

同僚のギニア人、サキーナと著者との会話も印象的だ。

引っ越しすることになった著者が、サキーナをアパートの内見に誘う(以下、本書より)。

「ねえねえ、せっかくだから、一緒に見に行ってみない?」「う~ん、どうしようかな」「あ、忙しい?だったらいいよ」「ううん、忙しくないんだけど、私、たぶん行かないほうがいいと思うんだ」

サキーナはバツが悪そうな顔になった。

「だって、黒人の友達がいるって知ったら、貸してもらえなくなっちゃうから」

フランスは移民への差別が激しい国で、黒人がアパートを借りるのは至難の業なのだと説明してくれた。(中略)

「私、ほんとに黒人差別がない国があったら、どこでもいいからそこに行きたい。ねえ、日本ってどう?」(引用終わり)

う~ん。日本もあんまりお勧めしません。

Paris, winter 2024


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