2026年9月25日

「警察官のこのこ日記」

 

「警察官のこのこ日記」安沼保夫著 三五館シンシャ 

元警察官の著者が、その過酷な日常を描いたノンフィクションだ。

特に、警察学校時代の描写がすさまじい。

入校式の前、全員が講堂に集められ、眼光鋭い坊主頭の教官に「おまえ、なめてんじゃねーぞ! やる気がねえ奴は辞めろ! 代わりはいくらでもいるんだ!」いきなり、怒鳴られる。

ネクタイの結び目が曲がっているだけで、「バシッ」容赦なくビンタが飛ぶ。

時には、パンチも飛んでくる。

上司の命令は、絶対。教官の指示には、「はい」か「了解」しか許されない。

「いいえ」と言えるのは、「辞めるか?」と聞かれたときだけ。

「警察官に頭脳はいらねぇ。首から下だけを鍛える首下教場だ」が、鬼教官の口癖。

毎日のランニング、柔道、逮捕術。

恐怖政治と、同調圧力に支配された日常…

今どき、こんな世界があったとは…

 

「権力はウソをつく」

脚本家の大石静さんが、NHK「最後の講義」で、鬼気迫る表情で言っていた。

安保闘争当時、大石さんは、警官隊に殴られて血まみれになった多くの学生を目撃した。それは権力による一方的な暴力だったが、警察側の記者発表は連日「市民の負傷者は数名、警官の負傷は数十名」というものだったという。

治安維持を担う警察官は、市民生活になくてはならない存在。

立派な職業だと思う。

でも、安保闘争を知らない私でさえ、武器を持った国家権力と聞くだけで、条件反射的な拒否反応がある。

 

この春、わが大学山岳部の後輩が、T県警とN県警に就職した。

ゆくゆくは、山岳救助隊員になることを目指す。

Sくんはともかく、数年前一緒にヒマラヤ登山をしたHさん♀が、心配。読んだばかりの「警察官のこのこ日記」が、脳裏をよぎる。

久しぶりに会って話を聞くと、元気いっぱい、いつもの屈託のない笑顔で

「警察学校、楽しいです!」と言う。

え? 警察学校が、楽しい?

Hさんの教官は、厳しいながらも愛があり、理不尽なところがなく、指導に筋が通っているという。

在学中に2度もヒマラヤ遠征をしたHさんは、体力に余裕があるのだろう。山岳救助隊という明快な目標があるのも、がんばれる秘訣か。

万事順調な様子に、ホッとひと安心。

でもHさんの同期には、たびたび彼女の寮部屋を訪れては泣く人もいるらしい。


Fort Kochi, South India 2026




0 件のコメント:

コメントを投稿

受話器の向こう側~2

  いよいよ、恐怖の「電話相談実習」が始まった。 「実習」とは名ばかりで、「日常の悩み、心の健康に関する相談を受け付けます」とインターネットに公開されている電話番号の、受け手になるのだ。 いきなりの、ガチ本番。 クラスメート3人でひとつの固定電話を囲み、順に応対した。受話...