2026年9月4日

声を上げる勇気

 

夏休みの一日、心理学関連の集まりに参加し、自衛隊で性被害を受けたAさんの話を聞いた。

一時期、何度もマスコミで取り上げられた事件だ。勇気ある強い人のイメージだったが、実際に会ってみれば、ごく普通の控えめな女性だった。

Aさんの幼少時、母親が大病を患い、「ひとりでも強く生きられるように」と、5歳から柔道を習い始めたこと。

小学生の時、東日本大震災に遭遇。公民館の床に段ボールを敷いて3か月、避難生活をしたこと。

災害派遣の女性自衛官の雄姿に憧れ、将来は自衛官になると決めたこと。

両親が離婚し、中学の3年間は新聞配達をして母を助けたこと。

大学を中退して陸上自衛隊に入隊。柔道が強いことで自ら希望した部隊は、実はパワハラ・セクハラの噂が絶えない、いわくつきの部隊だったこと。

男が大多数を占める環境で、何度も凄惨なセクハラ行為を受けたこと。

先輩の女性隊員に相談すると、「私はもっとひどい目に遭った」と言って、とりあってくれなかったこと。

孤立無援となり、心を病んで休職。自転車で車道に飛び出して死のうと思ったが、できなかったこと。

電源コードを首に巻き付けて首を吊ろうとしたその時、偶然、震度6の地震に遭遇。東日本大震災で「生きたくても生きられなかった人がいた」ことを思い出し、立ち直るきっかけになったこと。

被害の刑事告訴を母親にも反対され、たったひとりで裁判所に出向いたこと。

法廷では、複数の加害者の正面に立って証言を求められ、フラッシュバックを起こして倒れ、救急搬送されたこと。

「あれだけの人数が事件を目撃していたのに、みんなウソをつく」ことに絶望したこと。

外国記者クラブで会見したことがきっかけで、「勇気ある女性」として欧米で表彰され、救われたこと。

判決が出る前は、「もし無罪だったら日本にいられない」と思いつめたこと。

有罪判決を勝ち取り、「私、まだ生きてていいんだ」と思えたこと。

裁判が終わっても、ひんぱんに事件のフラッシュバックに悩まされ、ずっと「いなくなりたい」気持ちだったこと。

最近、洋菓子を焼く店を持つ夢ができて、やっと日常生活を送れるようになったこと。

そんなことを、淡々と話してくれた。

事件をきっかけに、Aさん自身も性被害を受けた女性からの相談を受けるようになった。そのたびに、心が削られる思いがするという。

最後に、

「心理職の方は、クライエントの幸せより自分の幸せを大切に」

という言葉を、我々に贈ってくれた。

Pondichery, South India 2026



声を上げる勇気

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