2026年8月21日

ファミリーセラピー怖い

 

「明日の授業は、かなりメンタルに負荷がかかりますよ」

心理系大学院、夏の集中講義初日。

95分×5コマの授業を終えたY先生が、とても不吉なことを言った。

東京からわが校に出張してきたY先生は、「家族療法」の専門家だ。

セラピストと患者が1対1で行う普通の心理面接と違って、家族療法では家族全員が治療対象になる。たとえば不登校の子どもを「患者」とした場合、不登校の原因は子ども本人ではなく、家族それぞれの関係性にあると考える。

誰の責任も問わず、悪者探しもしないセラピー。とても魅力的な考え方だ。

そして、翌日。

円環的因果律、システム・サイバネティクス、ミラノ学派、社会構成主義、ソリューション・フォーカスト・アプローチ…

淡々と家族療法の理論を説いていたY先生が、

「私は話し疲れたので、今から皆さんにロールプレイをやってもらいます」

と言った。

ホワイトボードに書き出した家系図を眺めながら、患者(とされる人)が家族に向けている感情を解き明かしていく「ジェノグラム・インタビュー」をやる、という。

「それでは、患者になりたい人は手を挙げて!」

しーん…

そうだよね、誰もやりたくないよね。

仕方ない、ボクが生贄になってあげよう。

まずクラスメートのW子さんが、私の言葉通りに、私と亡くなった妻の家計図を親子3代ずつ描いていく。

それから延々3時間、Y先生のインタビューを受けた。

それは、ロジャーズの来談者中心療法のような受容的セラピーとは全く違う、容赦ない質問の連続だった。

ああ、同級生の面前で、ボクのプライバシーが丸裸に…

一夜明けた翌日。

「昨日はY先生にかなり深掘りされてたけど、大丈夫ですか?」

クラスメートが気遣ってくれた。

実際、幼少時のトラウマ的な記憶を掘り返されたときは、ほとんど泣きそうだった。

やがて教室に現れたY先生、

「昨日はつい遠慮して、いつもは聞くことを聞かなかったなぁ」と言う。

「それは例えば、どんなことですか?」

「例えば、パートナーとのセックスの頻度とか…」

「エーッ」

そりゃ、人生と「性」は、切っても切り離せないものだけど…

そりゃ、カップルセラピーでは必要な要素かも知れないけど…

そんな質問、みんなの前で答えられるわけねーだろ!

Fort Kochi, India 2026



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