わが大学には「院生室」という、大学院生のための休憩室がある。
修士課程の1,2年生合わせて12人で占有できる、なかなか贅沢な空間だ。
でも院生室のドアを開けると、トカゲが床を走り去る。
入り口で靴を脱ぐと、スリッパの中にムカデや蜂が潜んでいるから、要注意。
校舎の三方を畑と裏山に囲まれた、自然豊かな(豊かすぎる)環境だ。
そんなある日の、ランチタイム。
クラスメートの地元女子たちは、お母さんが作ってくれた弁当を広げている。
私は寂しく、コンビニで買ったサンドイッチをかじる。
大学院生にもなってママのキャラ弁かよ!と、心の中で毒づきながら…
すると、隣のテーブルに陣取った修士2年の先輩が、
「私、ミヤサカさんの飼いネコになる! 皿洗いするネコ!」
「ぼくはミヤサカさんの飼いイヌになる! 掃除と洗濯するイヌ!」
と、口々に言い始めた。
私が株で生活していることは、どこかでポロっと言ったかも。
そこに尾ひれ背びれがついて、「ミヤサカさんはお金持ち」ということになってしまったみたい。
みんな、よっぽど就職活動で苦労してるんだなぁ。
そしてついに、運命の日がやってきた。
心理統計法特論、恐怖の100分間プレゼンテーション!
ポアソン回帰、最大対数尤度、階層ベイズモデル、パラメトリックブートストラップ法、ロジットリンク関数、一般化線形混合モデル、マルコフ連鎖モンテカルロ法、無情報事前分布、BUGSコード、Neyman-Pearsonの検定の枠組み…
私には「宇宙語」にしか聞こえない統計用語とパワーポイントを駆使して、みんなの前で発表しなければならないのだ。
私の前週に発表した才媛モエカさんが、「ミヤサカさんのために、優しくかみ砕いて解説してあげたよ」という。
ううう、ありがとう。でも、それでも、1ミリもわからんかった…
絶体絶命。でも、この単位だけは落とせない。
自分の担当分野を文系的理解で徹底的に読み込み、乱数シミュレーションはパソコンの統計ソフトにぶち込んで、本番に臨んだ。
さも理解しているように見せかける、我ながら惚れ惚れする、演技力。
そして、わがクラスメートの、万雷の拍手による援護射撃。
頭の上に大きなはてなマークを乗せたまま、T教授が「ま、いいか」という表情で、合格点をくれた。
その場で、パソコンの上に突っ伏した。
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| Goa, South India 2026 |

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