2024年6月1日

「フェミニズムの国」に暮らしてみれば

「ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた」 鈴木綾著 幻冬舎

この冬、イギリス人家庭にホームステイしながら3週間ロンドンに滞在した。帰国後、旅行者目線でないロンドン暮らしの実際が知りたくて読んだのが、この本。

著者は東京で働いていた時、セクハラやモラハラに遭い、30歳を目前にしてMBAを取得し、ロンドンに脱出する。

そして、そこで見たものは…

 

・ロンドンで暮らし始めてから、日本の生きづらさから逃げて来た同年齢の日本人女性に何人も出会った。「出国子女」だ

・「帰国子女」と違って、「出国子女」の99%は高学歴の女性。日本人であることや日本文化を誇りに思っているが、日本企業には勤めたくない人たち。自分と同じくらい優秀な独身の日本人男性は海外にいないから、彼氏は外国人

・これはすごい「人材流出」だ

・グローバル企業で、国籍に関係なく世界のトップ人材と一緒に仕事をしたい人は、ニューヨーク、ロンドン、ドバイなどに集まる。東京はもうその選択肢に入らない

・ロンドンで知り合った日本人投資家たちは、子どもを海外で教育を受けさせている。「日本の教育は21世紀に求められるスキルを教えない」から

・6年間東京に住んで、何度もストーカー被害に遭った。地下鉄の中で痴漢に遭った時、周りの人は私を助けようとしなかった。接待ではセクハラ発言を浴びた。日本を出た時、私の心は傷だらけだった

・女性としての生きづらさから脱出するために日本を離れたことは間違っていなかった。でもイギリスはイギリスで、いろいろなことがある

・「働いている女性が強い」「フェミニズム発祥の地」という理由でイギリスに引っ越して来たが、この国に期待するあまり、求めすぎていた

・外見上や制度上の差別はないし、ルールもきちんとしているが、人々の無意識、普通の社会生活の根底に、性差別意識が残っている。少し表面を削れば「フェミニズムを信じない」的な発言が出てくる

・仕事上、若い女性にとって一番大きな問題は、気持ち悪い上司や中高年の男性たちではなく、自分がモノ扱いされることと、便利屋扱いされること

・交通機関やインフラが最悪、物価が高い、友だちが作りづらい。ロンドンは生きづらい街

…そして著者は、120年前にロンドンに留学した夏目漱石の回想を引用する。

「倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり」 

St Pancras International, London 2024


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