病棟に、ネコが現れた。
余命数週間の患者さんへの、うれしい見舞客だ。
先日は、家族に抱かれたワンちゃんも来た。
ヒトにさえ厳しい面会制限を設ける病院がある中で、ウチの病棟のおおらかさが、好きだ。
付き添い家族のために、寝具セットを用意するのは私の役目。でも、臨終が近い患者さんに泊まり込みで付き添う家族は、意外に少ない。
救急救命措置を取らない方針のこの病棟には、心電図の電子音もない。患者さんは、窓から信州の山を望む部屋で、静かに旅立っていく。
人生という大仕事を成し遂げた、穏やかな表情。
最後に心に浮かぶのは、どんな思い出なのだろう。
「DIE WITH
ZERO」 ビル・パーキンス著 ダイヤモンド社
著者は1億ドル超の運用資産を抱えるヘッジファンドのマネージャー。いわゆる富裕層だ。その点を勘案して読んでも共感できたので、中身を紹介します。
・全ての年代の中で、75歳以上の家庭の純資産がいちばん多い。アメリカ人は70代になってもなお、未来のために金を貯めようとしている
・私は人生でいろんな体験をしたいと思っている。でも死んだり、年を取り過ぎてからでは金は使えない。だから「ゼロで死ぬ」ことを目指すべきと考える
・大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを知り、その経験に惜しまず金を使うこと
・何かを経験するのに、必ずしも金はいらない。だが価値ある経験には、ある程度の出費はつきものだ(一生記憶に残るような旅、素晴らしいコンサートのチケット、新しい趣味など)
・モノは買った瞬間の喜びは大きいが、次第にその喜びは減っていく。だが経験から得る価値は時間の経過とともに高まっていく。私はこれを「記憶の配当」と呼んでいる
・現代社会では、勤勉に働き、喜びを先送りすることを美徳とするアリ的な生き方が持ち上げられすぎている。そして、キリギリス的な生き方の価値が軽視されすぎている。キリギリスはもう少し節約すべきだし、アリはもう少し今を楽しむべき
・「人生でしなければならない一番大切な仕事は、思い出作りです。最後に残るのは、結局それだけなのですから」__英TVドラマ「ダウントン・アビー」カーソン執事の言葉
・もちろん、老後の備えは必要。だが、老後で何より価値が高まるのは思い出。だから、できるだけ早く経験に十分な投資をして欲しい
※「DIE WITH
ZERO」著者のアイデアは、後半さらに具体的。次回に続きます
Pokhara Nepal, Spring 2023 |
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