2020年8月29日

名ばかり夜勤

 

 家族の見舞いで訪れた、夕暮れの病院。

 病室に、看護師のMさんが入ってきた。

「私が今日の夜勤担当です、よろしくお願いします・・・でも実は家を出る前から、もう帰ること考えてます。ハハハ」

いつも労を厭わず、笑顔で患者に尽くすMさんの、正直すぎる発言。それだけ、夜勤がつらいのだろう。彼女が以前いた病棟は特に忙しく、ナースコールが鳴りっぱなしで仮眠も取れなかったという。

自分もずっと新聞社で宿直をしたので、その気持ちはよくわかる。

 深夜に朝刊の締め切り時間を迎え、ゲラのチェックが済むと、次の業務は上司の酒に付き合うこと。なにしろ職場で飲むので、逃げ場がない。未明にやっと解放されて、仮眠室へ。

 当時はひと晩中、消防無線を聞く決まりだった。火事が延焼して「第2出動」「第3出動」がかかると、カメラを掴んで現場に急行することになっていた。

 無線からは、絶えずザーザーと雑音が入る。寝ぼけ眼でチューニングをいじっても、収まらない。ある晩アタマに来て、無線のスイッチを切ってしまった。空腹時と眠い時に怒りっぽくなる、自分はわかりやすい人間だ。

 まだ新人の頃から、この「名ばかり宿直」の常習犯だった。でも幸い、翌朝テレビで昨夜の大火事を知って青くなることは一度もなかった。

 消防無線をぶっちぎって寝る新聞記者は、まだかわいいと思う。

 もしナースコールをぶっちぎって寝るナースがいたら・・・ちょっと怖い。

 

「睡眠こそ最強の解決策である」の著者、脳神経科学者のマシュー・ウォーカーが、CNNに出演していた。8時間寝ないと機能しない人(=私)を擁護する話だったので、喜んで要約を書いておきます。

・先進諸国では、睡眠時間の破滅的な減少が起きている。1942年に平均8時間弱眠っていたアメリカ人は、現在6時間30分。日本人はさらに短くて6時間21

・睡眠が短くなるほど、寿命が縮む。睡眠不足はあらゆる死因の予測因子だ

・「ショートスリーパー」として知られたサッチャー英元首相やレーガン米元大統領が認知症になったのは、偶然ではない。心臓病、がん、認知症と睡眠不足は、重大な因果関係がある

・だが十分な睡眠をとっている人は、怠け者という目で見られがち。現代は、少ししか寝ずにハードワークすることが自慢になる社会

・きれいな女性から朝のコーヒーに誘われても、もし7時間30分しか寝ていなかったら、私は断る。十分な睡眠を取らないために生じる弊害を知っていれば、8時間の睡眠を取る以外の選択肢は考えられなくなる

・よりよい睡眠のためには、平日も休日も同じ時間に寝て、同じ時間に起きることと、寝室の温度を下げること。体温を1度下げると、うまく入眠できる




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