コロナ禍のおかげで、ますます静かな今年の夏。
そんな中、珍しいお客さんが、わが森に現れた。
ニューヨークタイムス記者のUさん、海外向け報道番組ディレクターのIさん夫妻、元業界紙記者のHさん。
こう書くと仰々しいが、みな「私鉄沿線の居酒屋で知り合った飲み友だち」なのだそうだ。
飲めるっていいな。うらやましい。
でも、ただの酒飲み旅行ではない。それどころか、「地方移住」「2地域居住」「農業」などを共通のテーマに、2泊3日を現地視察の予定でびっしり埋めてきた。
その視察対象に、なぜか私も入ったらしい。
記者時代、いつもメモを取りながら人の話を聞いていた。今回ばかりは逆に、自分の話をメモってもらえた。感激。
Uさん一行は旅の最初に、4年前に東京から山梨に移住した家族を訪問している。400坪の笹林を手に入れ、保育園児を育てながら、自分たちの手で開墾している若夫婦だ。
まず重機を運転して抜根するところから始め、雑草を刈って、やっと地面が顔を出す。上下水道がないから井戸を掘削し、電気も町から引き込んでこなければならない。
独学で大工仕事を習得した夫は、4年かけて、ここに家を建てるという。
そして妻は、獣や虫と闘いながら、土地の一部で野菜を育て始めた。コメも無農薬で作り、早くも家族の1年分を蓄えた。
久しぶりに、「開墾」ということばを聞いた気がする。そして、しっかりと大地に根を張って暮らすこの一家に、退路を断って生きる人の覚悟を感じた。
日本人は農耕民族だというが、自分に限って、前世は遊牧民のような気がする。とにかく、1か所に腰を据えて暮らすことができない。
社会人になってこの方、ずっと借家住まい。毎年のように転勤を希望して、ほぼ3年おきに引っ越しを繰り返した。いよいよ会社に居づらくなると、今度は株式市場という名の「砂上の楼閣」に乗り、漂っている。
「また原発がバクハツしたら、バンコクかクアラルンプールで暮らそう!」と、本気で思う。
軽薄だ。退路を断つ覚悟どころか、「逃げるが勝ち」。
果たしてこんなヒトの話を、メモを取って聞く価値はあるのか?
でも、この「ノマド的生活」こそ、地震や気候変動、金融危機やコロナにも左右されない「全天候型ライフスタイル」なのでは?という予感もある。
危うい仮説を信じつつ、これからも体を張って、実証実験を続けます。
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