「新聞記者は、時間に追われるとても忙しい人たちだ」
この例題は正しい。新人記者時代に、いきなりその洗礼を浴びた。
取材現場から上司に電話すると、いつも10秒で電話を切られてしまう。まず名を名乗り、最初の用事を言い終わるか終わらないうちに
「ご苦労さ(ガチャン)」
「ご苦労さん」の「ん」が聞こえる前に、ガチャン!と受話器を叩きつける音。
何とか最後まで話を聞いてもらおうと、一息で用件を言おうとした。すると緊張のあまり、かえって舌がもつれた。
「アワアワ・・・」「ガチャン!」
もともと気が短い人たちが集まっているのか、長年の記者生活でああなったのか。いまだ謎だ。そもそも締め切りに関係なく、上司との会話は常にワンフレーズだった。
そして10数年後。海外駐在の機会を得て、写真セクションから国際報道セクションに異動した。しばらくは雑用係として、世界各地の特派員からかかってくる電話を社内で取り次いだ。
デスクに電話を回して横で見ていると、そこには実に丁寧なやりとりがあった。締め切り前でも1時間もかけて、じっくり話をしている。
扱う素材が写真であるか文章であるかの違いは、もちろん大きい。でも多くのデスクに、部下と業務連絡以上のコミュニケーションを取ろうとする姿勢が見えた。
前の職場がすぐ近くに見えるのに、まるで別の会社に来たかのような文化の違い。思えば写真セクションは、徒弟制度の面影が濃い、個人商店主の集まりみたいな組織だった。離れてみて初めてわかった。
上司と部下の間にコミュニケーションはいらない。ただ指示があるのみ。仕事は自分で覚えて結果を出せ。
当時の写真セクションは、そういう集団だった。
それでは、コミュニケーションとはなにか。
いまは会社のタテ社会から離れ、日々ヨコのつながりで人と関わる。組織の生産性を上げるコミュニケーションより、その場の雰囲気を暖かいものにしたり、若い人のモチベーションを上げるコミュニケーションを学びたい。
そんな気持ちでドラッカーを読んだら、意外にも、いちいち腑に落ちた。
「コミュニケーションを成立させるのは受け手である。聞くものがいなければコミュニケーションは成立しない」
「聞け、話すな Listen first. Speak last」
「The most
important thing in communication is hearing what isn’t said コミュニケーションで最も大事なことは、言葉にされないことに耳を傾けること」
そんなドラッカーの言葉を胸に、身体的または経済的に他者の支援を必要とする人に会う。手応えを感じる時もあれば、全然ダメな日もある。
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