心理学の概論書を読んでいると、とにかく驚くことばかりだ。
「エーッ、そうなの?」「どうしてそんなことがわかるの?」
ひとりで叫んでいる。
例えば、精神分析の祖ジークムント・フロイトは、人は生まれた時から性欲(小児性欲)を持っていると論じた。
0歳から1歳半までが「口唇期」。性欲が口に集中していて、授乳による快楽が満たされないと、大人になってから依存的な性格になる(口唇性格)。食べたり飲んだりタバコを吸ったりといった、口で得る快楽を好むようにもなる。
1歳半から3歳までは「肛門期」(アナル・ステージ)。トイレトレーニングのこの期間、排泄による快感が満たされないと、大人になって頑固・倹約・几帳面という性格傾向が生じる(肛門性格)。
こ、肛門性格! あんまりなネーミングだ。
そして3歳から6歳までが「男根期」。男児はペニスの勃起を経験し、女児はペニスがないことに違和感を持つ。性欲が男根(男児のペニス、女児のクリトリス)に集まった結果、エディプス・コンプレックスという葛藤が生じる。
果たして自分は子どもの頃、エディプス・コンプレックスを経験したのだろうか。ほとんどの人には3歳以前の記憶がない(幼児期健忘)というが、私の場合3歳どころか、昨日の昼飯も思い出せない(逆行性健忘)。
そこにちょうど、5歳の男児を育てる旧知のママが旅行でやってきた。さっそく聞いてみた。
「いまSくんはエディプス・コンプレックスの真っ最中で、
①
ペニスの存在から自分が男であることを意識し始める
②
最も身近な女性であるママに性愛感情を抱く
③
ママへの性愛感情を実現するため、パパに敵意を抱き、排除を考える
④
同時にパパからの報復を恐れる。特に、罰としてペニスを奪われると考える(去勢不安)
⑤
最終的に、ママへの性愛感情とパパへの敵意を無意識に抑圧する
…らしいけど、これってホントのこと?」
「…………………………………………………………………はい?」
まったく心当たりがない様子。
変なこと聞いてゴメンナサイ。
フロイトの弟子だったユングやアドラーは、フロイトの性発達理論に反発して、次々と彼の許を去った。
でも、今だに多くの心理学概論書に載っているということは、例外こそあれ、それは一面の真実なのだ。
心理学って、面白そう!
Matsumoto Japan, winter 2025 |