2025年7月24日

孤独に苦しむのも、孤独を楽しむのも脳

 

毎週、八ヶ岳中腹の自宅から名古屋を往復する。

標高1600mから下った夏の名古屋は…やっぱり暑い!

「まるで、街全体がサウナみたい」と形容しようと思ったら、実はサウナって高温だけど湿度は低いそうですね。知らなかった。

名古屋の夏は正真正銘、高温多湿だ。そして、連夜の熱帯夜。

早朝に名古屋城を走って一周しただけで、汗だくになる。

でも名古屋は、地下街がとても発達している。名古屋駅を中心に四方八方に伸びていて、かなり遠くまで地面の下を歩いていける。中はエアコンが効いて涼しい。

通路の両側には店舗が軒を連ね、まるで名古屋の下に、もう一つ別の地下都市があるみたい。フランス風ビストロや南インド料理専門店など、おいしいレストランもある。

そして地下街を歩く女の人が、東京駅の地下街より数段おしゃれで、美しい。

いやこれ、ホントの話。駅前にモード学園があるせいか? その差は歴然。

名古屋の地下街歩きが、最近の密かな楽しみに…

 

話は変わって(笑)、

脳科学の最新の研究では、孤独は健康リスクとされる一方、脳の創造性や想像力を高める側面もあることが明らかになったという。

『最新研究でわかった!くじけない脳のつくり方』(毛内拡著、日経ビジネス人文庫)から一部を紹介します。

 ・孤独でいるとアルツハイマー病などの認知症になりやすいなど、健康に悪影響を及ぼす。孤独は、肥満や飲酒より健康に悪いという報告もある

・しかし、意図的に孤独の時間を楽しむことで内面の充実や創造性を追求する人も増えている。孤独に苦しむのも、孤独を楽しむのも脳

・カナダのマギル大学の研究によれば、孤独を感じる人の脳は体積が大きく、空想、回想、創造などを司る脳領域の内部ネットワークの接続性が強化されている

・孤独な脳では、デフォルトモード・ネットワークの接続性が向上する。孤独によって将来の計画を立てたり、想像力、創造的思考、シミュレーション能力が向上したと解釈できる

・孤独は、身体に悪影響を及ぼすものとしてネガティブに捉えられがちだが、その一方で、孤独を通じて自分自身と向き合い、内面の豊かさや独自の視点を育むポジティブな側面もある

・最近はSNSやオンラインツールの発展によって、孤独を感じづらくなってきている。「孤高」という言葉もあるように、独創的でありたいなら、あえて一定の孤独状態を保つことも、創造性を引き出す1つの方法

Nagoya Japan, 2025


2025年7月18日

フラーリッシュ

 

全国紙のY新聞に、「シングルスタイル」というコーナーがある。

独身やひとり暮らしの中高年の生き方にスポットを当てて、著名人にインタビューしたり、読者の投稿を紹介したりする。

自分もひとり暮らし歴5年目なのでたまに読むが、そのたびに違和感を覚える。ほぼ毎回、「ひとり暮らしは孤独」「独身は寂しいもの」という考えを前提にして、どうやってそれに対処するかが書かれているのだ。

ひとり暮らしって、そんなに孤独で寂しいものなのかな。

 

「幸福度」の新しい国際的新指標「フラーリッシュ」で、日本はまたまた?最下位になったそうだ。ナショナルジオグラフィック日本版の記事を、さわりだけ紹介します。

・「フラーリッシュ」は持続的幸福度の尺度。22か国20万人に「人生の目的を理解している」「あなたの身体的な健康状態はどれくらいですか」「通常の月の生活費が足りるかどうか心配する頻度はどれくらいありますか」などを質問

・その結果、人々の持続的幸福度は、お互い助け合うことで高まることが明らかになった。深い満足感やウェルビーイングの感覚を与えてくれるのは、所有物やバーチャルな関係ではなく、個人やコミュニティーによる選択

18歳から29歳の人は各国とも持続的幸福度が低い。現代の若者は、生活費の問題やコロナ禍の影響、将来の仕事への不安、宗教や政府など社会制度のほころびといった問題に頭を悩ませている

・人々が感じる人生の意味と持続的幸福度は、その国の1人当たりGDP(国内総生産)と逆相関の関係。人生の意味と目的については、常に第三世界の人々の方が高く回答している

22か国の持続的幸福度1位はインドネシア。インドネシアの1人当たりGDPは約5250ドル(約75万円)で、下から3番目。幸福度が最も低かった日本の1人当たりGDPは約35600ドル(約510万円)

・出生率の低下、家族形成の難しさ、社会的に孤立している男性の多さなどの問題や、宗教行事に参加する人の少なさが、日本人の持続的幸福度の低さに影響を及ぼしている可能性がある

・日本は過去150年間に経験した急激な経済的、文化的な変革のせいで、持続的幸福の多くの領域で比較的高い犠牲を払うことになったと思われる

・ボランティア活動やボウリング大会などの世俗的なコミュニティー行事への参加は、幸福度を大きく上昇させる。グループ活動に参加することは社会的つながりの感覚を高め、よりよく生きる助けとなる

・誰かと一緒に食事をすることも幸福感と強く関連する。だが米国人の4人に1人が、前日の食事は1人で食べたと報告。韓国と日本では過重労働文化の影響か、誰かと夕食を共にするのは1週間に1、2回だけという人が増えている

Shanghai China, 2025


2025年7月11日

もし親友から愛の告白をされたら?

 

予備校の心理学の授業で、面白い研究論文が紹介された。

題して、「同性愛開示と異性愛友人の行動と態度」。

タイトルは論文調だが、ぶっちゃけて言えば「もし同性の友だちから愛を告白されたら、あなたならどうする??」という実験だ。

この研究者によると、

・日本性教育協会の調査では、同性同士が性的行為をすることを「構わない」と答えた大学生は、男子25.8%、女子26.7

・このような状況下では、同性愛者が自分の性指向をカミングアウトすることは社会的不利益になる。多くの同性愛者は異性愛者を演じなければならず、そのストレスにより抑うつ、不安、孤独感が高い

・同性愛者の個人特性に関する先行研究は多いが、同性愛を告白された側の研究はいまだ少ない

そして研究者が実験前に立てた仮説は、

・もし同性の親友から愛を告白されたら、その親友との関係は疎遠になる

・同性の親友から同性愛者であることを告白され、でも自分は恋愛対象ではないとわかった場合は、同性愛者一般に対する見方はより受容的になる

というものだった。

さて、実験の結果はいかに…?

・男子大学生90人、女子大学生154人に質問紙を配布

・まず最も親しい同性の友人を思い浮かべてもらい、その親友Aさんとの親密度を調査

・次に、同性愛に対する態度を「同性愛は自由な恋愛の対象だ」という寛容な態度から「同性愛と聞くとつい特別視してしまう」という態度まで調査・分類

そして次の質問紙で、

・ひとつのグループには「Aさんはあなたに同性愛者であること、そしてあなたが恋愛対象であることを打ち明けました」

・別のグループには「Aさんはあなたに同性愛者であることを打ち明けましたが、あなたは恋愛対象ではありません」と記し、態度の変化を男女別に調べた

実験の結果、男子は研究者の予想に反して?告白前と告白後での親友に対する態度の変化は明白には見られず。

女子は仮説通り、告白後に親友との行動を減らしたい傾向が見られたが、自分が恋愛対象でない場合は、その差は少なかった。

 

同性愛やその他LGBTQを知識として理解し、当然の権利だと考えていても、いざ自分事として親友から愛の告白をされるとまた別の要素が絡んでくる、という実験結果なのだろう。

ちなみに、予備校のミヤガワ先生によるとこの研究、「一部尺度のα係数が0.7に満たない」「条件操作後の男子の主効果が有意水準に満たない」「男女のサンプル数に偏りがある」等々、かなりツッコミどころが多いそうだ。

Vientiane Laos, 2025


2025年7月4日

幸福な75歳

 

八ヶ岳山麓で生まれ育ったシゲちゃん(75)とミネちゃん(75)は、小学生の頃からの仲良し同士だ。

時々、ふたりの同窓会に混ぜてもらっている。

そのたび、農家の食卓って豊かだなぁと思う。

けさ畑から採ってきたばかりの野菜で作った、てんぷら、おひたし、胡麻和え等々5~6品と、自家製米の炊き込みご飯が、テーブルいっぱいに並ぶ。

「コロナの頃、県民割で1泊数万円の温泉旅館に泊まってみたけど、出てきた『ご馳走』がウチの夜ご飯みたいだったのよね~」

と、シゲちゃん。

いやホントこれ、高級旅館の夕食みたいでございます。

「今日の材料費、ほぼ0円よ!」

ミネちゃんは、朝3時に起きて畑仕事に精を出す。採れた野菜は近くの農産物直売所に持っていくが、夕方、売れ残りを回収する手間もあるという。

「朝から晩まで働いて、もうけはたったの300円よ~」

それでも、ふたりとも元気いっぱいだ。

 

彼女たちが話題にしていたのが、倍賞千恵子主演の「プラン75」という映画。配給元のあらすじ紹介によると、

「少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行された。夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチは、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める…」

実際に見てみると、「プラン75」は政府が現金10万円をエサに、元気な高齢者に安楽死を選ばせるという、かなり露骨な話だった。

そして映画の後半には、アウシュビッツさながらの光景が描かれる。

アウシュビッツ絶滅収容所を題材にした洋画「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」は、史実を元に描かれている。辛いシーンも、がんばって見なければと思う。

でも100%フィクションのこの映画は、高齢化社会の捉え方が一面的で、あまりにも悲観的。75歳のふたりには、とても勧められない。

クールで優秀な市役所職員を演じる磯村勇斗クンの大ファンだというなら、無理には止めないけど…

 

別れ際、「熱中症に気をつけて下さいね」と言うと、

「その瞬間まで畑で仕事して、あれ?と気絶して、やがて息絶えて…なんて悪くないなぁ! 天からのご褒美みたいな死に方!」と、ミネちゃん。

さすがは生粋の農家さん、腹が据わっている。

Bangkok Thailand, 2025


孤独に苦しむのも、孤独を楽しむのも脳

  毎週、八ヶ岳中腹の自宅から名古屋を往復する。 標高1600mから下った夏の名古屋は…やっぱり暑い! 「まるで、街全体がサウナみたい」 と形容しようと思ったら、実はサウナって高温だけど湿度は低いそうですね。知らなかった。 名古屋の夏は正真正銘、高温多湿だ。そして、連...