名古屋のビジネスホテルの、午前4時。
突然鳴り響いた、けたたましいサイレン音に飛び起きた。
「12階で火災発生! すぐに避難して下さい!!」
人工音声のアナウンスが流れる。
げ…
たしかこの部屋は、最上階の14階だ。
これは…マズいかも…
と焦りつつ、その一方では「正常性バイアス」が働いて、
「どうせ大したことないでしょ…」などと考えてしまう。
パンツ一丁で逃げて何事もなかったら、赤っ恥だ。しっかり着替えて、財布とケータイを持って廊下に出た。
屋外に設置された非常階段は、避難者たちで大渋滞。ちょうど火元とされる12階あたりでつっかえて、それより下に降りられなくなってしまった。
もし、ここで火や煙が見えたりしたらパニックだ。
幸い、その気配はない。
見渡すと、他の人も漏れなく「正常性バイアス」が働いたとみえ、皆さんしっかり着替えてきた。両手に大荷物を抱えた人や、妙にヘアスタイルが決まった女の人もいる。
ある高齢の避難男性は、背広上下にオシャレな帽子をかぶり、手にはステッキといういで立ち。まるで、「東京物語」の笠智衆さんみたい。
午前4時の、笠智衆。
その頃になって、ようやく制服姿の従業員が階段を上がってきた。12階の非常扉から、館内に入っていく。
「ただいまの火災警報は誤報でした」
というアナウンスが流れ、みんな「やっぱりね~」という顔をして、三々五々、部屋に戻っていった。
服を脱いでベッドに入り、さぁもうひと眠り…と思ったあたりで、サイレンとともに、階下に消防車が到着した気配。
遅いよ。
さらにひと騒ぎあって、やれやれ今度こそ眠れる…と思ったあたりで、
「ただいまの火災警報は誤報でした」の館内放送が、今度は中国語と英語の大音量で繰り返された。
県外への予備校通いでこの半年、週末ホテル泊を繰り返すことになった。
なんだかんだで、今年は(今年も⁈)外泊が100泊を超えそう。
毎年こんなことをしていると、いずれ旅先で客死することになるのかも!
文豪みたいでカッコいいじゃん。
でも「東〇イン」で焼け死ぬのは…なんかカッコ悪い。
どうせ焼き鳥になるなら、リッツカールトンかペニンシュラ、マンダリン・オリエンタルあたりがいいよね。
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Midnight evacuation, Nagoya 2025 |