台湾の南西部、台南という町に来た。
バティックエア・マレーシアというLCCが、名古屋から台南の隣町、高雄まで直行便を飛ばしている。4時間ほどのフライトだった。
ホテルのすぐ隣は、国立成功大学。その名を台湾の英雄、鄭成功にちなんだ名門大学だ。いま台湾を率いる民進党・頼総統の母校でもある。
日本でいえば、さしずめ京大だろうか。
大学構内はだだっ広い。しかも緑が多くて、まるで日比谷公園。街中の歩道は段差だらけ、しかも夥しい数の駐輪バイクで埋め尽くされているから、このキャンバスでのジョギングは、とても気持ちいい。外部者も出入り自由だ。
早朝のキャンバスは、お年寄りの憩いの場。菩提樹の大木の下、輪になって太極拳や法輪功(?)をしたり、飼いイヌを散歩させたり。
きれいに整備された芝生のど真ん中で、大型犬がウンコしている。台湾の京大は、とても大らかだ。
調子に乗ってたくさん走ったら、早くも力尽きた。朝ごはんの後は観光もせず、部屋で本を読んでいる。
わざわざ台湾くんだりまで来て、それでいいのか? それでいいのだ!
kindleにダウンロードして読んでいるのが、「夜明けを待つ」。
「エンジェルフライト~国際霊柩送還士」や「エンド・オブ・ライフ」など、死をテーマにしたノンフィクションを書き続け、昨年56歳で亡くなった佐々涼子さんの、遺作となったエッセイ集だ。
作家になる前は日本語教師だった佐々さんが、こんな問いかけをしている。
「今でこそ日本は裕福な国だが、将来にわたってそうであるとはとても思えない。このような外国人に閉鎖的な現状では、優秀な人材はやがて日本に来なくなるだろう」
「いつか日本人だけでは介護の現場が回らなくなった時、日本語を勉強して理解してくれるような優秀な人材を日本国内に確保できているだろうか」
「将来、大量の移民を受け入れなければならないという運命を避けることはできない。とするなら、問題はいつの時点で我々は覚悟を決めるか、なのだろう」
「将来、高齢化が進んで就労人口が減った時、もしかしたら、下の世話をしてくれるのも、末期の言葉を聞いてくれるのも、日本語が母国語ではない外国人かもしれない」
「今生の終わりに託す『言葉』をその人が理解してくれるかどうかは、日本語教育にかかっているのだ」
「はたして私たちは最期の言葉を日本語で伝えられるだろうか。それとも、片言の英語で最期のお別れを言うことになるのだろうか」
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