2024年3月27日

セブ島に暮らすということ

 

セブ島英語留学は、朝の9時から夕方6時まで英語漬け。

毎日7時間の授業のうち、5時間がマンツーマンレッスンだ。

入れ替わり立ち替わり、6人の先生に英会話を習う。そのうち5人が20代。

最近、少し個人的なことも話せるようになった。

いつも陽気なフィリピ―ノの笑顔の裏には、厳しい暮らしぶりが隠れていた。

 

「私が小学生の時に、母親が家のお金を全部持って蒸発した。それからは、父がひとりで私たちきょうだい4人を育ててくれた。私も、学校の先生の服を洗濯して小銭を稼いだ」

この先生には、どことなく暗い影がある。幼くして母に捨てられた心の傷は深そう。

 「私は9人きょうだいの長女だから、家計を支えなきゃいけない。コックになるのが夢だったけど、調理師学校は授業料が高いからウェイトレスに。その後勉強してこの仕事(英語教師)に就いたけど、正直あまり情熱が持てない」


フィリピンでは、大卒者の初任給が1500020000ペソ(約4万~5万5千円)だという。
他にも一家の稼ぎ頭として、決して多くない給料で年下のきょうだいを養っている先生がいた。夜はコールセンターで働いている先生も。

 

ある先生は毎朝、洗い髪を濡らして登校してくる。学校から徒歩5分のアパートを教師仲間8人で借り、2部屋に分かれて共同生活しているという。

別の先生は「親せきが市内にアパートを借りて暮らしていたら、盗賊に室内を滅茶苦茶にされた。だから市内には住みたくない」

と言って、酷暑の中を片道2時間、エアコンなしのジープニー(小型バス)を乗り継いで通ってくる。

 

ある日のマンツーマン授業で、非常用持ち出し袋(防災カバン)をトピックにディスカッションした。

私が「Alien attack にでも備えるの? そんなもん必要ないでしょ」

と軽口を叩いても、先生は笑ってくれない。目が怒っている。

「地震や洪水はいつ起きるかわからないんだから、懐中電灯やラジオ、非常食や水をひとまとめにして、ちゃんと準備しなきゃダメ!」

セブ島の山間部にあるその先生の自宅は、2年前にフィリピン中部を襲った台風の直撃で、全壊していた。島の停電は2か月続いたという。

他にも「台風で屋根に大穴が!寝ていたら星が見えた」という先生がいた。

全壊した先生宅への政府の補償金は5000ペソ(1万4千円)だったという。

※ここは英語学校ではありません!


2024年3月23日

カンヅメ生活

 

地下鉄の初乗り800円の街から、タクシー初乗り100円の街に来て、心の底からホッとしている。

でも実際のところ、お金を使っている時間がない。

ここセブ島の英会話学校は、その多くが韓国資本。主なターゲットは学生だ。寮を併設した学校の敷地内に生徒を閉じ込めて、「スパルタ式」「セミ・スパルタ式」と呼ばれる厳しい指導方法で、短期間で英語を叩きこむ。

放課後、自習室に監視付で学生を閉じ込めたりする学校もあるようだ。

私は主に社会人を対象にした日本資本の学校を選んだので、そこまで厳しくない。でも1日7時間(うち5時間がマンツーマン形式)の授業をこなし、予習復習の時間も含めれば、起きている時間の大半は英語漬けになる。

朝7時。朝食は学校が和風弁当を配ってくれる。

その後、6階にある寮の自室から同じ建物の8階にある校舎に「通学」。

ランチタイムは、学校から徒歩5分圏内にある安食堂や屋台から、フィリピンのおかず2~3品とご飯をテイクアウトする。

グループレッスンの先生に教わったローカル食堂の「ゴーヤと卵の炒め物」や「カボチャのココナツミルク煮」は、かなりいける。おかず3品とご飯を頼んで、たいてい100ペソ(250円)以内で済む。

 

同じ週に入学した同期生は、大学教授、内科医、日本語教師、航空機エンジニア、理学療法士兼プロボクサー、会社員、高3女子、そして個人投資家兼看護助手、という面々だ。

年齢もバックグラウンドもさまざま。国籍は日本と韓国。

留学期間は1週間の人が多い。やっとひねり出した貴重な休暇を、この英語留学に充てている。

私「その7日間の休暇は、年に何回取れるんですか?」

マサさん「いや10年に一度の慰労休暇です」

私「えっ…」

マ「ここに来るの、ニョーボにはすごく反対されました」

そのマサさん、朝と夜に個人レッスンを1時間ずつ追加して1日9時間レッスンを受けた上に、最終日には英語プレゼンテーションまでこなし、その日の深夜便で帰国していった。

 

高校生は2人来ている。

高3女子「私は来たくなかったんだけど、親に言われて仕方なく…」

高2女子「学校の英語だけでは将来使いものにならないから、親に頼み込んで来させてもらいました。だから両親には感謝です」

対照的なふたりだが、共にキャビンアテンダントになるのが夢だという。



2024年3月15日

クイーンズ・イングリッシュからの逃亡

 

ホームステイ先のハリス夫妻の会話はてんで聞き取れないし、ロンドンの物価は高すぎる。このままでは、早晩干上がってしまう。

そこで、あっさり方向転換。セブ島の英会話学校に通うことにした。

オンライン英会話の先生はみなフィリピン人だったが、とても優しかった。向こうの物価も財布に優しそうだ。そして何より、寒くない。

トロピカル・ビーチが私を待っている!

英語学習を「旅先で会うインド人と口喧嘩して勝つ」という壮大かつ無意味な動機でやっている限り、どんな場に身を置いてもムダな気がするが…

悪あがきは続く。

 

プロ家庭教師として2500人以上の子どもを難関中学に合格させた西村則康氏が、「大人にも役立つ能力開発の大前提」を説明している。

以下に日経ビジネス電子版の記事を要約します。自戒を込めて…

・タワーマンションに住む家庭は収入が高く、教育にも費用がかけられるから、子どもの学力の平均値は高い。ただ「こいつはすごいな」と思うほど優秀な子がタワマンにはいない

・すぐ外に出て何かに触るということができないし、風のそよぎも感じられない、音も聞こえない。五感への刺激が圧倒的に少ないために、身体感覚が自然に鍛えられるべき時期に十分鍛えられないのが大きい

・この小さい頃の身体感覚が、物事をはっきり理解する感覚や、学習へのモチベーション、行動力にも深く結びついてくる

・言葉にしろ数字にしろ、何らかの過去の自分の経験とつながっている。そういう経験を身体感覚として蓄えている子といない子では、理解の度合いが違う

・入ってきた知識が過去の記憶とつながるか、全くつながらないで離れ小島状態で置き去りにされてしまうかの差

・「断捨離」も子供の発達にはよくない。捨ててさっぱりする大人にとってはいいが、子供には刺激がなさすぎる。本棚からあふれた本や道具箱からあふれたものなど、子供は過剰なものに反応する

・今は努力するのはダサいという風潮になっていて、努力できない子が多い。でも人間の本来の性質としては新しいことが分かると楽しいし、できることが1つ増えるのは快感。これはずっと変わらない

・会議の席で、ものすごく論理的で筋道だった話をする大人がいるが、得てして「それはうまくいかない」など否定的な意見を説得力満点で述べる。だがそれでは社会生活が止まってしまう。目標に向けた話ができなくてはならない

・「こうありたい」というゴールのところから、ではそのために何ができればいいか、というふうに戻ってこられる思考が必要

・目標を設定し、意欲を持って行動し、到達するというプロセスの連続が、社会を生き抜く力そのものにつながる

Cebu Philippines, 2024


2024年3月7日

イギリスのカツカレー

 

某新聞ロンドン特派員のKさんに、ある有名なパブに連れて行ってもらった。

歴史の古いパブの中は薄暗く、入り口ドアもどっしりと重厚で、ちょっと一人では入りにくい。でも最初にカウンターで注文する前払い方式で、一度経験すれば気軽に利用できそうだ。

ランチタイムはジュースやコーヒーのドリンクバーまであり、ファミレスのような使い方ができる。

平日の昼からビールのジョッキを傾ける若い男女グループもいれば、ベビーカーごと入店するママもいる。店内はいたってカジュアルだった。

 

このパブでKさんが注文したのが、カツカレー。

「日本のカツカレーは、今やイギリス人の国民食です!」という。

確かに、パブのメニューの目立つところに「Katsu Curry」が載っている。

パリの街角には、中国系や東南アジア系のオーナーが経営する寿司屋や日本食レストランが至る所にあった。

ここロンドンでも「WASABI」「WAGAMAMA」「ITSU」といった不思議な名前の日本料理レストランがチェーン展開していて、そこらじゅうにある。

イギリス人にとって、日本食は「ヘルシーだから」人気があるのだという。カツカレーやラーメンのどこがヘルシーなの?という気もするが、フィッシュ&チップスに比べれば「相対的にヘルシー」なのだろう。

Kさんによると、イギリス北部に行くと、出てくる食べものがほぼ全て揚げ物。スコットランド人はスニッカーズまで揚げて食べるそうだ。

…本当か???

そのKさん、「ITSUのギョーザ乗せうどんは意外にいけます」という。

よくそんなもん注文するよなぁ。

 

ちなみに、イギリスのカツカレーは99%チキンカツだ。

ロンドン市民の4割が外国生まれで、今やイギリス首相もロンドン市長もインド系。イスラム教徒も多いから、鶏肉がいちばん好まれるのだろう。

そういうイギリス人が日本に来て「本場のカツカレー」を食べようとすると、その99%が豚肉と知って仰天することになる。

 

ある「日本料理レストラン」で、衝撃的なカツカレーを見てしまった。

お皿に草履みたいに大きなカツを敷き、ちょこんと白いご飯を乗せて、その上からカレーがかかっている。

詳細は添付写真をご覧ください。

私は食べてません。



2024年3月1日

イギリス人の腸は特別

 

日本の家庭には必ずあるのに、イギリスの家庭にはないもの。

   ゴミ箱

ホームステイ先で家じゅうの床という床を探しても、ゴミ箱が見当たらない。ハリス夫人に聞くと、「キッチンの流しに捨ててね」。

目線を上げると、シンクの中にビニール袋が広げてあった。

   ティッシュペーパー

日本人家庭なら各部屋にありそうなものが、ここにはない。

鼻をかむ時や食べ物をこぼした時はどうするんだろう。

仮説その1:イギリス人は鼻水が出ない

   スリッパ

ハリス家では日本式に玄関で靴を脱ぐ。夫人はとてもきれい好きなので、床はいつもピカピカだ。でもこの家の男衆、夫マイケルや次男メイソンは土足で歩き回るし、愛犬ステラ嬢の食べかすも散らばっている。

スリッパ持参でよかった!

   食卓

がらんとしたダイニングルームには、テーブルもイスもない。みんな食事はどうしているかというと、適当にキッチンで丸椅子に座って食べたり、ソファでビスケットをかじったり。

夫マイケルがデリバリーしたカレーを寝室に持ち込んで、ベッドで食べているところは見かけたが、家族で集まって食べる習慣はない。小腹が空いたとき、各自そこらにあるものをかじっている。

 

ホームステイ初日、ハリス夫人に「朝ごはんはセルフサービスで。戸棚や冷蔵庫を開けて好きなもの食べてね」と言われた。

牛乳、シリアル、クリームチーズ、ヨーグルト、食パン、バナナ、リンゴ。毎朝そんなものを食べていた。

不思議なことに、冷蔵庫の中身が、毎日私が食べた分しか減っていかない。

これらの食品は、ホームステイに来た日本人用に特別に用意されたものなのか? ハリス家の人たちは、大量にストックしてあるビスケット、ポテトチップス、チョコレート、ビールで生きているのだろうか。

イギリスに住んでいた友だちによると、彼らは自らの気質をstiff upper lipと表現するそうだ。「忍耐力がある」「やせ我慢をする」という意味で、「快楽を追求する他文化と我々は違う」というプライドも含まれているという。

「食事に手間や時間をかけるなんてシャラクセェ」というわけか。

それにしても聞きしに勝る、この食事へのこだわりのなさはどうだ。

仮説その2:イギリス人の腸内酵素は特別だから、ビールとポテトチップスで80歳までOK

Borough Market, London


肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...