舞い込んできた山岳ガイドの仕事で、ホッとひと息。
ウチの病院は設備が古いので、なんでも人力&人海戦術。10人続けて寝たきり患者さんの入浴介助をすると、朝から夕方まで、サウナで筋トレをやっているよう。そして体力以上に、神経がすり減る。
それに比べたら、学校登山に同行して健康な13歳と山を歩くなんて、まさに極楽だ。
体重100キロのスーパー中学生が、「バテて動けません」みたいな悪夢が起きない限りは…
どの学校も養護教諭が同行し、別に看護師さんがいたり、男の先生がAEDを担いで登ることもある。ガイドとしては、安心だ。
ただ悪いことに、途中の湿原が高山植物の宝庫で、花が咲き乱れている。花なんかわからないから、名前を聞かれても困る。
湿原の中の木道を、先頭に立って、フルスピードで通過した。
ラッキーなことに、お客さんは2日とも、東京の私立男子中学。色鮮やかなニッコウキスゲやヤナギランには目もくれずに、ガシガシ歩いてくれた。
途中で、同行カメラマンさんとすれ違った。30歳ぐらいの男性で、山道を駆け登り、駆け下りながら、6クラス200人の子どもを撮りまくっている。
「学校行事の仕事は、カメラマンじゃなくてランニングマンです」
コロナで仕事がない時期は、国の給付金で食いつないだそうだ。
「税引き後だと、むしろ儲かっちゃうぐらいの金額をもらいました」
そしてこの春に修学旅行が再開されると、いきなり東奔西走の日々。家に帰る暇もなく、空港のコンビニでパンツを買いながら、北海道から沖縄まで飛び回っている。
「子どもが好きだし、毎日いろんなドラマがあって楽しいですよ」
山岳ガイドの顔見知りとも、コロナを挟んで3年ぶりに再会した。
3人めの子どもが生まれたというHさん。末期がんの奥さんを自宅で介護して、「昨夜もほとんど寝てない」というSさん。悲喜こもごも。
八ヶ岳に移住して3年めのKさんは、畑仕事で忙しそうだ。野菜は自給自足、庭の木を切って薪を作り、家の屋根にはソーラーパネルを備える。
「現金収入は月10万もあれば十分です」
この春に東京から夫婦で移住してきたクライマーのOさんによると、テレワークが普及したせいか、八ヶ岳山ろくの空き家や中古別荘が大人気だという。
「毎週金曜日に不動産情報サイトが更新されるんですが、いい家は一瞬でなくなってました」
以前は300万円台で買えた物件が、今は1000万円するそうだ。