2021年8月14日

森の官民格差

   朝、起きるとまず外に出て、玄関の温度計をチェック。

 標高1600メートルのわが家、午前6時の気温が20度を超えたのは、今年に入ってまだ2日だけ。

 そして勤務先の自然学校は、さらに200メートル高い。昨日出勤したら、気温12度だった。

 例年ならサマーキャンプの子どもたちで賑わうこの時期、自然学校は閑散としている。コロナ禍のあおりで、家族連れがぽつりぽつりと、遠慮がちに訪れるのみ。

先日、みたび緊急事態宣言が発令されると、9月のカレンダーを埋めていた中学校10数校、2000人余によるオリエンテーリングの予約が、ファクス1枚で全てキャンセルされた。

 

 施設を市が所有し、運営をNPOに委託している自然学校。私は市の臨時職員枠で採用されたので、利用者が減っても給料は変わらない。

25年間ずっと民間企業で働いたので、業績と報酬が連動しないのは、かなり妙な気分。まるで、共産主義国の市民になったよう。

でも一緒に働くNPOのスタッフは、そうはいかない。収益の柱だったサマーキャンプが2年連続で中止となり、頼みの綱の学校オリエンテーリングもキャンセル。資金が枯渇し、NPO存続のために、自ら給料を返上している。

 標高1800メートルの、官民格差。

 かなり心苦しい。

 

(果たしてこの状況で、そちらに行っていいものでしょうか…)

自然学校にかかってくる問い合わせ電話から、都会の人たちのそんな逡巡が伝わってくる。

私たちが広い森で提供するオリエンテーリング、ウォークラリー、親子キャンプ等のプログラムに、コロナ感染拡大の要素があるとは思えない。

(ここは別世界です。どうぞマスクを外して、この新鮮な空気を思う存分、吸いに来てください)

 と、小声で伝えたくなる。

 

 新型ウイルス感染拡大を5年前に予言した、ビル・ゲイツ。過去に起きた疫病大流行を研究する、歴史学者の磯田道史。

 変異種が新たな流行の波を引き起こし、一方で有効なワクチンが行き渡りつつある現状を、2人はコロナ禍の最終段階と位置付けている。

 終息まで、あとひと息か…

Tsurugidake Japan, summer 2021


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