「冬の蓼科はとってもきれいですよ」
友人のささやきに乗せられて、いつもは10月中に小屋仕舞いする八ヶ岳の家で、正月明けまで過ごしてみた。
年末、1週間ほど留守にしてから戻ってみると、キッチンや洗面所、バスルームの蛇口から水が出ない。水洗トイレも流れない。
管理事務所に電話すると、すぐスタッフが来てくれた。家の北側にある水道管が凍っているという。
お湯をかけて、あっさり解決。 DIY能力ほぼゼロの人間にとって、管理別荘地で暮らすことは、生存の必須条件だ。
FF式石油ファンヒーターのスイッチを入れ、室内温度を20度に設定する。ヒーターが唸りを上げて作動し、灯油をガブガブ呑み込んでいく。
日が暮れると、葉が落ちたカラマツ林に降り積もる雪を、満月が青白く照らし出す。戸外は「無音」という音が聞こえてきそうな、圧倒的な静けさ。
夕ご飯を作ろうと戸棚を開けたら、オリーブオイル、米油、ごま油、すべてがドロドロに凝固していた。留守中、キッチンまで氷点下だったのか。
夜半、今度はバスルームの水が止まらなくなる。水栓の中が凍って膨張し、蛇口を破壊してしまったらしい。
またも管理事務所に助けを求める。
「この家は夏の別荘として建てられていますから、寒さには強くないんです」
周囲の住人がとっくに引き揚げた無人の森に、しつこく居座る私を諭すように、管理スタッフのHさんがいう。
「留守中も、トイレとバスルームの床暖房は必ず点けて、室内が氷点下にならないようにして下さい」
ハイ、申し訳ありません…
大晦日の朝、玄関先の気温はマイナス15度。
再び、蛇口から水が出なくなる。今度は設備会社の人を町から呼んで、水道管に巻かれた電熱線を補強してもらった。
標高1600メートルの寒さ、恐るべし。
年明け、松本のマンションに戻って、エレベーター内に貼り紙を見つけた。
「冬の間、留守にする人は、必ず水抜き作業をして下さい。手順はYouTubeに公開してあります」
集合住宅でさえ、松本でさえ、冬場は水道管が凍ってしまうようだ。
数日後、床暖房を入れっ放しにした森の家の電気代に、真っ青になる。
設備会社から送られてきた水道管修理の請求書にも…真っ青。
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