「よく死ぬことは、よく生きることだ」 千葉敦子著 文春文庫
乳がんを患ったフリー・ジャーナリスト千葉敦子さんが、46歳で亡くなる9か月前に上智大で講演した時の講義録。社会人なりたての頃に読んで以来、30年ぶりに再読した。
改めて、強い人だなあと思う。 (以下、抜粋です)
・私が見学したアメリカのホスピスは、ベッド数200の病院に、医療スタッフ300人、非医療スタッフ300人、ボランティア180人が働く
・その病院では、食事をメニューから選んで注文できる。患者はだんだん自分でコントロールできる部分を失っていくのだから、食事を自分で選べるのは、とても重要
・アメリカ人はとてもユーモアに富んだ人たちで、死の直前までジョークを飛ばす人がざらにいる。だんだん衰えていく自身の様子を、笑うことができる
・日本の病院は、視覚的に美しくない。ああいう場所で死にたくないなあ、と思うのは私だけではないと思う
・日本人はやたら貯金ばかりして、世界最高の貯蓄率を誇っているが、医療費にはひどくケチ
・「病気を治すのを専門とする医師」とは別に、「治らない患者を、できるだけよい状態で死なせる医師」が日本にも必要
・死が近い患者に家族や友人がしてあげられることは、本人が嫌がらない程度に頻繁に訪ねてあげること。死にゆく人に静かに話しかけることが、すばらしい贈りものになる
・乳がんが再発し、あまり遠くないかも知れない死の可能性を知ったとき、私はニューヨークへの引っ越しを決意した
・そして再々発した後で、死への準備を始めた。悲しくなったり、寂しくなったりはしない。私自身、自分の人生にかなり満足しているから
・何度か転職し、自分の納得いく生き方で、暮らしを立てていけるようになった。今は、長いこと住みたいと思っていたニューヨークに住んでいる。できるだけのことはやってきたな、という実感が強い
・長く生きていれば、今までよりいいことがあるという保証はない。与えられた環境でベストを尽くすしかない
・人間は誰でもいつかは死ぬ。死なない人は一人もいないのに、死についてあまり考えたこともない、という人が大多数ではないか
・死について考えたことがない、というのは、生きることについて真剣に考えたことがない、というのと同じ
・生きている時に、安全ばかり求めて、危険を冒すことをやってこなかった人は、死を前にしてびくびくするのではないか
・結局、どう生きてきたかが、どう死ぬかを決定するのだと思う