画面の中で笑う女性の頭上に、いくつもの扇風機がぶら下がっている。
「あ、これ? 今ね、休校中の幼稚園で暮らしてるんだ」
「帰省先から戻って、隔離措置のまっ最中ってわけ。市政府にあてがわれたのがこの教室で、朝から晩までここで一人きり」
その人は、オンライン英会話のフィリピン人講師、エンジェル先生。
「PCR検査で陰性証明を取れば隔離は免除されるんだけどね、検査に5000ペソ(約1万円)かかるから。お金を節約しなくちゃね」
「けっこう快適だよ、ご飯はタダで配ってくれるし。でも退屈。オンラインで英会話教えて、あとはネットフリックス見てゴロゴロしてる」
「今日が隔離の最終日で、帰宅したらすぐクリスマス休暇だよ。楽しみ~」
日本同様、毎日2000~3000人のコロナ感染者が出ているフィリピンでは、いまだ厳しい移動制限が敷かれている。
「日本では政府が『Go To トラベル』『Go To イート』というキャンペーンをやって、補助金出して外出を奨励してますよ」
そう私が話すと、エンジェル先生苦笑い。
「私たちフィリピノは、確かに不自由な思いをしている。でもこの状況では、移動制限が妥当だと思う」
コロナに対する姿勢が対照的な、日本とフィリピン。
さて、正解はどちら?
エンジェル先生のレッスンを受けたのは、「蓼科東急ホテル」のツインルーム。家からクルマで20分の、小さな小さな旅をした。
日が暮れても、駐車場にはポツンと自分のクルマだけ。フロント・スタッフに聞くと、笑いながら
「今日も明日も、予約はお客様だけです。ごゆっくりお寛ぎ下さい」
ひとりリゾートホテルに泊まって、さぞ浮きまくるかと思ったら…
まさかの丸2泊、全館貸し切り状態。一生に一度、あるかないかの贅沢な時間だった。
本当に誰もいないので、ウイルスに感染する可能性もゼロ。束の間の、コロナフリー・ワールド。
隔離生活中のエンジェル先生に、外の雪景色を見せた。
「わー、まるで映画みたい!」
大ウケだった。
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