2019年8月3日

樺太から東京へ



玄関に、シカの糞がてんこ盛りになっている。

 家の前を、キツネが横切る。

ミズナラやカラマツの木立に囲まれて、部屋は昼なお薄暗い。

 そして8月でも、朝起きてから灯油ストーブをつけている。

 我が家は信州の山奥。標高1600メートル。



 一般に、高度を100メートル上げると、100キロ北上したのと同じ気候になると言われる。東京~稚内間が1100キロだから、この辺は樺太並みの気候ということになる。

 札幌でさえ、今年は熱帯夜になる。

もしかしたら、日本屈指の冷涼な土地かも知れない。



 お盆前後のひと時、周囲に点在する家に明かりが灯る。でも、厳しい気候や人里離れすぎているために、定住者はまれだ。

 一番近いコンビニまで、歩くと2時間半。

 バス停まで、林の踏み跡を近道しても15分。そこから最寄りのJR駅まで40分。そのバスは1日3本しかない。

 ケータイの電波は微弱で、先日は家族の急を知らせる電話が届かなかった。緊急地震警報でさえ、鳴ったり鳴らなかったり。

台風で一帯が停電した時は、電気も水もなしで3日間過ごした。

そんな我が家にも、郵便局や新聞配達のクルマが、つづら折りの山道を上がってくる。頼めば、生協のトラックが食料を届けてくれる。

中には、クルマなしで定住しているツワモノがいるらしい。覚悟さえあれば、何とかなるのだろうか。でもウチでは、2か月借りっぱなしのレンタカーがライフラインだ。



先日森の家を出て、東京に向かった。

距離200キロ、標高差1600メートルの旅。

谷間を走る高速道路までクルマで行き、ハイウェイバスで、一路大都会を目指した。

「東京まで50キロ」の標識近くで、赤いフェラーリが炎上する事故。延々2時間の足止めを食う。朝はシカに気をつけながら運転したのに、東京に近づくにつれて、事故も都会的になる。

そして着いた午後7時の新宿は、気温30度超。深山の冷気とバスの冷房から、やっと解放された。

「樺太」から下りて来ると、この暑さがありがたかった。

(最初の5分だけ)


我が家(の6軒隣の家)

2 件のコメント:

  1. 涼しいほうがいい気がしますが。。

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  2. 今朝の気温は13度。夏よ行かないで~

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