2019年6月22日

バメンカンモク


 その日、アジュ君とソーシ君を保育園に迎えに行き、えいちゃんをピアノ教室に送る約束をしていた。

 朝、「アジュが発熱したので保育園を休ませます」と、お母さん。

夕方、今度はソーシ君のお父さんから電話があった。

「あのう、いま保育園から電話があって、ソーシがまだいるそうなんですが・・・仕事が終わったので、私が迎えに行きます」

「!」

 休んだのはソーシ君、と勘違いして、見事にすっぽかしてしまった。

 翌日の夕方、ソーシ君を迎えに行くと、明らかに機嫌が悪い。そりゃそうだ、昨日は2時間も待たされたのだから。

 自宅に着いて、おばあちゃんに平謝りに謝っていると、ソーシ君が言った。

「ボク、きのうは(保育園で)いっぱい遊べて楽しかったよ」

 齢5歳にして、この気配り。ソーシ、君はいい奴だなあ。



えいちゃん(小2)はとても内向的で、何を聞いても「うん」「ううん」しか言わず、視線も合わせてくれない。家に着いて、お母さんや弟に会うと、とたんに生き生きとする。えいちゃんには嫌われてるのかなあ。

スイミング教室の後で、自販機のアイスを買うのが彼のルーティン、至福の時間だ。この前、アイスを食べている最中に、うっかり話しかけてしまった。

アイスを持ったえいちゃんの手がピタッと止まり、そのまま動かない。

えいちゃんが固まった・・・アイスは溶けていく。 困った。

困った時は、Kさんの話を聞きにいく。Kさんは大学院で障害児教育を学び、この春から特別支援学校で働いている。毎日12時間を学校で過ごすというから、とても大変な仕事だ。

Kさん「それで、いま受け持ってる子がバメンカンモクで・・・」

私「バメン、カンモク?」

さっそく本を買って、調べてみた。

・場面緘黙症(Selective Mutism)とは、家では普通におしゃべりするのに、保育園や学校などの社会的場面で話すことができない状態。話しているところを見られたり、聞かれたりすることに恐怖を感じている

・「話さない」のではなく、「話せない」。多くが社会不安障害を併せ持つ。繊細で豊かな感受性、きめ細やかな感性の子。約200人に1人。女子に多い

・親は、家庭でのおしゃべりな状態しか知らない。学校では大人しく、先生も困らないので、放置されがち。でも本人は、周囲が当たり前にやっていることができず、友達とも遊べず孤立感を深める。いじめや不登校につながることも

・・・えいちゃんの様子と、少し似ている。お母さんは、「学校では大人しいみたいですねえ」とノンビリ構えているが、本には「早期の対応が必要」と書いてある。

単に私が苦手で話さないのなら、むしろホッとするのだけれど・・・


Monsarrat Ave., Honolulu, 2019

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