思わず鼻歌が出そうな、気持ちのいい朝。クルマの窓を全開にして、市内の細い路地を右折した。
いきなり、背後から拡声器の大声を浴びせられた。赤色灯を光らせたパトカーが、バックミラーに迫る。
追いかけられてるのは、ひょっとしてボク? クルマを止めると、お巡りさんが駆け寄ってきた。
「今、そこの交差点を右折しましたよね。通行禁止違反です」
「・・・はい?」
これまでも、何度か右折したことがある。
「平日の7時30分から8時30分の間は、右折禁止なんですよ。あそこの標識の下に書いてある字、見えますか?ちょっとわかりにくいですけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
近くに小学校があり、通学の時間帯に限って右折禁止になるそうな。
ああ無情。反則金、7000円なり。
それにしても。「ちょっとわかりにくい」どころか、走行中にあの字を読めるのは、全盛期のイチローみたいな動体視力の持ち主だ。
絶妙のタイミングでパトカーが出てくるのも、かなり不自然。そして、違反を告げる警官の語り口は、運転者の反発を招かないよう、訓練されていた。
あらかじめ、周到に練られた作戦だという気がする。
その日のうちに、郵便局で反則金を納めた。でも自分が悪い、という気持ちは5%ほど。運悪くトラップにはまった、という気持ちが95%。
以前、イギリスの友人デービッドが自転車で走っていて、いきなり数人の警官に囲まれた。「その自転車は本当にあなたのモノか?」
彼はひらがなを完璧に書くが、会話は覚束ない。片言で「友人からもらった」と説明すると、警官たちは「ではその友人に連絡を取れ」という。その場で何度も友人に電話をかけたが、つながらない。
すると本署に同行を求められ、何時間も留め置かれた挙句に、自転車は没収されたという。
日本は犯罪件数が年々減っているのに、警察官の数は増え続けている。だから彼らは、毎日何かと仕事を作ろうとしている。英字紙The Economist で、そんな皮肉交じりの記事を読んだ。
治安のいい日本で、警察はヒマを持て余している。外国からは、そのように見られている。
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