2018年9月8日

もしもコトミが帰ったら


 都会っ子が山野で遊び、テントに泊まる3泊4日のサマーキャンプ。

 携帯ゲームに首ったけな今どきの小学生は、意外にも、自然の中で遊ぶのが大好きだ。

 虫取り網を振り回して、トンボやバッタを追う男の子。木の枝やロープで作る秘密基地には、女の子も熱中する。

「ねえ明日は何するの?」

「あと何日いられるの? もう1日終わっちゃった」

 興奮のあまり、鼻血を出す子が続出する。すかさずポケットティッシュを差し出すと、それを見ていた小学生に「女子力高いね」、と褒められた。

 女子力が高いのは、キミたちがところ構わず鼻血を出すからだ。



 昼間は威勢がよかった子どもたちの様子が変わるのは、とっぷり日が暮れて、夕食のバーベキューも食べ終わったころ。

 食べ残した皿を手に、女の子が泣きだした。

「あのね、どうしてかわからないけど、勝手に涙が出てくるの」

 といいながら、しゃくり上げている。

 別の子はスタッフに抱っこをせがみ、セミみたいにくっついて離れない。



 子どもたちに洗ってもらった食器には、まだご飯粒が残っている。ナベや飯ごうなど、全てを我々が洗いなおす。

 夜、延々と皿洗いをしている足元に、パジャマ姿の小さい人たちが寄ってくる。目に涙をいっぱい溜めて。

「ねえ、ママに会いたくなっちゃった」

「あといくつ寝たらママに会えるの?」

 意外に男子がだらしない。

(ママは今ごろ、夏休みの子どもの世話から解放されて大喜びだよ)

 ・・・とは言わないでおこう。



 スタッフのヨッシーさんが、汚れた皿を持ってきた。

「男の子が泣いてるけど、関わり合いになると面倒だから放っといた」

 おいおいおいヨッシーさん。元小学校教諭でしょ。

 でも確かに。誰もママの代わりにはなれない。



 子どもたちには「キャンプレター」を書いてもらい、家族宛てに郵送する。

 いつも年上の男子を叱りつける、勝気なコトミのハガキを見てしまった。

 「ママ、コトミがうちにかえったら、いっぱいだっこしてね」


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