モスクワで働く友人が「君の町でドラが講演するから行ってこい」と言う。
ドラって・・・誰?
ドラ・トーザン。NHK仏語講座に出演していたフランス女性で、友人の知り合いらしい。
ちなみに友人は日本人(男)だが、自らジャン・ピエールと名乗っている。フランスが好きなのだろうか。パリで少年時代を過ごした私は、フランスといえばどんより暗い空しか思い浮かばない。
根が素直なので、おとなしく講演を聞きに出かけた。
テーマは「いつでもどこでも自分らしく」。ドラさん曰く、日本人は何でも我慢しすぎ。「行きたくないと言いながら、どうして会社の飲み会に参加するの?」。
「がまん、というフランス語はありません」
かの国では、幼いころからはっきり「Non」を言うよう育てられる。家庭でも、学校でも。その結果、あらゆることにノンと言わなければ気が済まない人間ができあがる。
彼女がパリに帰ると、毎日どこかで反対デモを見かける。ちょっとタクシーに乗れば、必ず議論を吹っ掛けられる。近所にパンを買いに行っても、政府に不満を持つ主人が自説を述べる。
ノン、ノン、ノン。
「フランス人は我慢しなさすぎ。疲れます」
日本に長く暮らすドラさんには、日本人とフランス人、その中間が心地いいそうだ。
週末に通っている英語講座で、アメリカ人のグレッグにこの話をした。在日30年の彼は、
「そう、たまに帰省すると、人の声のデカさに驚くね。ニューヨークの空港で行列に並んでいたら、後ろの男がケータイで個人的な話を大声で・・・聞きたくないっちゅーの!」
やはり、日本に戻るとホッとするという。
ドラさんによれば、もうひとつフランス人が大切にするのがamour。歴代大統領は軒並み、その任期中にさえ新しい恋人を作った。国民も、自分が仕事よりamour優先なので、誰も文句を言わない。
かつて日本の某首相は、女性問題が明かるみに出たとたんに失脚した。現首相は最初の政権時、仕事のストレスで病気になった。amourどころではない。日本のためにも、せめてバカンスはしっかり取って欲しい、と私も思う。
ドラさんの見解では、唯一の例外はドゴール大統領。レジスタンスの英雄にとって、国家こそが恋人だったようだ。
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