2016年3月19日

末路は転落か感電か


 カトマンズで知人と夕食を共にし、夜道をホテルに戻る。

 停電中は街灯も消えてしまうので、外は本当に真っ暗。車のヘッドライトだけが頼りになる。車通りがある時間帯に帰るのが、この街の鉄則だろう。煌々と周囲を照らす日本のコンビニが懐かしい。

 こちらの道は、障害物に満ちている。

昼間、歩道に横たわっていた犬や牛や人は、不思議と暗くなるころには消えている。その代わり、工事でもないのに、いきなり深さ1メートルの段差があったりする。

 先ほど別れた知人は「マンホールに気をつけて。昼間閉じていても、夜開いていたことがある」という。開いたままのマンホール・・・いったいなぜ、開けておくのだろう。ここでは、日本の常識が通じない。

 足元に細心の注意を払って歩く。ふと、人影が等間隔で立っているのに気付いた。みな、車のほうに顔を向けている。うわさに聞く街娼たちだ。みな背が高い。

 対向車のヘッドライトが、ひとりの横顔を照らした。

 !!!!!

 思わず悲鳴を上げそうになる。

 ひげ面にかつら、つけまつげ。突き出た頬骨。唇から大きくはみ出した赤いルージュ。明らかに男だ。

 タイのおかまは時に女性よりきれいだが、こちらのは・・・はっきり言ってお〇ましい。

 ショックを受けつつ、よろよろ歩く。

不意に、何かがベロリと顔をなでた。

 !!!!!

 今度は・・・なに?

 電信柱に、無数の電線が束になって掛かっている。東電ならぬ盗電で、許可なく自分の家に引き込むためらしい。その一部が切れて、歩道に垂れ下がっていたのだ。足元ばかり見ていて、危うく感電するところだった。

 この数週間、カトマンズで暮らしてみた。以前の訪問で、物価が安く、人が親切なのはわかっている。ラストリゾートを、この地に期待した。

 在住数年~数十年の日本人を訪ね、いろいろ話も聞いた。みなさん、地震や国境封鎖によるエネルギー不足も克服して、生き生きと暮らしている。ある人は「仕事がらみで裏切られたりもしたけれど、ネパール人は温かい。死ぬときはネパールで」とさえ言う。停電したら?早寝すればいいと言う。

 それにしても、この脆弱なインフラ。本当に慣れるものだろうか。

 予期せぬ怪人との出会いもあり、かなり弱気な自分がいる。


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